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■2014年4月展覧会総括

20144月に見た、主に美術関連の展覧会13件(201414月では計26件)について個人的な感想と評価を記した。あくまでも主観的なものである。特に騒音・混み具合などは、たまたまその時だけの現象かもしれない。
配列は必ずしも会期順ではない。
 
◆評価ポイント (5)・・・(1)までの5段階評価
A:展示内容(作品、解説)・構成・展示品の質
B:展示方法・動線設計・照明
C:雰囲気・騒音・混み具合
 
4月
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●世田谷美術館 「岸田吟香・劉生・麗子:知られざる精神の系譜」会期:2/8~4/6
A★★☆☆☆B★★☆☆☆C☆☆
*面白い企画だとは思うが、やや無理もあった。第一、岸田吟香は画家でもないので、展示することのできる自身の作品は書や本であったり、広告(引札)や目薬(精錡水)の瓶だったり、地味なものばかり(もっともヘボンによる日本最初の和英辞典『和英語林集成』初版[1867]は、吟香が上海でかなを書いたということなど活字史の観点から興味深いもの)。だが、一見退屈な展示がしばらく続くと、吟香が美術評論を書いていたことが示され、吟香の肖像画や写真(下岡蓮杖撮影)とともに、小林清親(引札も描いていた)や五姓田義松、山本芳翠などの作品につながっていく。なかでも高橋由一の<甲冑図(武具配列図)>は初めて見たが、なかなか精緻な仕上がりで、新巻鮭より数段上と見た。
劉生の人物画は、どれも類似した相貌になってしまうので、さまざまな麗子像を除き自画像以外に見るべきものは乏しい。また、劉生にとって、静物画や風景画(スケッチ的な作品はよいが)は難しかったのではないか。
麗子は父劉生の死後、女流画家になったものの、展示されている作品を見る限りは残念ながら見劣りがするようだ。
ともあれ、3代を無理にでもつなごうとしたこの企画のユニークさは、それなりに評価したい。
 
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●世田谷美術館 「画文往還:世田谷の文人たち」会期:1/25~4/20
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
*上記の展覧会のついでに併設展を見る。実はこちらの作品群(とりわけ絵短冊のコレクション)のほうがはるかに目を楽しませてくれた。ただし副題の「世田谷の文人たち」とあるが、必ずしも世田谷に該当するわけではない文人も多そうだった。
絵短冊は谷文晁や小杉放菴など多くの作家が描いており、出来不出来はあるものの、小品ながら概ね好ましい様にまとまっていた。もっとも河東碧梧桐の書は下手そのもので醜いだけ。
 
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泉屋博古館分館 「ちょっとパリまでず~っとパリで:住友グループの企業文化力II会期:3/15~5/11
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆
*住友グループ各社が所蔵する洋画作品から、「パリ」をキーワードに、パリに行ったことのある画家もしくは行きっぱなしの画家を選択した企画(「渡欧日本人画家たちの逸品」というキャッチがチラシにはあった)。パリで模写に励んだ習作があったり、いかにも印象派の影響を受けましたといった作品も。
特に気に入った作品としては、三宅克己の<ハムプステッドに於いて吾宿の花園>、鹿子木孟郎の<ノルマンディーの浜>、斎藤豊作の<秋の色>、藤田嗣治の<Y婦人の肖像>、荻須高徳の<線路に沿った家>、小磯良平の<踊り子二人>など。
残念なのが展覧会チラシ。表面と裏面それぞれに掲載されている作品がほとんど重複。それもなぜか異様に小さかったりして、素人デザインとしか思えない出来栄え。今月では一番ダメなチラシであった。
 
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サントリー美術館 「のぞいてびっくり江戸絵画:科学の眼、視覚のふしぎ」 会期:前期3/29~4/22/後期4/23~5/11
A★★★★★B★★★☆☆C★★★ ■図録購入
*これは充実した見応えのある展覧会。ただし前期と後期とではほとんどの作品が展示替えとなる(図録の表紙に大きく描かれている河鍋暁斎の化け猫の絵は、前期には展示されていなかったため、5月に再び後期を見に行くことになってしまった)。
展示品は単なる美術作品にとどまらず、江戸時代の人々の科学的な興味(たとえば顕微鏡、望遠鏡、天球図、博物学など)を示す。美術に関連しても、遠近法の導入(浮絵など)、西洋風の陰影、眼鏡絵などの西洋流の技法が取り入れられていたことがわかる。しかし、なぜかそれらは主流にはならず、あくまでも傍流であり、一部の好事家の世界であったりした。明治開化と相前後して一気に欧風化が進んでしまうのは、いったいなぜだったのだろう。
図録の中、特にタイモン・スクリーチ氏の論文「江戸の視覚革命再考:井上政重と海禁以降の視覚文化交流」の訳にはおかしな点が多い。たとえば注1の位置が間違っているし、注1に示されている永積洋子の論文名は「阿蘭陀の保護者としての井上筑後守政重」ではなく、「オランダ人の保護者としての井上筑後守政重」が正しい(スクリーチ氏の英文では論文の著者名が「Nagatsubo」となっているが「Nagazumi」が正しい読み)。さらに『日本歴史』なんていう専門誌はなく『日本歴史』。注2の位置もおかしい。注3では料編纂所が料編纂所になっている、等々。全体にぎこちない訳文。訳者名は明記されていない。
 
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●三菱一号館美術館 「ザ・ビューティフル:英国の唯美主義1860-1900 展」 会期:1/305/6
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★☆☆
*東京駅周辺美術館共通券3000円で、5館分の展覧会が各館1回ずつ楽しめる。だいぶ前に気づいていたのだが、何とはなしに買いそびれており、当日購入(ただし、三菱一号館美術館など3館は既に売り切れており、東京ステーションギャラリーで購入)。
かなり期待していた展覧会だったのだが、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の中からあれもこれもと少しずつかき集めてきたといった感じがして、展示品の厚みが乏しく、かろうじて何点か見応えがあっただけ。もっと圧倒するような美の奔流のような作品群を期待するのが間違っていたんだろうけど。スウィンバーンが唯美主義のある絵について「この絵の意味は美そのものだ。存在するということだけが、この絵の存在理由だ」と絶賛した言葉が唯美主義を端的に示すものとよく言われるが、残念ながら「美そのもの」として感じる絵や作品は見当たらなかった。むしろ倦怠(アンニュイ)は感じられたが。
そもそも本展に集められた作品群がどれも唯美主義に該当するとも思えない(はたしてウィリアム・モリスも唯美主義者なのか?)。唯美主義とは、あまりにも拡散した曖昧な概念なのではないだろうか。
 
 
インターメディアテク 「驚異の部屋:京都大学バージョン」 会期:13.11/1~5/25
A☆☆☆☆B☆☆☆☆C☆☆☆
インターメディアテクは2回目の訪問。タイトルに惹かれて来たのだが、残念ながら期待外れ。京都大学ならではの違った切り口を期待していたのだが、逆にどれもインターメディアテク風の味付けとなってしまい、完全に埋没(文字通り「埋没」していて、いったいどこで「驚異の部屋:京都大学バージョン」が行われているのかも定かでなかった)。
展示品も特徴を感じさせるようなものはなかった。展示内容に関する説明不足はいつも通り。
 
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出光美術館 「日本の美・発見IX 日本絵画の魅惑」会期:前期4/5~5/6/後期5/9~6/8
A★★★★★B★★★★★C★★★★
*酒井抱一の<風神雷神図屏風>を見に行く。保存がいいのかとてもきれい。今回の展示は出光美術館コレクション展であったが、数多くの優品を見ることができたが、なかでも能阿弥の<四季花鳥図屏風>、歌麿の<更衣美人図>、渡辺崋山の<猫図>、等伯の<松に鴉・柳に白鷲図屏風><色絵桜花文鶴首徳利>など素晴らしいものだった。とりわけ、伝俵屋宗達の<月に秋草図屏風>は、光の当たる角度によって初めてススキがかいま見えるような微妙な描き方をしており、まさに屏風が置かれる位置関係を配慮した仕掛けであり、こればかりは現物に対面しなければ全く鑑賞できない絵であった。
作品ごとに付されている解説表示がとても見やすくてよい。個々の解説ではそれぞれごく簡潔にまとめ、重要なポイントについては、別に「鑑賞のツボ」というミニ解説として、作品の部分図を掲げ目の付け所を教えてくれる。文字も大き目で非常に読みやすいし、当該作品と少し離れた見やすい場所に掲示されている。このところ毎週のように展覧会を見て歩いているのだが、解説表示の大多数は内容が乏しいにもかかわらず無駄に長く、文字が小さく詰まっており、不親切極まりない。その点でも今回の展覧会は非常によかった。
ちなみに、430日付朝日新聞夕刊によれば、当初「だれが決めたんですか、正しい絵の見方なんて」という挑戦的な副題を検討していたそうだ。そう、正しい絵の見方なんてないんですね。個人的には、もし自分が貰えるとしたら欲しいかどうかを基準にした見方をしている。だから名ばかり知られているような作家の下手な作品なんぞは見たくもない。人生の終わりも見えてきたので、自分勝手な絵の見方でいきたい。
 
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東京ステーションギャラリー 「光風会100回展記念 洋画家たちの青春:白馬会から光風会へ」会期:3/21~5/6
A★★☆☆☆B★★★☆☆C☆☆☆
*今年の東京ステーションギャラリーは、これといった企画もないので、消去法でこの展覧会を見る。
気に入った作品は、黒田清輝の<鉄砲百合>、岡田三郎助の<五葉蔦>、三宅克己の<風景>、小磯良平の<横臥裸婦>、伊勢正義の<赤い上衣の女>、国領経郎の<砂の上の群像>など。
 
 
太田記念美術館 「広重ブルー:世界を魅了した青」 会期:前期4/1~4/27/後期5/1~5/28
A★★☆☆☆B★★☆☆☆C★★☆☆☆
*期待したよりは平凡な企画であった。タイトル負け。ベルリンブルー(プルシアンブル―、ベロ藍とも)について知りたかったのだが、通り一遍の解説が簡単に掲示されているのみで、図録もない。かつて神戸市立博物館に行った折に、ベルリンブルーをテーマにした展覧会(「西洋の青:プルシアンブルーをめぐって」)の図録を見たのに買っておかなかったのが悔やまれる。
 
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玉川高島屋SC 「たまがわ深海大図鑑展」 会期:4/23~5/6
A★★☆☆☆B☆☆☆C★★☆☆☆
*子ども向け企画ではあるものの、いくつかの標本や深海の映像は楽しめた。オオグソクムシに触れるというのが一つのウリだったが、ちょうど行ったときは動物たちの休憩時間(ストレスが溜りすぎるので)だったかめ、眺めるだけ。話題になっているダイオウグソクムシは標本だけ展示されていたが、巨大なダンゴムシとしか思えないものの、愛敬がある(オオグソクムシはそれよりはだいぶ小さい)。
会場である玉川高島屋SCのアレーナホールは、バーゲンセールにもっぱら使っている場所なので、場末のしょぼくれた祭りの屋台みたいな雰囲気ではあったのだが。
 
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東京国立博物館 「開山・栄西禅師800年遠忌 栄西と建仁寺」会期:3/25~5/18
A★★★☆☆B★★☆☆☆C★★★☆☆
*展示自体は寺院内のように設営したりして頑張っているのだが、東博のいつもの展覧会同様、依然として解説と展示物とが離れていたりしていて大変見にくい。
見たかったのは、宗達<風神雷神図屏風>とともに海北友松<雲龍図>だったので、後者の全8幅を展示している期間に行く(昨年建仁寺でキヤノン製の出来の悪い複製品を見せられたので、実物をぜひ見たかった)。<小野篁・冥官・獄卒立像>は面白かった。それ以外はほとんど興味を覚えず。
宗達<風神雷神図屏風>とともに、東博本館の光琳作を見る。数日前に出光美術館で鈴木其一の<風神雷神図屏風>を見たばかりなので、3作品を一挙に見直すことができた。宗達の左隻はかなり剥落が激しく、また黒雲の垂らし込みが右隻に比べて随分薄れていることに気がつく。照明のせいもあるかもしれないが、印刷物で見るときとは大きな落差がある。逆に光琳の黒雲はうるさいぐらい濃い。光琳は描いているうちにどんどん濃く、広がってしまったのだろうか。光琳は宗達のものの上に薄い紙を置きなぞって模写する「透き写し」をしたとされているようだが(《芸術新潮》20144月号p.22の安村敏信氏の発言)、どうもそこまで同一にも見えず、恐らくは徹底的に見ることでほとんど同じように描き直したのではないだろうか。
海北友松は筆に勢いのある作品は素晴らしく良いが、丁寧に描こうとすると凡庸になる(この後に東博本館に展示されていた<琴棋書画図屏風>などを見たが、人物の造形が類型的で、筆も止まってしまい、陳腐である)。
なお、「キトラ古墳展」も見る予定だったが、外に1時間、中に入って30分も並ぶと聞いて、即断念。
 
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国立西洋美術館 「ジャック・カロ:リアリズムと奇想の劇場」 会期:4/8~6/15
A★★★☆☆B★★★☆☆C★★★☆☆ ■図録購入
国立西洋美術館では約400点にのぼるカロの版画を所蔵している。今回その中から約220点を展示。カロの作品はこれまでに断片的に見てきただけであったので、初めて初期から晩年に至るまでの作品を通覧できた。
とりわけ、<聖アントニウスの誘惑>2を見ることができたのが最大の収穫。
 
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国立西洋美術館 「非日常からの呼び声:平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品」 会期:4/8~6/15
A★★★★B★★★☆☆C★★☆☆☆
*期待していなかったが、これは意外にも収穫のあった展示。なかでも、マルカントニオ・ライモンディ / アゴスティーノ・ヴェネツィアーノの版画<魔女の集会(ストレゴッツォ)>(なぜか本作品は国立西洋美術館の「作品検索」でヒットしない)、ルカス・クラーナハ(父)およびダフィット・テニールス(子)によるそれぞれの<聖アントニウスの誘惑>、ヴィルヘルム・ハンマースホイの<ピアノを弾く妻イーダのいる室内>などがよかった。それから子供の頃好きだったギュスターヴ・クールベの<>にもまた会えてよかったのだが、本展の掉尾を飾るにふさわしいのか、いささか疑問。
国立西洋美術館所蔵作品の中から選定したという風に聞いていたが、オディロン・ルドンの<アポロンの二輪馬車>だけはなぜかポーラ美術館所蔵作品。
 

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