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『読書の技法』◆読書の方法論について

某月某日、こんな本を読んだ。
 
佐藤優『読書の技法:誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』東洋経済新報社、201289日、1500円+税 [注×文△索×]
 
本書は、<月平均300冊以上は目を通す><多い月は500冊を超える>(p.24)と豪語する著者による、文字通り「読書の技法」を非常にわかりやすく説いた本である。《週刊東洋経済》に20075月から「知の技法 出世の作法」と題して連載されていたもののうち、読書に関する部分を加筆・編集したものという。
 
まず、全体の構成を示しておこう。
 口絵(書斎と仕事場や、本の読み方、ノートの作り方など)8ページ分
   羨ましいくらい整然とした書斎である。
 はじめに pp.1-10
   本書の要約。超速読するなら、ここと目次だけで十分。
 第I部 本はどう読むか
 第1章 多読の技法――筆者はいかにして大量の本を読みこなすようになったか pp.23-45
 第2章 熟読の技法――基本書をどう読みこなすか pp.47-74
 第3章 速読の技法――「超速読」と「普通の速読」 pp.75-98
 第4章 読書ノートの作り方――記憶を定着させる抜き書きとコメント pp.99-110
 第II部 何を読めばいいか
 第5章 教科書と学習参考書を使いこなす――知識の欠損部分をどう見つけ、補うか pp.111-210
 第6章 小説や漫画の読み方 pp.211-237
 第III部 本はいつ、どこで読むか
 第7章 時間を圧縮する技法――時間帯と場所を使い分ける pp.239-265
 おわりに pp.267-270
 「[特別付録]本書に登場する書籍リスト」 pp.271-279
 
どうしてこれほどの量を読まねばならないのか。著者によれば、刊行当時で52歳、すでに人生の残り時間は短い。<どんなに努力しても、知りたいことの大部分について、諦めなくてはならない。しかし、そう簡単に諦めたくない。そのときに役に立つのが読書だ。他人の経験、知的努力を、読書によって自分のものにするのだ。>(p.4)そう言われては、老生など人生の最期のコーナーを既に回ってしまっている人間にとって、もはや手遅れかもしれないと、思ってしまう。
 
<月平均300冊以上は目を通す>という内訳は、そのうち「熟読」するものは45冊、15分程度で処理する「超速読」が240250冊、30分~2-3時間の「普通の速読」が5060冊という(p.26)。
 
「超速読」とは5分以内にまず試し読みをし、書籍を次の4つのカテゴリーに区分する作業を称している。
<①熟読する必要があるもの
②普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
③普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するに及ばないもの
④超速読にとどめるもの>(p.77
つまり、超<速読の第一の目的は、読まなくてもよい本を外にはじき出すことである。>(p.51
したがって「超速読」はあくまで仕分け作業であって、【読書】の範疇に入れるのは当たらないだろう。目を通すだけのものを除外すれば、月に平均60冊前後が読書量となろうか。それでも老生の34倍も読んでいる。著者の蔵書が約4万冊というので、これまた老生の4倍にもなる。もちろん、読む本も蔵書も比較にならないほどレベルが違うのだが。
 
「超速読」はどのような読み方なのか。
<まず序文の最初の1ページと目次を読み、それ以外はひたすらページをめくる。>(p.77)<このとき文字を読まない。とにかくページ全体を見るのだ。…そして、結論部のいちばん最後のページを読む。>(p.78
 
では「普通の速読」はいったいどのような読書なのか。その技法をやや詳しく説明しているが、小見出しを拾い上げて箇条書きでまとめてみよう。
①<「完璧主義」を捨て、目的意識を明確にする>(p.88
つまり本が読みたいから本を読むのではなく、何らかの問題意識をもって読むべきだという。こうも言っている。<重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。>(p.58)さすがに功利主義者を自称する著者ならではだ。
②<雑誌の場合は、筆者が誰かで判断する>(p.89
署名原稿の雑誌記事しか相手にしない、ということだろうか。
③<定規を当てながら1ページ15秒で読む>(p.91
超速読と違って、文字は読む。ただし、<文字はできるだけ速く目で追う>(p.91)ことが肝要だとする。
定規を当てながら読むのは、内容に引っかかって同じ行を読み返すことを防ぐため(p.92)。
④<重要箇所はシャーペンで印をつけ、ポストイットを貼る>(p.92
⑤<本の重要部分を1ページ15秒、残りを超速読する>(p.94
功利主義的に読む以上、自分にとって<役に立ちそうな記述>(p.95)のみを追いかけることになる。
⑥<大雑把に理解・記憶し、「インデックス」をつけて整理する>(p.95
速読というものは、<内容を大雑把に理解・記憶し、「あの本のあの部分に、こういうことが書かれていた」「あの箇所に当たれば、あの情報が出てくる」という「インデックス」を頭の中に整理して作ることが最も重要だ。>(p.96)ということになる。しかし、本を読むそばから、忘却のかなたに去ってしまう状態では、「インデックス」を頭の中に作ろうとしても難しい。
 
それでは「熟読」とは。これも解説箇所の小見出しを箇条書きにしてみよう。ただし、「熟読」とは本を3回読むこととなる。
①<まず本の真ん中くらいのページを読んでみる〈第1読〉>(p.59
なぜ真ん中を読むのか。<真ん中くらいというのは、実はその本のいちばん弱い部分なのである。あえて、このいちばん弱い部分をつまみ読みすることで、その本の水準を知るのである。>(p.60
②<シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する〈第1読〉>(p.62
③<シャーペンで印をつけながら読む〈第1読〉>(p.63
そのやり方は、<本を読みながら、重要と思う部分の欄外に線を引き、わからない部分については「?」マークを記す。重要な部分かどうか迷ったら、とりあえず線を引く。>(p.64)読了して、本当に大切な部分がどこかわかったら、不要箇所を消しゴムで消す。当たり前のことなのだが、この消すという動作を指摘したのは親切だ。
④<本に囲みを作る〈第2読〉>(p.66
1回目に線を引いた部分で特に重要と思う部分をシャーペンで線を引いて囲む。>(p.67
⑤<囲みの部分をノートに写す〈第2読〉>(p.68
<定義、数字、固有名詞などに言及がある部分と、重要とは思うのだが自分で意味がよくわからない部分を書き写すのだ。/そして、欄外に「わからない」とか「○○の言説と対立」といったような書き込みをしておく。読者自身の評価をノートに記すことが記憶を定着させ、理解を深めるコツである。>(p.68
別な箇所では、こうも言っている。<ノートに書き写す部分については、「迷ったら書き写さない」という原則で、極力少なくする。>(p.71)「自分で意味がよくわからない部分」を書くべきかどうか迷うところ。迷ったら書き写さないわけだし。
ともあれ頭の中の「インデックス」ではすぐに消え失せてしまうので、ノートでもとりましょうか。
ともあれ、<読書ノートを作る最大のポイントは、時間をかけすぎないことだ。>(p.103
⑥<結論部分を3回読み、もう一度通読する〈第2読〉>(p.69
<本の著者は、結論を言いたいがゆえに執筆活動を行っているのであり、ここに最大のエネルギーが注がれている。>(p.69)そこで、結論部分のみを3回も読み直す。
 
以上、具体的かつわかりやすく読書の方法論を教えてくれる。しかし、3回も熟読するような本ではないでしょうね、きっと。本書で読むべきは、第I部のみ。ページ数だけから言えば半分以上を占める第II部はひたすら退屈なので、超速読をお勧めする。
たぶん想定読者はビジネスパーソンらしい(当初の連載した雑誌からして)。つまり研究者向きではない。学部学生のレポート作成や卒業論文には向いているが、間違っても少なくとも修士・博士論文では違う読書技法とすべきだろう。まず対象テーマに対する文献の悉皆調査が、本書から抜けている。ただし、<ここ数カ月はTPPについて勉強するために、月500冊を超える本に目を通している>(p.25)とも言っているので、文献調査ももしかすると言っていないだけかもしれないが。
 
図書館の本を利用することに関しては否定的。なぜなら書き込みをするから(p.60)。ここでは著者は「基本書」について限定して述べているものの、原則書き込み前提なので、どの読む本にも当てはまるのだろう。
本は事実上膨大にあり、関心を持つ事柄の本にしてもそのすべてを所有することは非現実的だ。蔵書削減のプレッシャーを日々受けている身では、図書館の本をどのように「読書」に使うかの技法も必要ではないだろうか。
老生が実際図書館で本書を借りた際に、どのように読んだか。著者の「熟読」技法③の印をつけながら読むのは、栞をはさんでそれにここはと思ったページとおおよその位置(前・中・後)をメモすることで代替。④囲みはせず、⑤ノートに気になった箇所の記述を書き写す。このときに該当ページの周辺をもう一度読み直す。最後に目次を見直して、おしまい。そのうえで、どうしても再読したい、レファレンスで使用したいといった本のみ、読んだ本でも購入することに。
 
老生も、本書を範に「他人の経験、知的努力を、読書によって自分のものに」しようかとも思ったが、いかんせん問題意識の皆無な生来の怠け者ゆえ、「速読」のように功利主義的に語られると、山村修の『遅読のすすめ』のような「遅読」が懐かしい気持ちにもなる(ちなみに、同書では「拾い読み」や「飛ばし読み」のような速読消化冊数は「読書」の冊数に数えない)。
 
なお、巻末に、「[特別付録]本書に登場する書籍リスト」(pp.271-9)がつく。読書の本であるなら当然であって、ことさらに[特別付録]などと言う必要はない。
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
山村修『増補 遅読のすすめ』ちくま文庫、2011810日、780円+税
 
 
※1時にいったんUPしたが、書き足りなかったので、修正のうえ再掲出(12:00)。
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隠居生活続行中。

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