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『科学とオカルト』◆オカルトについて

某月某日、こんな本を読んだ。
 
池田清彦『科学とオカルト:際限なき「コントロール願望」のゆくえ』PHP研究所、PHP新書、199916日、657円+税  [注×文×索×]
 
本書は、現代科学とオカルトとの違いと類縁関係を論じた書である。サブタイトルがなくなった『科学とオカルト』として、講談社学術文庫(20071月、760)で再刊されている(既に品切れ状態)。
目次は次のようになっている。
1章 科学の起源とオカルト
2章 オカルトから科学へ
3章 科学の高度化とタコツボ化
4章 科学が説明できることと説明できないこと
5章 心の科学とオカルト
6章 現代社会とオカルト
7章 カルトとオカルト
8章 科学とオカルトのゆくえ
 
錬金術と現代科学との違いは何かと問う。<それは理論のあり方が違うのである。…錬金術の理論には公共性が欠けているのが一番大きな違いであろう。別の言い方をすれば、どのようなやり方をすればある特定の理論に基づく結果が再現できるかについて、錬金術はきわめてあいまいなのである。>(pp.27-8)つまり再現可能性が担保されるかどうかが科学か否かということになる。
逆に言えば、<社会的に平準化されたオカルトは、公共性を獲得したのだから、もはやオカルトとはいえない。それでは何と呼ぶかというと、「科学」ということになったわけだ。実に科学とはオカルトの大衆化だったのである。>(p.50)すなわち、<再現可能性は、大衆化され公共性を獲得した技術やオカルトが科学になるための公準となった。>(p.50
<科学にとって、理論の公共性とは何か。それは理論から極力個人の特殊性を抜くということに尽きる。それは主観を重視するということだ。科学は客観というやり方で公共性を担保したのである。>(p.54)言いかえれば、<科学の理論はその中から「神」や「霊魂」や「主観」を抜いて公共性を確保した>(p.59)ということになる。
 
しかし、にもかかわらずだ。<オカルトから発した科学は、客観という公共性により、オカルトとははっきりと別のものになった。…しかし、非専門家の普通の人にとっては、科学の理論は、わけがわからないままにただ信じるべき有難い御託宣か、さもなくば社会に害毒をもたらすあやしげなオカルトになったのである。>(p.85
科学者にとっても、自分の専門外については、「非専門家の普通の人」と同じレベルであり、残念ながら「公共性」を維持できているわけでもない。一見科学者らしい格好をしているがゆえに、騙されやすい。例えば、前に記した丁宗鐵氏は日本薬科大学学長を務めるくらいだから、おそらく科学者なのだろう。しかるに氏の著書『名医が伝える漢方の知恵』では、怪しげな二分法で単純に人を分類しようとしている。漢方だから「客観という公共性」などないというのだろうか。
 
ともあれ、<19世紀以後、オカルトの主要な活動舞台は、科学が未開拓の領域か、科学が原理的に扱えない領域になってくる。前者はもっぱら①心霊現象あるいはその周辺領域であり、後者は②個人的な神秘体験とか未来の現象の予知とか運勢占いとかが代表である。>(p.110)近代のオカルトが、単純にこの二つの領域に限定できるとも思えないが。
ちなみに、石川幹人の『超心理学:封印された超常現象の科学』では、①の領域において超常現象が「科学」となったと力説している。
 
<科学と現代オカルトに共通するものは何か。それは原理への欲望とコントロール願望である。>(p.141)と著者は断言する。<科学はなるべく少ない同一性(実体や法則)でなるべく多くの現象を説明しようとする欲望を持っている。しかし、この欲望には、再現可能性というタガがはまっている。>(p.141)ところが、一方で、<オカルトは、科学で説明できない現象を説明すると称して、いとも簡単にこの禁欲を破ってしまう。禁欲を破って、原理への欲望だけがあらわになれば、一つの原理ですべての現象を説明するという話になるのは見やすい道理である。>(p.142
とりわけ<くり返さなかったりたった一度しか起きないことに関しては科学は無力なのである。>(p.91)このことは、えてして忘れられがちだ。再現可能性がないことに対して科学が有効な答えを用意できないがゆえに、この点を突いてオカルト信奉者は科学を批判する。よってオカルトの理論は、検証不可能であるがゆえに、絶対となる。
だが一方で、絶えず発生する科学の論文捏造問題などは、ある意味で、「原理への欲望とコントロール願望」が嵩じた余り、タガを外してしまったのかもしれない。
 
現代のオカルトがなぜ求められているのか。実は、<オカルトは、「かけがえのない私」を実現する方法の一つなのである。>(p.148)そして、「かけがえのない私」という物語りを実現することとは、何らかの特別な人になることだ。その方法は<大きく分けて二つある。一つは普通の人は持っていない「超能力」を獲得して特別な人になること。もう一つは、普通の人にはできない特殊な経験をして特別な人になること。>(p.150)前者の典型は、オウム真理教の信者たちであるし、後者の事例としては、宇宙人に誘拐された経験を語る者がいる。
 
<国家のパターナリズムの下で自己実現できなくなっている人にとって、オカルトとカルトはともに甘い蜜である。>(p.170)パターナリズムとは、国家が国民の生活に介入・干渉し、自由や権利などを制限すること。<本当のことを言えば、「かけがえのない私」探しなんぞを手伝ってくれる他者はどこにもいないし、そんな制度も装置も宗教も、実はどこにもありはしない。>(p.171)だからこそ、本当には存在しないオカルトとカルトを<合体してしまえば、「かけがえのない私」探しの装置としては、より強力なものになるばかりだ。>(p.178
 
現代でも占いや新興宗教、さらには数多ある陰謀論などのオカルトが大いにはびこっている。著者の理論が正鵠を得ているかどうかは今後の検討を俟ちたいが、一つの有力な仮説としたい。
 
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
丁宗鐵『名医が伝える漢方の知恵』集英社新書、2013722日、720円+税
石川幹人『超心理学:封印された超常現象の科学』紀伊國屋書店、2012919日、2800+税
 
 
◆[オカルト]関連ブックリスト
*オカルト信奉者の文献も批判者の文献も含む。
 
◎コリン・ウィルソン/中村保男訳『オカルト』上・下、新潮社、1973年、各1300→平河出版社、198512月、4500円→上・下、河出書房新社、河出文庫、19957月、各980 (税込)
Colin Wilson, The Occult
◎特集「オカルティズム」 《ユリイカ》 19747月臨時増刊
◎特集「秘教外伝」 《地球ロマン》復刊4号、19773
伊東高麗夫『病跡学とオカルト』勁草出版サービスセンター、198011月、2300
◎坂下昇『オカルト』講談社現代新書、198610月、480
★◎秋山さと子『ユングとオカルト』講談社現代新書、1987120日、480 [注×文×索×]
◎コリン・ウィルソン/高橋和久ほか訳『ミステリーズ:オカルト・超自然・PSIの探究』工作舎、198710月、5000
Colin Wilson, Mysteries : An Investigation into the Occult, the Paranormal and the Supernatural, 1979
◎特集「スーパー・ネイチャー;オカルトと抽象」 《美術手帖》198711
◎C.G.ユング/島津彬郎・松田誠思編訳『オカルトの心理学:生と死の謎』サイマル出版会、19896月、2100円 (税込)
◎コリン・ウィルソン、ダモン・ウィルソン/関口篤訳『世界不思議百科』青土社、19896月、1400円+税
Colin Wilson, Damon Wilson, The Encyclopaedia of Unsolved Mysteries, 1987
◎ラルフ・ノイズ編/中富信夫訳『ミステリー・サークルの真実:自然現象?それとも"宇宙人"のいたずら?』集英社、19919月、1500円 (税込)
Ralph Noyes, The Crop Circle Enigma
◎『オカルトごっこ』別冊宝島18119937
◎レイチェル・ストーム/高橋巌・小杉英了訳『ニューエイジの歴史と現在:地上の楽園を求めて』角川書店、角川選書、199311月、1800 (税込)
Rachel Storm, In Search of Heaven on Earth
◎呉智英監修『オカルト徹底批判』朝日新聞社出版局、朝日ワンテーママガジン、19945
◎特集「オカルトがなぜ悪い!」 《別冊歴史読本》19948
★◎フレッド・ゲティングズ/阿部秀典訳『オカルトの図像学』青土社、1994615日、4660円+税
Fred Gettings, Visions of the Occult : A Visual Panorama of the Worlds of Magic, Divinaton and the Occult, 1987
◎ひろたみを『ミステリー・ゾーンの20人』飛鳥新社、19962月、1600 (税込)
◎ジョン・マックニッシュ/田中嘉津夫訳『ミステリーサークル黙示録』かもがわ出版、講座・超常現象を科学する619972月、1400
John Macnish, Cropcircle Apocalypse
◎斎藤貴男『カルト資本主義:オカルトが支配する日本の企業社会』文藝春秋、19976月、1714→『カルト資本主義』文藝春秋、文春文庫、20006月、667
◎オーエン・S.ラクレフ/荒俣宏監修・解説、藤田美砂子訳『図説オカルト全書』原書房、199712月、3400
Owen S. Rachleff, The Occult in Art
●渡辺恒夫、中村雅彦『オカルト流行の深層社会心理:科学文明の中の生と死』ナカニシヤ出版、19984月、2200
【本書】★●池田清彦『科学とオカルト:際限なき「コントロール願望」のゆくえ』PHP研究所、PHP新書、199916日、657円+税 [注×文×索×] →〔増訂〕『科学とオカルト』講談社学術文庫、20071月、760
松尾貴史『オカルトでっかち』朝日新聞社、朝日文庫、199912月、580
泉保也『世界不思議大全』学習研究社、20046月、3800
★◎Wアダム・マンデルバウム/上野元美訳『戦争とオカルトの歴史』原書房、200539日、2800円+税 [注○文×索◎]
W. Adam Mandelbaum, The Psychic Battlefield, 2000
◎一柳廣孝編著『オカルトの帝国1970年代の日本を読む』青弓社、200611月、2000+税
★◎吉田司雄編著『オカルトの惑星:1980年代、もう一つの世界地図』青弓社、2009223日、2000円+税 [注◎文×索×]
★◎●原田実『オカルト「超」入門』星海社、星海社新書、2012524日、820円+税 [注×文○索×]
初見健一『ぼくらの昭和オカルト大百科:70年代オカルトブーム再考』大空出版、大空ポケット文庫、201211月、600+税
 
◆オカルト事典
★◎荒俣宏編『世界神秘学事典』平河出版社、19811130日、3300 [注×文◎索◎年表○]
◎バーナード・W・マーチン/C+Fコミュニケーションズ、たま出版編集部訳『神秘オカルト小事典:精神世界探究のためのガイドブック』たま出版、198310月、1800
Bernard W. Martin, The Dictionary of the Occult
◎サラ・リトヴィノフ編/風間賢二訳『世界オカルト事典』講談社、198810月、2000
Sarah Litvinoff, The Illustrated Guide to the Supernatural
◎フレッド・ゲティングズ/松田幸雄訳『オカルトの事典』青土社、19934月、3200円 (税込)
Fred Gettings, Encyclopedia of the Occult
◎アンドレ・ナタフ/高橋誠ほか訳『オカルティズム事典』三交社、19987月、5000円+税
André Nataf, Les maîtres de l'occultisme
◎ローレンス・E・サリヴァン編/鶴岡賀雄・島田裕巳・奥山倫明訳『エリアーデ・オカルト事典』法蔵館、20024月、8000円+税
Lawrence Eugene Sullivan, Hidden Truths
◎佐藤恵三『ドイツ・オカルト事典』同学社、20028月、4300+税
エルヴェ・マソン/蔵持不三也訳『世界秘儀秘教事典』原書房、20066月、5800
Hervé Masson, Dictionnaire initiatique et esoterique
 

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