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■2014年10月展覧会総括

201410月に見た、主に美術関連の展覧会12件(2014110月では計61件)について個人的な感想と評価を記した。あくまでも主観的なものである。特に騒音・混み具合などは、たまたまその時だけの現象かもしれない。今回から展覧会に行ったついでに立ち寄ったレストランを簡単に紹介しておく。
配列は見た順であって、会期順ではない。
 
◆評価ポイント ★★★★(5)・・・☆☆☆☆(1)までの5段階評価
A:展示内容(作品、解説)・構成・展示品の質
B:展示方法・動線設計・照明
C:雰囲気・騒音・混み具合
 
10月
 
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損保ジャパン日本興亜美術館 「印象派のふるさと ノルマンディー展:近代風景画のはじまり」会期:9/6~11/9
A★★★★B★★★☆☆C★★★☆☆
*「ノルマンディー」という土地に限定して作品を選び取るという企画設定がよい。ロマン主義から写実主義を経て、印象主義へ、さらにポスト印象主義からフォーヴィズムへ。近代絵画の大きな流れを押さえながら、古い写真に撮られたノルマンディーの風景をも参照しつつ、あくまでも「ノルマンディー」というトポスに立脚したまとめ方はすがすがしい。
展示作品の中の一枚を選ぶとすれば、フェリックス・ヴァロットンの《オンフルールの眺め、夏の朝》(1912)。空に伸びる少し歪んだ木の幹。不自然なほど鮮やかな緑。何か不吉なものを予兆させるような風景。ヴァロットン展に行きそびれてしまったのが惜しまれる。
 
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根津美術館 「名画を切り、名器を継ぐ:美術にみる愛蔵のかたち」 会期:9/2011/3
A★★★★B★★★★C★★★☆☆
*これもまたテーマ設定が秀逸。根津なので、それほど展示室が広いわけでもなく、当然展示作品数も多くはないのだが、充実した印象。ある意味で書や絵巻などを切断したりすることは、本来の作品の全体像を損なうことになるので問題ある行動でもあったのだが、そうしたが故に今に伝来することができたともいえるわけだ。書の断片を集めて「高野切」とか称してありがたがる心情はよくわからぬが。
元は襖絵だったものが屏風に仕立て直された事例は無数にある(むしろ襖絵のままでは、建物が焼失したら襖絵も一緒に消えてしまうことが多かっただろうし、たえず接触されて劣化が進んだことは間違いない)。展示された中では、狩野永徳の《仙人高士図屏風》が、なかなかよく描かれていた。
ただ愚かしいのは、どこも壊れていなかった器を、完全は良くないと唆されて、一旦破壊し、それを継ぎ直したもの(信楽壺 銘 破全)が展示されていた。ひびの入った器が金継ぎなどで修繕されたりした結果、さらにいっそう景色が良くなるなどという理屈もあるようだが、これは単なる愚行の一例にすぎない。
釘隠を元に手焙にしたものがあった。元の釘隠は桃山から江戸初期のもので、手焙にしたのは大正時代。これはなかなか味のある仕業とみた。
 
◆ランチ◆
表参道にある「リストランテケンヴェンティ クワトロ」に行く。カミさんが以前行ったことのあった店だが、マピオンの地図が古くて道を間違え迷子になる。遅い時間に予約してあったので、比較的空いていた。手打ちパスタが数種類あって、見本を見ながら選択できるようになっていた(後日知ったのだが、最近のイタリアンの流行らしい)。料理はよかった。

 
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東京都美術館 「ウフィツィ美術館展:黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで」 会期:10/11~12/14
A★★☆☆☆B★★★★C★★★☆☆
*多少内容に期待していたが、企画は凡庸。万遍なくほどほどの作品を持ってきましたという感じ。最近はルネサンス美術に興味が薄れたせいかもしれない。どうも類型化した中で、細かい差異を競うような、マニエリスム的な印象が鼻につく気がしてしまう。
とりわけ、今回のようにある特定の美術館コレクションでは、テーマ設定に無理があり、持っている範囲内に限定されるだけ苦しい。上記の二つの素晴らしい企画と雲泥の差。
 
◆ランチ◆
ある方から教えていただいた「上野桜木 菜の花」に行く。ご主人が佐渡出身とのことで、佐渡の食材を中心にした和食のお店。早い時間に行ったので空いていたが、料理はそれぞれの量は少ないながらも美味しいものばかり。久し振りにおけさ柿も食べることができた。
 
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上野の森美術館 「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」 会期:9/13~11/9
A★★☆☆☆B★★☆☆☆C☆☆☆☆  ■図録購入
*なぜこの展示内容で、これほど人が並ぶのかわからない。館外で70分待ち! 前売り券を買っていなかったら、並ばずに帰るところ。あまつさえ、入口付近に達したら、蚊に注意せよとの張り紙があり、それを見た途端すぐさま耳元に蚊がやってきた。北斎展に並んでいたら、蚊に刺されてデング熱にかかった、なんて洒落にならない。
作品の多くはボストン美術館所蔵品でなくとも見る機会も少なくないようなものばかり。「諸国瀧廻り」などが揃いで出るのが珍しいのかもしれないし、花鳥版画はなかなかいいものを楽しめたのだが。本展では摺りがきれいな作品を見ることができるというのが売りだったようだが、「富嶽三十六景」の《凱風快晴》などは後摺りなのか、荒れていた。肉筆はほんの数点だったし(娘の応為による《三曲合奏図》はよかったが、あとはたいしたものはない)。なのに、狭い会場の中は人でいっぱいで、よく見ることもかなわず、図録をやむなく買う。
 
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京都国立博物館 「国宝鳥獣戯画と高山寺」 会期:10/7~11/24
A☆☆☆☆B☆☆☆☆C☆☆☆☆  ■図録購入
*東京では北斎展で並んだら、京都の本展ではさらに外で1時間、中に入って鳥獣人物戯画甲巻の手前でさらに1時間待ち! 延々と並んで、甲巻半分を急ぎ足で眺めておしまい。あとの乙巻以降は、並んでもよし、後ろから見るなら並ばずともOKということで、もちろん並ばずに隙間から眺めることができて、実にスムーズ。結局、誘導の仕方の問題。本当は並ぶ必要なんてなかったわけだ。
ろくに見ることも叶わなかったので(会期中前半と後半で展示替えをするので、全巻は一度では見ることができないし)、図録を購入。後日開いて見て、唖然。肝腎の鳥獣人物戯画が、ごく一部の場面しか掲載されていない。全体は、おまけとして付いていた超ミニサイズのもので我慢しろ、と。2600円もした最低のクズ本!
 
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京都国立博物館 「京(みやこ)へのいざない」 会期:9/23~11/26
A★★★☆☆B★★☆☆☆C★★☆☆☆
*新館完成記念ということで、それなりにきれいに展示はされているが、動線設計がうまく考えられておらず、どのように進めば一通り見ることができるのかもはっきりしない。まあ、好きな部屋だけ見ればいいのかもしれないが、これは岡田美術館などのほうがきちんとしている。階を上下するのも歩きにくい階段とわかりにくいエレベータだが、エスカレータの移動のほうがよかった(これも岡田美術館はエスカレータ完備だ)。
展示品は、京博の所有もしくは寄託品からさまざまな分野を少しずつ出してみましたということで、いろいろなお宝を持っていますよ、というメッセージだけは伝わるが、全体的にみれば焦点が定まらない印象。これぞという作品にも出会わなかったし。
ちなみに、新館完成記念というのか、<芸術新潮>201411月号が特集を組み、橋本麻里『京都で日本美術をみる:京都国立博物館』(集英社クリエイティブ)というガイド本も出ている。
 
◆ランチ◆
京博に行く前に、京都・川端二条東にあるフレンチ「リヴ・ゴォシュ」へ行く。小さなお店だが、とても美味しく、気に入りました(最初のパンが焼け過ぎていたけど)。帰りがけ、今後の案内などを送って下さるとのことで、住所を記しておいたら、帰京した日にはもう「おかえりなさい」の葉書を頂く。
◆ディナー◆
この日の夜は、フランス料理に和のテイストを入れた創作料理「アーム・ドゥ・ギャルソン」へ。個々の料理は決して悪くはないのだが、量が多すぎ。最初にフレンチのようにパンが出て、最後にご飯がしっかり出る。そのあとのデザートは小さいサイズながらも何種類ものケーキとフルーツが山盛り! とうとう食べ切れませんでした。フランス料理+和というのが単純足し算では無理があると思うのだが。
 
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美術館「えき」KYOTO 「奇想天外!浮世絵師歌川国芳の世界」 会期:10/24~11/24
A★★★★B★★★☆☆C★★★★  ■図録購入
*前日に懲りて、朝一番に入る。さすがにガラガラで、ゆっくり国芳を堪能。
国芳のダイナミックな動きを強調した絵はさすがというべき。北斎よりもなお一層アクの強い感じで、幕末の頽廃ムードが色濃い。とりわけ数多くの妖怪絵、あるいは動物戯画、アルチンボルド風の《見かけハこハゐがとんだいゝ人だ》などや、洋風実験の絵、諷刺画などにそういった特徴が強く出ているように思う。今回、さまざまな国芳の代表作を見ることができた。
残念ながら、国芳ならではの猫の登場する作品はあまり多くはなかった。
 
◆ランチ◆
間違いのないところで、「大神(おおがみ)」へ。今回は若い衆が一人だったので、ご主人もちょっと余裕がなく、たえず怒っていました。でも味はやはり逸品。ご馳走さまでした。
 
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大和文華館 「酒井抱一:江戸情緒の精華」 会期:10/11~11/16
A★★☆☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
大和文華館へは初めて行く。敷地は広いようだが、展示会場は狭く、作品数は少ない。抱一の作品をもっと見たかったが、やむなし。ただ、東京国立博物館所蔵の《夏秋草図屏風》が展示されており、ほとんど観客がいなかったので、ゆっくり鑑賞することができた。この一点だけを見に来たようなもの。
 
◆ディナー◆
京都駅から南すぐのところにある「佳辰(かしん)」2度目。夜に東京に帰る客が多いせいか、またも出発時間を聞かれる。今回は事情があってテーブル席を予約。前回はカウンターだったので、ご主人から材料の仕入れ先などをいろいろ聞けたものだが、今度は遠くて話せず。帰りがけ、ご主人の娘さんとは鳥獣戯画展の混雑ぶりで盛り上がる。コースにしたが、どれも淡泊ながらもしっかりした味で、堪能。
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相国寺承天閣美術館 「花鳥画展:室町・桃山・江戸 中国宮廷画壇の名品」 会期:10/4~15/3/22
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
*入ってすぐに《肉形石》が鎮座。あの故宮にあるというものとよく似た肉そっくりの石だ。自然のものをうまく肉に見立てたもの。六曲一双の《花鳥図屏風》、伝能阿弥筆《雲龍図》、辺文信筆《百鳥図》(明時代)などが優品。とりわけ《百鳥図》に描かれている鳳凰の姿は、伊藤若冲の《旭日鳳凰図》(三の丸尚蔵館)とそっくり。鳳凰は写生できないので、当然、若冲が真似たわけでしょうけど。
ちなみに、入口でもらった紙一枚の作品リストのようなものは、抜けや誤記が目立つ(例えば上記の《雲龍図》が抜けている。チラシの裏面にはしっかり掲載されているのに)。
 
◆ランチ◆
懐石料理の店「御料理 辰むら」。カウンターと奥にテーブル席だが、もちろんカウンターに。お隣に先に来ていた若いご夫妻は江の島で同じく和食をやっている方で、京都へ勉強のために食べに来ている由。カウンターに他のお客がいなくなってから、ご主人としばし話す。この日は予約で満席だったのだが、常にそうとも限らないので、大変だとか。料理は丁寧な味付けが嬉しい。
 
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京都市美術館 「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」 会期:9/30~11/30
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
京都市美術館と京都国立近代美術館という向かい合わせの美術館同士で、類縁の企画を展開するのは、とてもすばらしい。市美はジャポニスム全般の展示で、近美は中でもジャポニスムに親近感を抱いていたホイッスラーだ(キャッチフレーズは「秋、京都・岡崎公園を染める日本礼賛」)。東京では夏に世田谷美術館でジャポニスム展、冬に横浜美術館でホイッスラー展なので、かけ離れすぎている。
展示の目玉は修復なったモネの《ラ・ジャポネーズ》(1876年)。色鮮やかで、ちょっとどぎつい位。他にも数々の浮世絵が与えたヨーロッパの画家たちへの影響が、豊富な事例で紹介される。北斎作品もいくつかあったが、こちらは東京のとんでもない北斎展と違ってゆっくり見ることができた。
それにしても次から次へとボストン美術館の所蔵品展が日本だけでもこれほど開催されているのは、何か資金稼ぎといったような事情でもあるのだろうか。
 
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京都国立近代美術館 「ホイッスラー展」 会期:9/13~11/16
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
*「ジャポニスムの巨匠」などと言ってしまうと、ホイッスラーの一面しか見えなくなってしまう。むしろ唯美主義の一環として、日本の浮世絵などの技法・構図などを取り入れたにすぎないのだろう。もちろん意図的にエキゾティックな雰囲気を醸し出すために、あえて日本的なモチーフを持ってくることもしただろう(いくつもの絵に見られる団扇など)。ジャポニスムの作品などと言われてしまうと、作者の作為・意図がどこにあるのかをまず考えておきたい。《白のシンフォニーNo.2:小さなホワイト・ガール》(1864年)とか《白のシンフォニーNo.3》(1865-7年)など、どうも作品がそれだけで独り歩きしがちだが、なぜそのように描いたのか、を知りたい(モネの《ラ・ジャポネーズ》などもまさにそうだ)。
フリーア美術館に移築された「孔雀の間」は、もちろん現物をもってくることはできないので、映像で紹介。もう少し臨場感を出してほしかったし、映像ならもっと細部の拡大を見たかった。
ジョン・ラスキンが罵倒して訴訟沙汰にまでなった《黒と金色のノクターン:落下する花火》は、残念ながら出品されていなかった。
 
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京都国立近代美術館 「コレクション・ギャラリー2014年度4回展示(後期)」 会期:10/21~ 11/30
A★★☆☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
3階企画展会場で開催されている「ホイッスラー展」に関連する展示「キュレトリアル・スタディズ07:日本近代洋画と浮世絵――鏡としてのジャポニスム」を4階で。日本の洋画家たちが西洋でのジャポニスム受容をどのように受け止めたかを、「橋」「舟」「木立」「髪梳き」といったテーマ設定で数点ずつ集めており、これはなかなかいい趣向。残念なのは、20点余にとどまり、他は雑多な展示にすぎなかったこと。あくまでもコレクションの一端を示すにすぎないのかもしれないが、うまく編集できればすばらしい展示にもなりえたのに。
 
◆ディナー◆
「屋根裏部屋にあるレストラン」(本当に天井が低い!)をコンセプトにしたフレンチ「ラ・ターブル・オ・ジャポン」。予約した18時に10分前に着いたらまだ準備中とのことで、仕方なく外で待つ(まだそう寒くなかったが、冬はつらそう)。前菜やデザート(温かいチョコレートのケーキ)は美味しかったのだが、メインがいけない。老生の選択した牛すね肉のポトフは、塩が効きすぎているだけでなく、スープも雑味が強くて飲めたものではなかった。
◆その翌日のランチ◆
京都最後は「しゅん逢 紗々木」5000円のコースなのに、とっても美味。コースが違うのかと錯覚するほど安い! まだ開店して2年と2か月というにもかかわらず、洗練された味と盛り付け。
 
◆ティー◆
京都の最終日はいつも買い出し日としているのだが、3時の休憩は錦市場近くの「サロン・ド・テ オ・グルニエ・ドール」。前回は満席で入れなかったが、今回は運良く入れた。老生はパリブレスト、カミさんはモンブランと割とオーソドックスな選択。紅茶はアッサム。パリブレストはパリッとした皮になっていなくて、今一つ。モンブランは少し分けてもらったが、こちらは美味しい。カミさんに言わせると、栗が少なすぎるそうだが。
以上、京都食べ歩きでした。

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隠居生活続行中。

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