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『筆跡鑑定人は見た!』◆文書鑑定について

某月某日、こんな本を読んだ。
 
吉田公一『筆跡鑑定人は見た!:あの大事件の舞台裏』主婦の友インフォス情報社(発売:主婦の友社)2012520日、1500円+税 [注△文×索×]
 
本書の著者は、長年科学警察研究所などで文書鑑定を務めてきた。その経験から、筆跡や印章、文書改竄、偽札に至るまで、さまざまな文書鑑定事件(大事件はごくわずかだが)をエピソード豊富に紹介する。
全体に次のような目次構成。
 第1章 筆跡鑑定
 第2章 印章鑑定
 第3章 不明文字・改ざん文書鑑定
 第4章 印刷物・複製文書鑑定
 第5章 文書鑑定雑学集
 
本書では、巷の鑑定人の問題ある鑑定について、随所で批判を繰り返している。
例えば、コピーでは正確な鑑定はできないし、あえて行っても判断を誤りやすい。<物理的な状態が再現されないデメリットがあることは、認識されなければならない。>(p.69)もちろん、FAXは論外である。<FAXでは字画の反りの有無や終筆をはらうかとめるか、一字画の中の筆圧の強弱、筆順を把握するための字画の上下関係など、筆跡鑑定で欠くことのできない検査が不可能である。>p.74
にもかかわらず、コピーやFAXで堂々と筆跡鑑定を行う輩がいることを痛罵する。
 
科学警察研究所が標本筆跡の収集に取り組んだのは1974年からだったが(p.78)、その前年には<書きぐせを総称して「筆跡個性」と呼び、字画や点画の形、位置、字画相互間の長さ、間隔、交差や接合する部分の位置、筆順や逆運筆を含む運筆方向などの筆跡個性を分析して分類した。>(p.83)つまり、このような各所に、筆跡の個性(書きぐせ)が現れるわけだ。
 
偽札に関連して、日本銀行券(ちなみに「紙幣」ではない。紙幣は政府の発行になるものに対し、あくまでも日本銀行の発行だから:pp.246-7)などの本物の証しがいくつか紹介されている。例えば、<日本銀行券は地模様の中に「ニホン」のカタカナ文字がある。…隠し文字は銀行券ばかりでなく五百円貨幣の表裏面にもあって、こちらはアルファベットの「NIPPON」がばらばらで刻印されている。>(p.248
本書には具体的に日本銀行券のどこに隠し文字があるかは書かれていないが、村岡伸久の『偽札百科』(pp.III-VII)には具体的な場所を図示してある。
 
ちょっと面白いネタとして、<偽名には一つの特徴があって、偽名のなかに本人の名字や名前の文字が使われていることが多い。…偽名の70パーセントには本名と同じ文字が使われていて、そのほぼ半数には本名と同じ文字が二文字以上使われている。>(pp.258-9
 
本書の中で、特に重要な指摘が日本人のサインについて。
<大部分の日本人は「字をきれいに見せよう」が先に立って、「署名は偽造されないように」とか「自分を証明するためのもの」だとかは、ほとんど意識されていない。署名は護身用の道具であって、他人にマネをされない、独特のものでないと意味がない。>(p.76)何て書いてあるのか読めないくらいでいいのかもしれない。<注意しなければならないのは、いつも同じに書くということである。>(p.77
いまからでも遅くはない。誰にも真似されないようなサインの練習をしようか。
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
村岡伸久『偽札百科:隠された真実とは!』国書刊行会、2010910日、1800+税
 
 
◆[文書鑑定]関連ブックリスト
*偽文書関係は別にまとめる予定。
 
吉田公一『文書鑑定の基礎と実際』立花書房、19839月、2000
吉田公一『捜査のための実務文書鑑定』令文社、198811月、2300
◎吉田公一『文書鑑定人事件ファイル』新潮OH!文庫、20018月、676+税
吉田公一『筆跡・印章鑑定の実務:ポイント解説』東京法令出版、20046月、2500
江守賢治『漢字の字体と筆跡鑑定』三省堂、20046月、2400+税
魚住和晃『筆跡鑑定ハンドブック』三省堂20076月、1600+税
根本寛『筆跡事件ファイル:筆跡鑑定人が事件の謎をとく』廣済堂出版、200712月、1400円+税
【本書】●吉田公一『筆跡鑑定人は見た!:あの大事件の舞台裏』主婦の友インフォス情報社(発売:主婦の友社)、2012520日、1500+税

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