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■2016年読書メモ(8月)

今年の1月から7月までの7か月間で76点。8月は15点だったので、通算91点(月平均11.4点)。依然としてこれまでの平均値(16.5点)より大幅に少ない。映画ばかり見ているためか。

便宜的にほぼ読了した順に通し番号を付しているが、メモし忘れたりしているので、読んだすべてではない可能性もある。なお、一応巻頭から奥付まで目を通したもののみとする。

 

記載方法は、かつても記したことがあるので、こちらを参照されたい。



8月

 

77 常盤新平 『翻訳出版編集後記』 幻戯書房、2016617日、3400円+税  [注△文×索×]

※著者が1959年から1969年までの約10年間在社した早川書房で翻訳出版を担当した思い出話が、1977年から1979年の2年半《出版ニュース》に連載され、ようやく本となる。内容的・時間的に錯綜していたり、繰り返しが多くても、著者が2013年に亡くなっているので整理すること無く、わずかに注記で補う程度の編集と思われる。それにしても、頻出する『ゴッファーザー』のような誤記は何とかならなかったものか。

一号雑誌で終わってしまった《ホリデイ》のことは、くどくどと何度も出てくるのだが、その2年後(1963年)に《エラリイ・クィーンズ・ミステリ・マガジン》の編集長になったことには全く触れず。退職の理由も曖昧なので、巻末に解説「「後記」の後期」を書いている宮田昇が遠回しに書いている(pp.312-4:『新編 戦後翻訳風雲録』に退職経緯が触れられている由)。

 

78 【仕事関係につき省略】

 

79 山崎啓明 NHKスペシャル 盗まれた最高機密:原爆・スパイ戦の真実』 NHK出版、2015115日、1600+税  [注×文○索×]

201511月に放送された番組の取材から本になったもの。<核の機密を独占しようとするアメリカの諜報組織アルソスと、それを奪おうとする原爆スパイたち。その終わりなき闘争が本書のテーマ>(p.236)。なかでもソ連へ最高機密情報を大量に提供したのが、マンハッタン計画最年少の天才科学者セオドア・ホールだった。18歳でハーバード大学を卒業後、軍にスカウトされ、プルトニウム型原爆の開発に携わった(p.99)。ホールはアメリカが唯一の核保有国となれば世界のパワーバランスを一変させてしまうから、アメリカと敵対するソビエトも原爆を持てば勢力は均衡し、平和が守られると考えて、スパイとなった(p.190)。これによりソ連はアメリカの情報を得て一気に核開発に追いつく。ホールはヴェノナと呼ばれたソ連暗号解読計画でスパイであることが露見したが、FBIの尋問に口を割らず有罪にはならなかったようだ(p.230)。

あちこちに取材し、資料を見ているようだが、いかんせん詰めが甘く、上っ面だけで肝腎なところが曖昧なまま。緻密な記述であれば遥かに面白い内容となったであろうが。

 

80 とみさわ昭仁 『無限の本棚:手放す時代の蒐集論』 アスペクト、201641日、1480円+税  [注×文×索×]

※子供の頃からコレクター志向。ただし、一時的に熱中しても、それを上回るコレクターがいたり、ゴールがとても手が届かないと見極めると、一気に手を引いてしまう。<集めては飽き、飽きては集め>(p.70)るの繰り返しだ。しかし、著者の凄いところは<チェックリストを作らない者はコレクターじゃない。>(p.122)というところだ。<何かを集めようと思ったら、ぼくは最初の一個を手に入れるより先に、まずはエクセルでチェックリストの作成をはじめる。コレクションはそこからスタートするのだ。>(同)すなわちあるジャンルにおいて蒐集すべきものの一覧を最初に用意して、あとはひたすらチェックボックスを埋めるだけだ。そしてコレクターを物欲派と整理欲派に分類し、<整理欲派のコレクターは、本質的には「物体」には関心がない。集める行為だけが好きなだけで、集まったものには興味が向かないのだ。>(p.148)だから、物を集めず情報だけを集める「エアコレクター」なるものを提唱する(p.149)。

 

81 宮下志朗 『カラー版 書物史への扉』 岩波書店、2016526日、2700円+税  [注×文×索×]

20081月から201412まで岩波書店のPR誌《図書》の表紙に掲載された、書物にまつわる短文をまとめ直したもの。写本あり、揺籃期本あり、メモ帳あり、ビラあり、富山の薬袋ありで、掲載されたものの多くは大変興味深いのだが、あまりにも断片的・エピソード的で、<書物や文学の歴史をさまざまな側面から照射>(p.185)できたかどうか。なお、pp.166-7に掲げられている鈴木信太郎・渡辺一夫訳『サン・ヌゥヴェル・ヌゥヴェル:ふらんす百奇譚』(洛陽書院、1949年)の第1巻だけは老生も所有している。この本は唯一鈴木・渡辺の共同作業による唯一の装幀とのこと。

 

82 礫川全次 『雑学の冒険:国会図書館にない100冊の本』 批評社、2016610日、1700円+税  [注×文×索×]

※冒頭で「なぜ、国会図書館にない本を問題にするのか」で予防線を張っているが、どうも「アカデミックな知的空間」との対抗軸としての「在野の知的空間」を重視し、それが位置する雑書の世界を示さんがためとしか思えない。私家版・非売品などを除いても国会図書館にない本など膨大にあるだろう。しつこいぐらいに「なぜ○○が国会図書館に架蔵されていないのかは不明です」といった文が現われるが、今発行されたばかりの本ならいざしらず、かなり以前の本が架蔵されていない理由などわかるはずもないだろう。

 

83 中右 瑛監修 『浮世絵でみる!お化け図鑑』 パイ インターナショナル、201679日、2200円+税  [注×文△索×]

※英文併記の本で、タイトルもSomething Wicked from Japan: Ghosts, Demons and Yokai in Ukiyo-e Masterpiecesと併記されている。そのために各作品の解説は短くなり、ややわかりにくい箇所もある(テキストは山本野理子)。ほとんどの作品が拡大部分図と全体図(見開きも多い)を出しているので、240ページあってもさほどの点数は掲載されていない。月岡芳年の作品が多い。

 

84 明星聖子、納富信留編 『テクストとは何か:編集文献学入門』 慶應義塾大学出版会、20151030日、2200+税  [注◎文◎索○]

※<〈正しい〉テクストとは何か。その正しさを支える信頼は、どう形成され保持されるべきか。>(p.x)――このような<テクストの信頼性を担保する営み>(同)を編集文献学という。プラトンや新約聖書といった古典をはじめ、チョーサー、ゲーテ、ムージル、フォークナー、カフカらの文学作品、ニーチェの哲学作品、シェイクスピアの戯曲、ワーグナーのオペラ、こうした人口に膾炙したかのような作品ですら、実はそのテクストは決して確固たるものではない。それぞれのテクスト成立の略史を読むと、<流布するテクストの編集根拠や原則が何なのか。>(p.246)を常に念頭に置いて、情報を扱わなければならないことを知る。しかし、旧来の文献学の基本的な考え方――すなわち、<失われた唯一のオリジナルへと向かってゆく伝統的な樹形図的校訂のみならず、それに反対してベディエが提唱した、最良の写本を1つ選んで校訂する「最良写本」法も、現存するヴァージョン間に優劣をつけて、ヴァリアントを周縁に追いやっていることに変わりはない>(p.88)として否定され、<現在の編集文献学においては、「本文」と「ヴァリアント」を分けるという方法に疑問が付され、すべての草稿をそのままの状態で提示するべきだ>(p.121)とまで主張されている。ここまでくれば編集を放棄した「編集」文献学とでも言おうか。

*本書を読んで気になった本。

●ピーター・シリングスバーグ/明星聖子、大久保譲、神崎正英訳『グーテンベルクからグーグルへ:文学テキストのデジタル化と編集文献学』慶應義塾大学出版会、20099月、3200円+税

●ルー・バーナード、キャサリン・オブライエン・オキーフ、ジョン・アンスワース編/明星聖子、神崎正英監訳/松原良輔、野中進訳『人文学と電子編集:デジタル・アーカイヴの理論と実践』慶應義塾大学出版会、20119月、4800円+税

●小森陽一・他編『岩波講座・文学』第1巻、テクストとは何か、岩波書店、20035月、3400円+税

 

85 リンクアップ+グラフィック社編集部編 『伝わるインフォグラフィックス』 グラフィック社、2014725日、2400円+税  [注×文×索×]

※全くの作例集。ほんの申し訳程度に説明らしきものがつくが。

 

86 原田治、平田雅樹、山下裕二、ほか 『意匠の天才 小村雪岱』 新潮社、とんぼの本、2016630日、1600円+税  [注×文△索×]

※《芸術新潮》20102月号特集「小村雪岱を知っていますか?」を増補したもの。著者名は便宜上奥付に合わせたが、実質的には編集部が大半のコピーも書いている模様。ほとんど小村雪岱を知らなかったので、とても面白く読めた。

 

87 早川いくを 『へんな生きもの へんな生きざま』 エクスナレッジ、201581日、2800円+税  [注×文×索×]

※タイトルそのままに「へんな生きもの」を集めた写真集。どうでもいいようなコメント付きだが、巻末に極端に小さい文字で掲載された生物の学名、科目、簡単な説明などを記す。ただノンブルがノドの奥に小さく入っているため、ページを参照しづらい。

 

88 小島道裕 『洛中洛外図屏風:つくられた〈京都〉を読み解く』 吉川弘文館、歴史文化ライブラリー、201641日、1700円+税  [注×文◎索×]

※多数ある洛中洛外図屏風を総括して全体図を見せてくれる。とりわけ室町幕府が描かれた「第一定型」と呼ばれる初期洛中洛外図屏風(歴博甲本、東博模本、上杉本、歴博乙本)について政治的背景、都市風俗などを詳しく説明。その後江戸期に入ると、二条城が左隻の中心に描かれる「第二定型」が定石となるが、<権力者が「自らの都市」を描かせようとしたものと、京都の外部にいる人間が京都の様子を知りたい、手元に置きたい、という欲求に基づいて描かれたもの>(p.137)と二分化していく。もっとも洛中洛外図屏風の最盛期は寛永年間のごく初期までで、それは<「都市建設の時代」において、京都が最も先進的で発展した都市であった>(p.193)ためであった。その後人気がなくなるが、元禄頃から嫁入り道具としての需要、あるいは名所絵としての利用がなされていき、量産されたことを概括する。後半はやや駆け足気味。縮小されたモノクロ図版では屏風に描かれたものが判然とせず、大判の図録か画集を見ながらでないとわかりにくい。

 

89 木村博之 『インフォグラフィックス:情報をデザインする視点と表現』 誠文堂新光社、2010828日、2800円+税  [注×文×索×]

※大半の事例が自身の作例であるため(他者の例の明示が乏しいのだが)、大変具体的な制作の紹介となっている。本書において、インフォグラフィックスの構成要素を、ダイアグラム、チャート、表、グラフ、地図、ピクトグラムに分類し、それぞれの特性や着眼点、作り方などを詳述している。完成したものでは気づきにくいポイントも当時のラフスケッチなどを掲載して、実に丁寧にガイドしてくれる。

 

90 鈴木雅彦・鈴村嘉右 『データビジュアライゼーションのデザインパターン20:混沌から意味を見つける可視化の理論と導入』 技術評論社、2015520日、2580円+税  [注×文×索×]

※例示は主にダミー原稿による作例。紙上でのデータの可視化も可能だが、本書ではWEB上での可視化に重点。

 

91 稲葉千晴 『バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ:海軍情報部の日露戦争』 成文社、2016330日、3000円+税  [注◎文◎索○年表◎]

※実に史料をよく調査してあるし、バルチック艦隊が出港してから日本に接近するまでの停泊地を訪れて足で調べてもいる。20世紀初頭での通信の実態もわかったし、この時代の諜報活動の限界も納得。「第3章 日英同盟の諜報協力  3 海軍武官暗号――イギリス暗号技術の導入」(pp.80-85)では、日本海軍は日清戦争後アルファベットのコード表暗号をイギリスから導入したが、すぐに日本語のコード表に作り替えた。しかし、海軍は外務省にもこの暗号システムを提供したが、外務省は英語のコード表を使ったために容易に解読され、パリで電報を傍受された上、解読文をロシアに提供されていたのだった。巻末に月日を明記した年表を付す。

 

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隠居生活続行中。

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