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■2014年1月展覧会総括

20141月に見た、主に美術関連の展覧会について個人的な感想と評価を記した。あくまでも主観的なものである。特に騒音・混み具合などは、たまたまその時だけの現象かもしれない。(1月はあと数日残すが、もう行けそうにないので、掲載してしまう。1年分まとめてだとあらかた忘れてしまっているので)
配列は必ずしも会期順ではない。
 
◆評価ポイント ★★★(5)・・・(1)までの5段階評価
A:展示内容(作品、解説)・構成・展示品の質
B:展示方法・動線設計・照明
C:雰囲気・騒音・混み具合
 
1月
 
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●国立西洋美術館「モネ、風景をみる眼:
19世紀フランス風景画の革新」会期:12/73/9
A★★★★☆ B★★ C★★★
*国立西洋美術館とポーラ美術館の所蔵するモネを中心に展示。モネのカタログレゾネにそういえばでていたなあ、とやっと思い出すような意外な作品(例えば、モネ「グラジオラス」2点、ポーラ美術館蔵)も展示されていて楽しめた。もちろんモネだけでは展示がもたないので、ピサロ、スーラ、シスレーなど印象派オンパレードなのだが、モネと同じ風景を別な視点で描いている画家がいたりで、なかなかうまい構成となっていた。どうせなら国内にあるモネを全点集めてみれば、もっと面白かったかもしれない。
なお、本展だけではないのだが、国立西洋美術館は古い建物なのでやむを得ないとはいうものの、地下へ階段で降りなければならないという動線は、将来老人にはつらいものがありそう。ル・コルビュジエの設計であろうと、利用しにくければ直すのが当然(最後出口へだけは逆に戻れないように上り専用エレベータを設置)。美術館は建築家のものではないのだから。
 
●国立西洋美術館「エドヴァルド・ムンク版画展」会期:12/73/9
A☆☆☆☆ B★★ C★★★☆☆
*ムンク生誕150周年記念の国立西洋美術館所蔵版画展。ムンクは生涯で約850点もの版画を制作したという。《マドンナ》など前期の作品はいいものの、《アルファとオメガ》連作などは、ただムンクだから多少見てもらえるというだけの代物。とりあえず手持ちネタでスペースを埋めただけの企画。
 
●東京国立博物館「クリーブランド美術館展:名画でたどる日本の美」会期:1/152/23
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*平成館の2階の半分での展示なので(残り半分が「人間国宝展」)、通例より展示数は半減。それでもなかなかいい作品もきていた。「伊年」印の《雷神図屏風》の雷神の顔がユニーク。河鍋暁斎の《地獄太夫図》の解説には、衣装に地獄図が描かれているとあったが、実際は七福神や宝珠や「寿」字など吉祥の図柄が描かれている。この遊女は自ら「地獄」と名乗り地獄模様の衣を着ていたというので、作品を見ずに適当に書いたのか。深江蘆舟筆《蔦の細道図屏風》は、東博所蔵の屏風も本館に展示されているとのことで、帰りがけ寄ってみる。見たところそっくり同じ。どちらかが写し? なぜか4点ほど印象派などの作品(モリゾ、モネなど)が展示されていて、非常に違和感を覚えた。せっかくだからと借りてきただけかもしれないが、展示担当者は頭を抱えたんじゃないだろうか。
ついでに立ち寄った本館に龍や鷲の自在置物が何点か展示されていて、これには感激。
 
●東京国立博物館「人間国宝展:生み出された美、伝えゆくわざ」会期:1/152/23
A★★★☆☆ B★★ C★★
*古来の国宝・重要文化財と現代の人間国宝の作品とを並べる企画はなかなか面白い。工芸品は精緻に作られていると、それだけでも感激してしまうが、よく見るとさすがに凄い技であることがわかる。逆に手抜きの作品は、はっきり言ってゴミ。
 
●森アーツセンターギャラリー「ラファエル前派展:英国ヴィクトリア朝絵画の夢」会期:1/254/6
A★★★★ B★★★☆☆ C
*会期始まってすぐに行ったためか、比較的すいていた。ご承知のようにラファエル前派と総称される人たちは、短期間の活動に終わっているので、絵画の性格も思ったよりは普通の感じのものが多い。ラファエロ以前を求めた割には、時代のせいかアカデミズム的に丁寧な筆触で描かれた作品が少なくなかったこと。きちんと写実の技術を学んだ上の試行錯誤というべきか。優品と並が混在しているのはやむを得ないが。とりわけ良かったのは、額。図録には額は一切掲載されていなさそうだったが、実はアイビーの浮彫が囲んでいたり、何か詩のような言葉がモリス好みの中世風書体で書かれていたり、額と絵画とが一体になっているので、絵以上に額の解説が欲しかった。額の意匠に、画家自身の意向が加味されているのだろうか。ときどき壁面の裏で大きな騒音がするのには閉口。それにしても、三菱一号館美術館で開催していた「バーン=ジョーンズ:装飾と象徴」展(2012623日~819日)を見ておかなかったのは残念。
 
 

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『捨てる女』◆捨てることについて

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 内澤旬子『捨てる女』本の雑誌社、20131129日、1600円+税 [注×文×索×]
 
本書は、かつてイラストルポライター、いまは文筆家になっている著者による、過激な「断捨離」を描いたドキュメントである。《本の雑誌》20105月号から20138月号まで、「黒豚革の手帖」と題して連載。
 
かつて<イラストルポライターという、長々しくもカタカナばかりの肩書きを、つい先頃まで名乗っていた。>(p.10)そのため、資料や本、製本ワークショップでの道具、物品で膨れ上がった部屋はカオスのようになっていたが、ある時突然、<いやな感じに襲われ、息苦しくなってしまった。>(p.21)それは、著者が乳癌に罹ってしまったため、カオスが嫌いになってしまったのだ(ちなみに、乳癌に罹ったあと元気が回復していくさまは、『身体のいいなり』に詳しい)。
 
まず最初は、溜め込んでしまった食料品を征伐する。<四月は戸棚や冷蔵庫に巣食う保存食と闘っていた。>(p.24)でも、そのままでは捨てることができず、食べられるものは全部食べようとしてしまう。
食品に続き、家具、靴、衣服、とにかく捨てる。
 
2009年に、千葉県の廃屋を借りて、半年間豚三匹を飼育した(このことは、『飼い喰い:三匹の豚とわたし』に詳しい)。まず、廃屋に残っていた膨大なゴミの山を捨てた。飼育中は豚の糞尿を浄化槽に捨て、<丹精込めて育てた三匹の豚、あっというまに肉になっ>(p.99)た後、豚小屋破壊と廃屋撤収。残ったのは三匹の頭がい骨のみ。ちなみに、その中の一匹の頭がい骨と一緒に著者が写っている写真が、著者自身のブログにある。
そして、究極(?)の捨てる技は、配偶者(河上進氏=南陀楼綾繁)を捨てること。20105、<トークショーで多くの人の面前で「好きなことしてるから儲ける気なし」と言った配偶者にぶち切れた。あたしの不安を何もわかっていない。これ以上怒っても無駄だろうと、夫と彼の大量の荷物の断捨離を決意。>(p.130)詳しくは書かれていないいろいろなことがあったらしく、ようやく<震災から五カ月後に、離婚は成立した。>(p.162
 
さらに震災後には、トイレットペーパーが買い占められたことを怒り、<尻を脅迫する気か!! ならばお前とは、もう縁を切る!!>(p.142)とばかりに、トイレットペーパーを使わない生活を工夫してしまう。このあたりの微に入り細にわたる工夫は著者ならでは。
 
この後も、本を片付け、製本ワークショップの道具や材料を処分してしまう。20年かけて<製本のアイデアの参考のためにと買いためた、革装あり、写本あり、活版印刷あり、和本あり、アーティストブックありの、お宝本>もすべて処分。お宝本はイラスト原画と合わせて、自称<投げ捨て展覧会>をスタジオイワトで開催。題して「内澤旬子のイラストと蒐集本展」。平野甲賀のデザインになるポスターはこちら。昨年開催された「平野甲賀の仕事 1964−2013 展」(武蔵野美術大学 美術館・図書館)にも展示されていた。これは気づいていたらぜひとも行きたかった。
こうして、何もかも捨てまくった著者は、ようやく<捨て暮らしという名の精算事業から卒業>(p.231)したのだが、<捨てるものがなくなってきた途端に、寂しくなってきたのはどういうことか。…もう少し淡々と、寂しい。愛着の持てるものが欲しいと、指先が疼き始めたというか。>(p.235)捨てた反動か、はたまた次なる蒐集を始めるのか。
 
老生も余命を考えると、そろそろ捨てることを考えなければならないか。50年近く無為に集めてきた雑本の数々は、それこそ著者のようなお宝本にすらなりえず、打ち棄てられるのが関の山。されば、残りの人生のために何を残しておくか、そろそろ考える潮時かもしれぬ。
 
あとがきによれば、著者は東京脱出を遂に決意したらしい(p.245)。
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
内澤旬子『身体のいいなり』朝日新聞出版、201012朝日文庫、20138
内澤旬子『飼い喰い:三匹の豚とわたし』岩波書店、20122
 
 
◆[内澤旬子]関連ブックリスト
 
◆著書
◎●『センセイの書斎:イラストルポ「本」のある仕事場』幻戯書房、20065月→河出文庫、20111
『世界屠畜紀行』解放出版社、20071月→角川文庫、20115
●『おやじがき:絶滅危惧種中年男性圖鑑』にんげん出版、2008121日→講談社文庫、20122
●『身体のいいなり』朝日新聞出版、201012月→朝日文庫、20138
●『飼い喰い:三匹の豚とわたし』岩波書店、20122
●『内澤旬子のこの人を見よ』小学館、2013826日 
【本書】●『捨てる女』本の雑誌社、20131129
 
◆共著
〔イラスト・挿絵〕
村中李衣文『カナディアンサマー・KYOKO』理論社、19941月[児童書]
加藤多一文『きこえるきこえる:ぽう神物語』文渓堂、19944月[児童書]
斉藤政喜文『東方見便録:「もの出す人々」から見たアジア』小学館、19985月→文春文庫、20014
村中李衣文『かわむらまさこのあつい日々』理論社、19986
◎●松田哲夫文『印刷に恋して』晶文社 200112
◎●松田哲夫文『「本」に恋して』新潮社 20062
斉藤政喜文『東京見便録』文藝春秋、20093
 
〔文章〕
下川裕治編『アジア路地裏紀行』徳間書店、199910
高野秀行『辺境の旅はゾウにかぎる』(高野との対談を収録)本の雑誌社、20086月→〔改題〕『辺境中毒!』集英社文庫、201110
 
〔文章・イラスト〕
『遊牧民の建築術:ゲルのコスモロジー』INAX出版、INAXブックレット、19939
 
 

『兎とかたちの日本文化』◆兎の美術について

 某月某日、こんな本を読んだ。
 
 今橋理子『兎とかたちの日本文化』東京大学出版会、2013926日、2800円+税 [注◎文◎索×]
 
本書は、兎を「かわいい」とする日本人の独特の感覚、感性が、どのような経緯で成立を遂げてきたのか、兎の造形=かたちが日本の文化をどのように育んできたのかを明らかにしようとする書である。
 
目次を掲げておこう。各章の末尾には、「逸品への誘い」としてその章に関わりのある作品を取り上げ、章で論じられた文化的な意味合いを作品分析に応用してみせる。なかなかうまい仕掛けである。
はじめに――ウサギを好む日本人
I章 月の兎――うさぎ図像の伝統とは?
  逸品への誘いI 葛蛇玉筆「雪夜松兎梅鴉図屏風」
II章 「伏せた丸い兎」の理由――和菓子からミニチュア・アートまで
  逸品への誘いII 永田哲也作「和菓紙」アートの世界
III章 桜とうさぎ――<擬古典>文様の創造
  逸品への誘いIII 上村松園筆「待月」
兎の足あと――あとがきにかえて
 
著者は、冒頭で次のように言う。<いつの頃からか日本には潜在的あるいは日常的な「うさぎブーム」が存在し、それが現代日本の生活・文化にもしっかりと定着していることは、もはや明らかであろう。>(p.5)とりわけ明治初期に外来のウサギが飼育されるようになると、愛玩用に珍種を生みだそうとする流行が起き、あまりの熱狂ぶりに東京や大阪では禁止令や重課税などで兎投機を抑制する事態に至った(pp.9-11)。珍種を人工的に作り出すことは江戸時代から朝顔等で盛んに行われていたわけで、それが兎になったともいえた。しかし、いつごろからか、日本人は兎を「かわいい」とみなすようになる。
<兎を「かわいい」と見做す日本人の感覚が、実はきわめて「現代的」なものであり、しかもアジア地域でも「日本だけ」というきわめて特殊な事例であることに、日本人が無自覚であるという点も浮き彫りにされてくるのである。>(p.16)とはいえ、本書で比較文化的な議論がなされるわけではなく、あくまでも日本における兎のイメージの取り扱いにほぼ限定される。
 
「第I章 月の兎――うさぎ図像の伝統とは?」においては、月と兎の関係を知ることによって、さまざまな兎の美術作品が読み取れることを示す。
<「月と兎」あるいは「月の中に棲む兎」のイメージは、…言説の源が中国にあることが確かめられた。>(p.29)その密接な関連を前提にすると、<虚空の「天を振り仰ぐ兎」は、「月」を仰ぐために頭をもたげていることがおのずと明らかになる。>(p.31)「秋草に兎」のモチーフは、<月→満月→秋→秋草/という思考の変遷を経て、「秋草」という日本的題材とも結び付いていった>(p.32)。「木賊(とくさ)に兎」のモチーフは、源仲正の歌から世阿弥作の謡曲『木賊』の中の歌を経て、<木賊→「磨く」→明るい月→満月→兎>(p.36)という連関で考えることができる。
さらに「波に兎」のモチーフは、工芸の世界では「波兎(はと)文様」と称される。謡曲『竹生島』を原典とする説が紹介され、本文中に「月海上に浮かんでは、兎も波を走るか」という一節があることから、<「波の上を走る兎」とは、実景的に「兎」が「波」の上を走っている様子を物語るわぇではなく、実は「月の光」が湖面の上にゆらいでいるそのさまを〈見立て〉、形容している一種の譬の表現なのである。>(p.40
したがって、兎の絵に<たとえ画面上に「月」が描かれていないとしても、…鑑賞者は不在の「月」を実在のものとして感知するよう要請されている。>(p.41
 
近代に至るまで、画家は決して自由に題材とモチーフを選択できたわけではなく、見えない伝統に常に縛られていたことに思い至る。近代以前の美術作品に「兎」が登場したら、まず「月」を思い浮かべることが、その作品を理解する第一歩だ、ということになろうか。
 
著者は続いてもう一つの重要なモチーフを提示する。「伏せた丸い兎」のモチーフだ。
結論を言えば、<伏せた丸い兎⇔玉兎(たまうさぎ)⇔玉兎(ぎょくと)⇔月⇔満月>(p.54)という連関で考えることができる。玉兎(ぎょくと)とは、月の異名である。
一方、「金烏(う)玉兎」と並置されて呼ばれることも多い。この「金烏」は太陽の異名であり、太陽の中に三本足の烏が棲むという古代中国以来の伝説によるものである(p.58)。そして、太陽と月の位置関係を検証して、<右―日天=太陽/左―月天=月>(p.63)を示す。<この左右の位置関係は、〈日月〉の聖性図像を用いるあらゆる造形表現において、必ず踏襲されている約束事になっていると言える>(p.64)のである。したがって、<〈日月山水図〉や〈日月四季花鳥図〉の諸作例では、ほとんど例外なく、春夏を象徴する桜花や緑の樹々が描かれた、右隻に「日」が、そして秋冬を象徴する紅葉や雪景色の左隻に「月」が描かれる。>(p.66
この約束事を認識していれば、日月の描かれた屏風を眺めたとき、いろいろなことがわかってくるだろう。
 
著者は、こうした分析結果を踏まえて、プライスコレクションにある葛蛇玉筆「雪夜松兎梅鴉図屏風」を子細に見直してゆく。この六曲一双の屏風は、これまで右隻に兎、左隻に烏を置いていた。昨年の東北3県を巡回した「若冲が来てくれました:プライスコレクション江戸絵画の美と生命」でも、同様の展示であった。しかし、上記の約束事を踏まえるならば、<右隻には「日」を表す烏を、そして左隻には「月」を表す玉兎(ぎょくと)の兎を、明らかに配置すべきなのである。>(p.70)と主張する。おそらくこれに反論することは難しいだろう。
さらに、木に登る兎という一見奇妙な姿は、「桑実寺縁起絵巻」を参照することにより、<烏や兎はそれぞれに、「日光・月光菩薩の化身」なのであり、まずこの二つのモチーフによって、物語全体の神話性が表象される。>(p.82)と解き明かす。
結論を言えば、<この屏風は「雪夜日月図」と呼ぶべきであろう。この屏風のまばゆいほどの雪の情景は、金烏玉兎に護られて今ここへと降臨する、薬師如来の姿そのものとも見えてくるのである。>(p.90)この鮮やかな読み! 「若冲が来てくれました」展でも若冲以上に圧倒的な迫力で見る人を捕らえた本作が、実はこのような意味合いをもって立ち現れるとは。
 
「第II章 「伏せた丸い兎」の理由――和菓子からミニチュア・アートまで」は残念ながら第I章のような冴えは見いだせなかった。
 
「第III章 桜とうさぎ――<擬古典>文様の創造」においては、伝統文様である兎に花樹を組み合わせた「花兎(かと)文様」が、兎に桜花の組み合わせという「花うさぎ」に転じたことを論じる。この点について、「雪月花」文様が元ではないかとする(pp.148-9)。こうした<古典を模した新しい意匠――すなわち〈擬古典〉>(p.147)とみなし、ある意味で積極的に評価する。
 
この章で取り上げている「逸品への誘いは、上村松園筆「待月」である。画面ほぼ中央に柱があり、その奥に月の出を待つ女性が描かれた作品で、発表当時は悪評だったらしい。しかし、著者は月の出を待っているのではなく、来るはずのない恋人を待つ姿と読み解く。<「雪月花の時最も君を憶ふ」(白居易)という、不在の恋人へ込めた想いのメッセージがある。つまりそれは恋い慕う人が、もはや現れることはないのだという、一種の諦めにも似た無常観でもあるのだ。>(p.171
<上村松園筆「待月」は、東洋美人画の〈伝統的主題に準える〉という擬古典の思考を、主題の選択と描き込むモチーフの描写方法の両方で達成してみせた。>(p.171)これもなかなかに切れ味のいい分析だ。ここまで考え抜いて構成することのできた上村松園を、少し見直した。
 
「主題の選択と描き込むモチーフの描写方法」は、かつての芸術作品を見るときの、基本的な視点である。しかし、にもかかわらず、なかなか難しい。主題がいったい何なのか、それすら判然としないことも往々にしてある。描かれているモチーフが何であるかはわかっても、それが当時はどのような意味合いで描写されているのかは、必ずしも自明ではない。
西洋美術を読み解くための事典類は数多く出版されている。ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』など、日本語で読める本も多い。一方、日本美術に関しては、寡聞にしてその存在を知らない。本書のような日本美術解読の書を読むと、無性にそういった日本美術解読事典が欲しくなる。
 
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
ジェイムズ・ホール/高橋達史・他訳『西洋美術解読事典:絵画・彫刻における主題と象徴』河出書房新社、19885
 
 

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『本を愛しすぎた男』◆本泥棒について


某月某日、こんな本を読んだ。
 
 アリソン・フーヴァー・バートレット/築地誠子訳『本を愛しすぎた男:本泥棒と古書店探偵と愛書狂』原書房、20131125日、2400円+税 [注○文△索×]
 Allison Hoover Bartlett, The Man Who Loved Books Too Much: The True Story of a Thief, a Detective, and a World of Literary Obsession, 2009
 
本書は、病的なまでに稀覯本を盗み続けたジョン・ギルキーと、彼を追い詰めたアメリカ古書籍商組合(ABAA)の防犯対策室長を勤めたケン・サンダースの攻防を描いたノンフィクションである。
 
最初に、稀覯本とは何だろうか。著者はこんな定義を紹介する。<「稀覯本」の定義は古書店主の数並みにあるということだ。…「稀覯本とは刊行時より値が上がった本」というマンハッタンの古書鑑定士バート・アウアーバックの言葉。またアメリカ人コレクターの故ロバート・H・テイラーは、稀覯本とは「私が欲しくてたまらないのに見つからない本」と定義した。>(p.17)まあそんなところだろう。とりわけ後者の定義にはうなずく方も多いかもしれない(欲しくもない本なら、その他大勢でしかないのだから)。さて、本書の主人公の一人ジョン・ギルキーは、まさに「欲しくてたまらない」のに、自分が入手できないのは「不公平だ」と考えたのである。
 
ジョン・ギルキーは、とんでもない本泥棒だった。<1999年末から2003年初頭にかけてジョン・ギルキーはアメリカじゅうの古書店からおよそ10万ドルの本を盗んだと推測できる。過去10年のあいだで、これほど派手に盗みを働いた本泥棒はギルキーだけだ。>(p.33
しかし、古書店主はなかなか自分の店の本が盗まれたことを公表しようとしなかった。それもあって、後にギルキーが逮捕され、家宅捜査されても、盗んだ本なのか正当に買った本なのかが区別することが難しく、回収できた本はごくわずかでしかなかった。また、<泥棒たちが高額な本を盗んでも、たいていは彼らの犯罪は法廷では軽く扱われる。>(p.186)ギルキーも逮捕されても軽い刑にとどまり、簡単に仮釈放され、すぐに新たな本泥棒を繰り返していた。
 
著者は、本泥棒のことを調べ始めると、刑務所にいるギルキーに取材し、出所後も3年間ほど取材を続けていった。一方で、サンダースら古書店主への取材も実施。本書は、その取材の過程をそのままなぞるような構成となっており、途中で愛書狂や他の本泥棒の話が挿入されることで、ギルキーがなぜ本を盗み続けるのかの特異性を浮き彫りにしようとする。
 
ギルキーの主な手口は、サックス・フィフス・アベニューでアルバイトした際に集めた客のクレジットカード番号の悪用である(p.73)。まず、古書店へ本を電話で注文し、知り得たカード番号を伝える。カード会社から使用許可がでたことを店に確認させた上で、代わりの者に本を取りに行かせる(実際には本人が行くことも多いが代わりの者になりすます)。これはクレジットカードを見せることを避けるためだ(p.92)。
あるいは、15000ドルもの本をクレジットでリボ払いとして買う。その後、クレジット会社へはカードを紛失したと連絡し、その上で紛失後に不正請求があったと伝える。<請求金額の本を買ったのは自分ではないとカード会社に主張したのだ。>(p.205)その結果、1セントも払わずに本を入手することができた。
ギルキーは取材者(著者)の目の前で、本を実際に電話注文することさえ行ってみせる(pp.214-220)。そこには犯罪意識は希薄だ。
 
彼は、奇妙な信念を持っていた。<「ぼくは経済学の学位を持ってます。」…「ただで本を手に入れれば、売るときには百パーセントの利益を得られます」>(p.47)なんという経済学!
 
ABAAは本泥棒を次のように分類している。<盗まずにいられない「窃盗狂」の泥棒。金欲しさに盗む泥棒。怒りにまかせて盗む泥棒。出来心で盗んでしまう泥棒。自分のために盗む泥棒。>(p.35)稀代の本泥棒ギルキーはどれに当てはまるのだろうか。
著者は長年の取材から、次のように考える。ギルキーの<稀覯本コレクションが人々から賞賛されることが、どうやら彼の欲望の中心らしい。>(p.44)さらに、<彼は自分の罪を認めようとしない。だから、自分の貴重書籍のコレクションが別のコレクターや古書店主よりも劣っていると思ったら、世界は「不公平」だと考えてしまう。そして彼流の「仕返し」をする。…こんな歪んだ世界観はどうやって生まれてきたんだろう。>(p.96
著者は、ギルキーの若い頃を調べるために、母親にも取材に赴く。そこで出会うのは、ギルキーをひたすら信じる母親だったが、あまり成果は得られなかった。
 
結局、<ギルキーは他人から教養ある紳士と思われたくて本を盗んでいる。偽りのイメージやニセのアイデンティティを築きながら、教養ある紳士となるために懸命に努力している。…そうした努力を通じて、彼は理想の自分を作ろうとしている。>(p.246)と結論付ける。
 
本書のタイトル『本を愛しすぎた男』The Man Who Loved Books Too Much が、果たして本泥棒ギルキーを正しく表現しているのかどうか。彼が本を愛するあまり盗んでいる、とはとうてい思えない。所有欲は人一倍あることはわかる。他人が持っているのなら、自分にも持つ権利がある、というとんでもない思考回路も理解できないわけではない。ただ、自分の稀覯本コレクションを自慢したいがため、ということでは、なにも「本を愛する」ことにはならない。むしろ本を素材にした自己顕示欲の発露というべきであろう。「教養ある紳士となるために懸命に努力している」とも思えない。詐欺師は詐欺を最も効果的に実行するために、相手を研究し尽くし、偽の人格を完璧に作り上げるための努力を惜しまない。彼もまたしかり。古書を熟知した古書店主を騙すためには、古書の勉強をし、またさまざまな姿をとろうとする。「教養ある紳士」の偽装もありえよう。それで、「彼は理想の自分を作ろうとしている」と言い切れるのか。著者の結論は、いささか思い入れ過剰で、ギルキーの欲望の底を見誤っているのではないだろうか。
 
まもなく、エリック・ラスムッセン『シェイクスピアを追え!:消えたファースト・フォリオ本の行方』が岩波書店から刊行される。コレクター垂涎のファースト・フォリオが、400年の間にたどってきた数奇な運命をめぐるエピソードを集めたもの。このフォリオにとり憑かれた本泥棒も登場するようだ。どうやら本泥棒続きで楽しめそうだ。
 
ちなみに、本書にも電子書籍の話がごく簡単に出てくるが、紙の本への愛着という視点でしかない(pp.209-210)。しかし考えてみたら、将来電子書籍にも「稀覯電子書籍」などというレア物も出てくるのだろうか。ある特定のデバイスでしか読めない電子書籍とか、配信会社が消えたしまったためにデータも失われた電子書籍とか、著者の原稿段階のデータが流出したものだとか。電子書籍古書店が可能であるならば、「稀覯電子書籍」もありうるかもしれない。いかなる時も、コレクターは存在するはずだから。誰か、紙の本ではない、電子書籍の稀覯本コレクションの存在を描き出せないだろうか。
 
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
エリック・ラスムッセン/安達まみ訳『シェイクスピアを追え!:消えたファースト・フォリオ本の行方』岩波書店、20142月刊行予定
 
 

■既刊・近刊メモ(2014年1月版 Ver.2)

20141月前半に刊行された(はずの)本と、1月後半以降の近刊を掲載する。若干の本には余計なコメントを付した。日付は発行日ではなく、発売日。発売日順を原則としているが、WEBでの確認が中心なので、違っているかもしれない。
*前回掲載のものから追加・変更した箇所を焦茶色で示す。
なお、近刊の本についてはあくまでも予定であり、タイトル・発売日・価格ともに変更の可能性はある。
次の行は私的メモ。
■読んだ本(▲元版で読んだ)、■買った本(▲元版所有)
 
1月前半に出た本から】
 
■高原英理編『リテラリーゴシック・イン・ジャパン:文学的ゴシック作品選』ちくま文庫、1/81600円+税 〔詳細〕
*「幻想文学」としてみても「怪奇小説」・「ホラーノヴェル」等々としてみても、どうも完全には覆えない、現代の不穏を感じさせる優れた文学作品集。収録作品は全39作品(38作家)、680ページを越える大冊。

アーサー・オードヒューム/高田紀代志・中島秀人訳『永久運動の夢』ちくま学芸文庫、1/81400円+税 〔詳細〕
*科学者の思い込みの集大成として、あるいはイカサマの手段として作られた永久機関。「不可能」の虜になった先人たちの奮闘を紹介。元版は朝日新聞社、朝日選書、1987420日、1300円。

福嶋聡『紙の本は、滅びない』ポプラ社、ポプラ新書、1/8780円+税 〔詳細〕
*電子書籍は、紙の本に取って代わるのか? インターネット空間に漂うコンテンツが膨大になればなるほど増す、書物の必要性。現役書店員(現・ジュンク堂書店難波店店長)が今こそ世に問う「紙の本」の意義。従来『紙の本が死なない理由』という仮題であったが、どうやら変更になった模様。

鈴木眞哉、藤本正行『新版 信長は謀略で殺されたのか』洋泉社、歴史新書y1/11、920円+税 〔詳細〕
*戦国史上最大の謎である「本能寺の変」の首謀は誰か? 杜撰極まりない信長「謀殺説」に地道な史料解釈で対抗する。

■ビー・ウィルソン/真田由美子訳『キッチンの歴史:料理道具が変えた人類の食文化』河出書房新社、1/152800円+税 〔詳細〕
*美味しい料理は道具で進化した! 食の歴史はテクノロジーの歴史だ。古今東西の調理道具の歴史をたどりながら、それらが人々の暮らしや文化にどのような影響を与えてきたのかを読み解く。『食品偽造の歴史』(白水社)の著者による料理道具史。

山口昌男『本の神話学』岩波現代文庫、1/161180円+税 〔詳細〕
*おびただしい書物を引用し文化的背景や人物を論じて、自由で快活な知を自らのものとするための技法を明示する、博覧強記の神話的一冊。

山口昌男『歴史・祝祭・神話』岩波現代文庫、1/161080円+税 〔詳細〕
*歴史の中で犠牲に供されたトロツキーやメイエルホリドらの軌跡をたどり、スケープゴートを必要としそれを再生産する社会の深層構造をあぶり出す。最初は《海》(中央公論社)に一挙連載したもの。

ミルチャ・エリアーデ/前野佳彦訳 『加入礼・儀式・秘密結社:神秘の誕生――加入礼の型についての試論』 法政大学出版局、叢書・ウニベルシタス、1/174800円+税〔詳細〕
*エリアーデ最大のライフ・ワーク――死と加入礼の内的連関の解明。本書は、その未完の研究の核心をなす、未開社会の社会構成における加入礼の基本構造・形態・本質の宗教史的探究である。

佐伯啓思 『正義の偽装』 新潮新書、1/17740円+税〔詳細〕
 *「アベノミクス」という虚栄、「民意」という幻想、「憲法」というまやかし、「民主主義の断末魔」が聴こえる。

春原剛 『日本版NSCとは何か』 新潮新書、1/17700円+税〔詳細〕
*国家安全保障会議(日本版NSC)の内実とはどのようなものなのか――。モデルとなった本家・米国での実情と創設の歴史、日本で考え得る「有事のシミュレート」、その問題点に至るまで解説。

阿部潔 『監視デフォルト社会:映画テクストで考える』 青弓社、1/192000円+税〔詳細〕
*現代社会の監視とは、見張り/見張られ、見守り、相互に見合うことである。映画から現代の監視に潜む「おぞましさ」を浮き彫りにする。

 
【これから出る本】(タイトル・発売日・価格等はすべて予定)
 
◆1月後半予定
■シンシア・D・ベアテルセン/関根光宏訳『キノコの歴史』原書房、「食」の図書館、1/202400円+税〔詳細〕
*「神の食べもの」と呼ばれる一方「悪魔の食べもの」とも言われてきたキノコ。キノコ自体の平易な解説は勿論、採集・食べ方・保存、毒殺と中毒、宗教と幻覚、現代のキノコ産業についてまで述べた、キノコと人間の文化の歴史。

■コリー・オルセン『トールキンの「ホビット」を探して』角川学芸出版、1/232300円+税 〔詳細〕
*『ホビット』から『指輪物語』へ、トールキンが残した謎を読み説く。

■マリア・コニコヴァ『シャーロック・ホームズの思考術』早川書房、1/232000円+税 〔詳細〕
*あなたもホームズと同じ思考能力を持つことができる。最新の神経科学と心理学の成果から名探偵の推理の秘密に迫り、実践方法を伝授する。

■黒岩比佐子『忘れられた声を聴く』幻戯書房、1/242286円+税 〔詳細〕
*惜しまれつつも急逝した評伝作家(ヒストリー・オーサー)が歴史を読み、書くことの魅力をつづる単行本未収録エッセイ集。

■辻惟雄『辻惟雄集4 風俗画の展開』岩波書店、1/243400円+税 〔詳細〕
*洛中洛外図屏風の展開を総覧し、重層的な北斎芸術の本質に迫り、新しい俯瞰形式を模索した江戸後期の浮世絵師、蕙斎、北斎、貞秀を論じる。

■田澤耕『〈辞書屋〉列伝:言葉に憑かれた人びと』中公新書、1/25860円+税〔詳細〕
*ドラマのない辞書はない! オックスフォード英語辞典、日本初の国語辞典「言海」、ヘボンが作った和英辞典など、苦闘と情熱を描く。

『竹久夢二:大正ロマンの画家、知られざる素顔』河出書房新社、1/271600円+税 〔詳細〕
*生誕130年記念出版。大正ロマンの象徴として、画家・詩人・デザイナーとして活躍した「夢二」の世界を多彩な顔ぶれが語る。

■アダム・カバット『江戸の化物:草双紙の世界』岩波書店、1/282400円+税 〔詳細〕
*江戸中期に大流行した草双紙は諷刺・パロディに満ちた絵入り読物。そこに登場する化物は江戸っ子の間で笑いと人気を呼んだ。生まれも育ちもNYながら日本文学研究一筋のカバット先生が、化物の魅力と変遷を解き明かす。

■クラフト・エヴィング商會『クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会』平凡社、1/282500円+税 〔詳細〕
*この展覧会はうそかまことか――。クラフト・エヴィング商會の棚おろし的展覧会(世田谷文学館1/253/30)公式図録。展覧会の案内はこちら

■デイヴィッド・リンゼイ/中村保男・中村正明訳 『アルクトゥールスへの旅』 文遊社、1/283300円+税 〔詳細〕
*哲学の書でありながらファンタジーとして楽しく読める傑作と呼ぶにふさわしい長篇。サンリオSF文庫版の改訂新版。

■ネイサン・ベロフスキー/伊藤はるみ訳 『「最悪」の医療の歴史』 原書房、1/282400円+税 〔詳細〕
*古代から中世、ルネサンス期を経ていわゆる「英雄医療」の時代まで、現実とは思えない、当時の「最新科学」による治療や処置を、数多くの実例とともに紹介。

ネイサン・ベロフスキー/廣田明子訳 『「最悪」の法律の歴史』 原書房、1/282400円+税〔詳細〕
*古今東西、人の住むところにはありとあらゆる規制がある。「臆病な人を驚かせたら罰金」「飼い犬を一日三回以上散歩させないと罰金」「国会議事堂内で死んではいけない」など、現役弁護士が調べ尽くした「悪法」「珍法」大全!

エドワード・D・ホック/木村二郎訳『サイモン・アークの事件簿V創元推理文庫、1/301100円+税 〔詳細〕
*オカルト探偵アークが異界の謎と遭遇する8編を収録した短編集第5弾。シリーズ最終巻。

■ブライアン・J・ロブ/日暮雅通訳 『ヴィジュアル大全 スチームパンク:歴史・文化・未来 原書房、1/303800円+税 〔詳細〕
19世紀ヴィクトリア朝の蒸気機関と鋼鉄、未来への創造力、そしてジャパネスクが生み出した「スチームパンク」。ジュール・ヴェルヌやウェルズ、宮崎駿の作品から芸術品やファッション、音楽にいたるその全体像をカラフルに紹介した決定版。

■バロネス・オルツィ/平山雄一訳『隅の老人完全版』 作品社、1/316800円+税 〔詳細〕
*元祖“安楽椅子探偵”。原書単行本全3巻に未収録の幻の作品を新発見1本収録。シリーズ全38篇を網羅した、世界初の完全版1巻本全集!

小林賴子 『庭園のコスモロジー:描かれたイメージと記憶』 青土社、1月下旬、2900円+税
 
小和田哲男 『戦国大名と読書』 柏書房、1月下旬、2200円+税〔詳細〕
*後世に名を残す武将の多くはやはり読書家だった…! 『論語』から『源氏物語』まで、戦国大名たらしめた読書と人格形成のあり方に迫る、本と人の親密な関係。

■ミルチャ・エリアーデ/奥山倫明・木下登・宮下克子訳 『ポルトガル日記1941-1945 作品社、1月、2400円+税 〔詳細〕
*第二次世界大戦という激動の時代に、歴史の大波に翻弄された東欧の小国ルーマニア、その不世出の一知識人が残した、精神と情念の彷徨の記録。

 
◆2月予定
宮武外骨『アメリカ様』ちくま学芸文庫、2/61000円+税
 
早川タダノリ『神国日本のトンデモ決戦生活』ちくま文庫、2/6950円+税
 
■貴田庄『西洋の書物工房:ロゼッタ・ストーンからモロッコ革の本まで』朝日選書、2/71400円+税 〔詳細〕
 *花切れ、天金や小口の装飾、見返しなど、本を成立させる各部の起源と変遷をパリで学んだ著者が辿る西洋の書物史。元版が芳賀書店から200012月、5000円、B5判で出たものだとするとオールカラーだったので、朝日選書なら大半はモノクロだろうか。

■阿辻哲次、小駒勝美、柴田実、柏野和佳子、エリク・ロング 『日本語文字・表記の難しさとおもしろさ』(仮)彩流社、2/10〔詳細〕
20119月のNINJALフォーラム「日本語文字・表現の難しさとおもしろさ」(国立国語研究所主催)の講演・報告を各分野の領域から展開し、それぞれ専門的関心により問題点を取り上げて、現代日本語の文字・表現の難しさとおもしろさを明らかにしていく。

■ハンス・ベルティング/仲間裕子訳 『イメージ人類学』 平凡社、2/135000円+税 〔詳細〕
*美術史を広くイメージの学として構想し直したベルティングの理論的主著。

■ティム・インゴルド/管啓次郎解説、工藤晋訳『ラインズ:線の文化史』 左右社、2/152800円+税〔詳細〕
*人間世界に遍在する〈線〉という意外な着眼から、まったく新鮮な世界が開ける。知的興奮に満ちた驚きの人類学! 刊行されるというアナウンスがあってから、いつまでも出なかったのだが・・・

■エリック・ラスムッセン/安達まみ訳 『シェイクスピアを追え!:消えたファースト・フォリオ本の行方』 岩波書店、2/21〔詳細〕
*コレクター垂涎の稀書が、400年の間にたどってきた数奇な運命をめぐるエピソードを集めたもの。の奇想天外なフォリオの運命をたどるにつれて見えてくるのが、このフォリオにとり憑かれた富豪、泥棒、愚者、変人、さまざまな人々がその人生を翻弄される姿。

■樫原辰郎『海洋堂創世記』白水社、2/211800円+税 〔詳細〕
*日本が世界に誇るガレージキット&フィギュア製造会社、海洋堂公認。原型師たちの活躍を描く1980年代の青春グラフィティ。

『文藝別冊 夢野久作』河出書房新社、2/241200円+税〔詳細〕
 *単行本未収録のエッセイ、猟奇歌、書簡を発掘公開するほか、あらゆる角度からその魅力にせまる。

マイケル・ポーラン/野中香方子訳 『人間は料理をする』上・下、NTT出版、2/24、各2600円+税〔詳細〕
*キッチンは自然界への魔法の扉!料理は人類最大の発明である。人類は料理のおかげで高度な文明を築けた。しかし今、加工食品を買い、料理をしない人が増えている。これは人類に重大な影響をもたらすのではないか...

■メイ・シンクレア/南條竹則編訳『胸の火は消えず』創元推理文庫、2/28〔詳細〕
*女性の深層心理や性の問題に取り組んだ異色怪談から、死後の世界や心優しき幽霊の登場する軽妙な作品まで、全11篇。

都筑道夫著/日下三蔵編 『未来警察殺人課[完全版]』 東京創元社、2/28〔詳細〕
*「殺人課」とは「殺人事件を捜査する部署」ではなく「殺人を行う部署」である。SFミステリ全15編。

紀田順一郎編『書物愛(日本篇)』東京創元社、創元ライブラリ、2/28〔詳細〕
*書物に取り憑かれた人間の悲喜劇を本の達人が選び抜いた傑作集・日本篇。古書店での万引きの意外な真相、古書展でいつも同じ本を買う老人の秘密とは? 網棚に忘れられた本にはさまれた名刺は何を意味するのか。

紀田順一郎編『書物愛(海外篇)』東京創元社、創元ライブラリ、2/28〔詳細〕
*滑稽でもあり悲しくもある書痴たちの諸相を、書物の達人紀田順一郎が選びに選び抜いた、傑作アンソロジー。ある人は身につまされ、ある人は笑い転げ、書物の魔力に改めて溜息をつくこと間違いなし。

■ヴォルフガング・ベーリンガー/長谷川直子訳 『魔女と魔女狩り』 刀水書房、刀水歴史全書8723500円+税〔詳細〕
魔女や魔女狩りは人類の歴史の中で未だ終わってはいない。最近の研究に基づく新しい魔女論。Wolfgang Behringer, Wiches and Witch-Hunts: A Global History, 2004 の翻訳。

■高山宏、中沢新一(対談)『インヴェンション』明治大学出版会、シアンス・ソバージュ・ド・ポッシュ:野生の科学叢書012月、2300円+税 〔詳細〕
1999年の『武蔵野美術』での対談、『MEIDAI BOOK NAVI 2013』や『ユリイカ山口昌男特集』の対談に、新たに2編を語りおろす。丸善出版が発売元か?

ポール・ホフマン/持田鋼一郎訳 『魔都ウィーン』 作品社、2月、2800円+税 〔詳細〕

■杉江松恋『路地裏の迷宮踏査』(仮)東京創元社、キイ・ライブラリー、2月以降
*ミステリマニア必携、《ミステリーズ!》連載が加筆訂正の上、単行本に。
 
 
◆3月以降予定
■ヒロ・ヒライ+小澤実編 『知のミクロコスモス:中世ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』 中央公論新社、3/10〔詳細〕
20127月に行われたシンポジウム「人知のいとなみを歴史にしるす:中世・初期近代インテレクチュアル・ヒストリーの挑戦」の論文集。シンポジウムの紹介はこちら

風間賢二 『ファミリー・ブラッド:家族にはつねにすでにモンスターが潜んでいる!』(仮)彩流社、3/251600円+税〔詳細〕
*カルトな「文学」と「映画」を素材として家族内部にすでに潜在する恐るべき「怪物/モンスター」を白日のもとに曝す。

平井憲太郎監修『江戸川乱歩の「少年探偵団」大研究』上・下、ポプラ社、3/31、各3500円+税 〔詳細〕
 
グスタフ・マイリンク/今村孝訳  『ゴーレム』   白水社、白水Uブックス、3
*夢と現実が混清する多重構造を持つ物語不安や都市生活の悪夢をゴーレム伝説に託して描く。図版多数収録。元版は河出書房新社より1973420日に発行された。
 
プランセス・サッフォー/野呂康・安井亜希子訳『チュチュ:世紀末巴里風俗奇譚』水声社、3月頃、2800円+税 
*知られざる19世紀最大の奇書。世紀末のパリを舞台に俗悪ブルジョワの主人公が繰り広げる奇想天外、荒唐無稽な露悪趣味の極北。社会の病巣をキッチュに描いた世にも奇妙な珍書中の珍書。ハチャメチヤすぎる内容に抱腹絶倒間違いなし。
 
J・B・ホラーズ編/古屋美登里訳『モンスターズ』白水社、8
*吸血鬼、ゴジラ、モスマン、ビッグフット、ミイラ、ゾンビなど異形の「怪物たち」をテーマに、曲者ぞろいの新鋭・中堅作家18人が腕を競う、異色の短篇アンソロジー。
 
■ポール・コリンズ/山田和子訳『バンヴァードの阿房宮:世界を変えなかった13人』(仮)白水社、夏
*壮大な夢と特異な才能をもちながら、世界を変えることなく歴史から忘れられた天才13人を紹介したポートレイト集。
 
■カート・ヴォネガット/大森望訳『ヴォネガット未発表短篇集』河出書房新社、夏
*天才ヴォネガットの生前未発表短編14篇。
 
■ミハル・アイヴァス/阿部賢一訳『黄金時代』河出書房新社、夏
*虚構の島とく無限に増殖する本〉をめぐる異形の紀行文学。『もうひとつの街』のチェコ作家がおくる、想像力と技巧に満ちた大作。
 
■ミハイル・エリザーロフ/北川和美訳『図書館司書』河出書房新社、秋
*失われた奇書をめぐり図書館で戦争が始まる。現代ロシアが生んだ破壊的スプラッターノヴェル。
 
MH・ニコルソン/浜口稔訳『ピープスの日記と新科学』白水社、高山宏セレクション/異貌の人文学 〔詳細〕

柴野拓美/牧眞司編  『柴野拓美SF評論集』(仮)東京創元社、キイ・ライブラリー、2014〔詳細〕
 
■ラリー・プリンチーペ/ヒロ・ヒライ訳『錬金術の秘密』勁草書房、BH 叢書 〔詳細〕

U.ペンツェンホーファー『評伝・パラケルスス』勁草書房、BH 叢書(未定)
 
ブルース・チャトウィン/池内紀訳 『ウッツ男爵:ある蒐集家の物語』
*元版は文藝春秋、19939月刊行。
 
フラン・オブライエン/大澤正佳訳 『スウィム・トゥー・バーズにて』
*元版は、筑摩書房『筑摩世界文学大系68 ジョイス2・オブライエン』19985月刊行。同書は『第三の警官』併録。
 
■鈴木宏『書肆風の薔薇から水声社へ』(仮)論創社、「出版人に聞く」シリーズ
 
ジャン・クロード・シュミット/小池寿子・廣川暁生・古本高樹訳『イメージにひそむ身体:中世の視覚文化』刀水書房、5000円 〔詳細〕

■高橋洋、稲生平太郎『映画の生体解剖』(仮)洋泉社
*シネマ対談
 
ウンベルト・エーコ『プラハの墓地』東京創元社
*偽書ものの大作が準備中。
 
大浜甫・多田智満子・宮下志朗・千葉文夫ほか訳『マルセル・シュオッブ全集』国書刊行会
 
■東雅夫・下楠昌哉編『幻想と怪奇の英文学』(仮)
 
■臼田捷治『工作舎物語』左右舎〔詳細〕

■松田行正、ミルキィ・イソベ、木内達朗『デザイン・プレゼンテーションの哲学』左右舎、神戸芸術工科大学レクチャーブックス 〔詳細〕

石川九楊『九楊先生の文字学入門』左右社、?、3500円+税 〔詳細〕
 *版元ドットコムのURLでは別な本が表示されてしまう。刊行されないのか?

『猟奇 復刻版』全6、三人社、?、60000〔詳細〕
*昭和初期に出た探偵小説雑誌。

 

「活字史研究書としての徳田直『光をかかぐる人々』に見られる達成」◆活字史研究について

某月某日、こんな論文を読んだ。
 
 内田明「活字史研究書としての徳田直『光をかかぐる人々』に見られる達成」《タイポグラフィ学会誌》06、タイポグラフィ学会、2013731日、pp.9-27 [注○文◎索×]
 
本論文は、徳田直の『光をかかぐる人々』の「中篇」に相当する雑誌掲載文を検討することにより、日本の活字史研究にとって大きな成果があったことを示すものである。
 
1943年に河出書房より刊行された、徳田直の『光をかかぐる人々』は、共同印刷争議を描いた『太陽のない街』で知られるプロレタリア作家の著者が、印刷工であった自らの原点を探るために、働いている側の視点から印刷史を解明すべく、日本の近代活字創始者とされる本木昌造の伝記を調べる過程を描いた、小説ともエッセイともつかない作品。戦時下にあって(最初の「日本の活字」は《改造》194231日〔243号〕、pp.7-24に掲載【未見】)、調査にあちこち歩き回り、こんな本を発表できたことは、素晴らしいことではあるが。
この本は戦後には再刊もされず、評価も決して高いわけではない。それは、徳永が恐らく十分な構想をもって書き始めたのではなく、書きながら逡巡し軌道修正を余儀なくされたのがあからさまな独特の文章に対し、読者がついていけなかったためではないか。また活字の歴史という、恐らく今でさえマイナーな話では、まず内容の理解も得られなかったのが大方であろう。
 
『光をかかぐる人々』は、翌1944年に再版されたものの、戦後は部分的な再刊のみにとどまり、さらに1948-49年に雑誌《世界文化》に掲載されたままの「中篇」、さらに未発表原稿のままになっているという幻の「後篇」は、未刊の状態である。
本論文では、「中篇」の概要を示すとともに、近代日本語活字の草創期に関する研究を簡単にトレースした上で、<昭和10年代から暫くの間日本語活字の歴史研究における第一人者であった川田久長>(p.14)が、昭和10年代においてダイアらガンブルの先駆者について触れていないことを示す。これに対し、徳永がサミュエル・ダイアの書物を昭和17年(1942年)に見て、活字印刷にとって重要な事跡であることを知ったとする。<徳永が『光をかかぐる人々』を本木昌造の伝記ではなく活字開発者たちを俯瞰する歴史書にしなければならなくなったのは、この出会いの衝撃によるものと考えていいだろう。>(p.15
そして、徳永の重要性を次のように示す。<本木昌造が先か大鳥圭介が先かと騒がれていた時代にヨーロッパ人による漢字活字開発の記録を発見した偉大な業績を日本の印刷史研究に遺したものとして、極めてすぐれた仕事を徳永直は『光をかかぐる人々』で成したのではないかと考える。>(p.17
 
一方、著者は、川田は戦後になってガンブルの先駆者としてのダイアに触れているものの、<ダイアの具体的な著作や製作活字などに触れ、彼の業績を称揚>(p.16)するのは、徳永が死んだ後(1958年死去)だったという。<川田は、近代日本語活字史研究のいわば盟友となった徳永が彼自身の発見としてサミュエル・ダイアの事跡を詳細に記録し発表することを、徳永最期の時まで待ち望んでいたのではなかったか。そして徳永の死後、改めて後世のために記しておく必要があると考えたのではないか。>(p.16)やや穿ちすぎのきらいはある。仮にもしそうであれば、1962年に発表した「邦文活字小史(明朝活字の歴史)」で、直接触れておいてもよかったのではないだろうか。
 
さらに著者は未発見の「後篇」原稿を、「中篇」第6回に書かれていた「ダイア――コール――ギャンブル――〔本木〕昌造――〔平野〕富二」という不連続線を基に、大胆に推測する。この不連続線は、佐久間貞一や大橋佐平までつながっているであろう。しかし、残念ながら原稿は発見されていない。
 
そして徳永の理解者であった中野重治の『光をかかぐる人々』に対する評価とともに、徳永の訂正書き入れの存在について記している。また、三谷幸吉の『本木昌造・平野富二詳伝』の再版原稿の行方に触れているが、本論とは直接は関係ない。
 
著者は「おわりに」において、次のように述べてしめくくっている。<この徳永による書き入れを活かした『光をかかぐる人々』「前篇」と「中篇」を合わせた増補訂正版が出版されることを望んでやまない。/『光をかかぐる人々』増補訂正版に対しては日本近代文学史の観点からの注解と近代日本語活字史の観点からの注解が協働してつけられることを熱望する。>(p.21
 
かつて老生も『光をかかぐる人々』を読んだ際、これはぜひとも詳注版を出してほしい、さもなくば余生を注解でもつけながら過ごそうか、とも思った。徳永が誰と出会い、どんなことを知り、それが当時と現在の知識・情報とで適切にクロスするようにしなければ、この本は読みこなせない、と思ったからだ。本論文が、ぜひ著者の言われる増補訂正版+注解版の世に出るきっかけとなり、刊行されんことを待ち望む。
 
本論文はよく調べられていると思うが、末尾にある「参考・引用文献」の表示におかしいところがある。機会あらば訂正されたい。
・本文中には<昭和23-24年にかけて世界文化社の『世界文化』に連載された「中篇」が発表され>(p.11)た、と記す一方で、「参考・引用文献」においては、『世界文化』の発行元を「日本電報通信社」とし、発行年を「1943年」もしくは「1944年」と記している(p.23)。惜しむらくは一番肝腎な文献を間違えてしまった。正しくは、発行元は「世界文化社」であり、発行年は1948年もしくは1949年である。ちなみに、『世界文化』という雑誌は、11―110号まで「日本電報通信社」が発行、次いで21―22号は「大地書房」発行、23号以降は「世界文化社」発行である。
念のため、「中篇」の書誌情報を再整理しておこう。著者の記載にはページの表示がないが追加しておく。
「光をかかぐる人々(第一回)」《世界文化》311号、世界文化社、194811月、pp.51-64
「光をかかぐる人々(第二回)」《世界文化》312号、世界文化社、194812月、pp.50-64
「光をかかぐる人々(第三回)」《世界文化》41号、世界文化社、19491月、pp.82-96
「光をかかぐる人々(第四回)」《世界文化》42号、世界文化社、19492月、pp.85-96
「光をかかぐる人々(第五回)」《世界文化》43号、世界文化社、19493月、pp.81-96
「光をかかぐる人々(第六回)」《世界文化》44号、世界文化社、19494月、pp.74-96
 
・『光をかかぐる人々』は「日本の活字」というサブタイトルがつく。タイトルの角書きに「日本の活字」とある(本扉にあり)。
・浦西和彦「徳永直著『光をかかぐる人々』について」(1998年『民主文学』第389号初出)とあるが、実際には、初出タイトルには「徳永直著」の文字はなく、「『光をかかぐる人々』について」。『現代文学研究の枝折』(和泉書院・近代文学研究叢刊2620011225日、pp.53-60)に再掲された際に、「徳永直著『光をかかぐる人々』について」となる。
・『浦西和彦著述と書誌第一巻』に発行元の表示がないが(p.24)、「和泉書院」である。
・『投機としての文学:活字・懸賞・メディア』のサブタイトルが「活字懸賞メディア」となっているが(p.24)、正しくは中黒あり。
・<勁草書房刊『高見順日記』第三巻、1974年>(p.25)の「刊」の文字は不要。発行元の記載位置がおかしい。
・『世界印刷通史』の発行元が「三秀舎」である一方、『明治大正日本印刷技術史』は「三秀社」(p.25)。これは「三秀舎」が正しいし、後者のタイトルは『明治大正日本印刷術史』で「技」はない。なお、老生もかつて誤って「三秀社」と書いたことがあったのだが、著者はそれを写されたのか? そもそも後者は前者の補遺の部分だけを抜粋したにすぎないのだが。
・島屋政一『近世印刷文化史考』大阪出版社とあり発行年の記載がないが、1938年。ちなみに内容は多数の寄稿者による長短とりまぜた印刷がらみのエッセイ集なので、島屋政一編と「編」を入れたい。
・川田久長「邦文活字小史」の雑誌名が本文では「季刊『プリント』」とあり(p.16)、「参考・引用文献」では『季刊プリント』となっている(p.25)。『季刊プリント』としたい。
・『歴史の文字:記載・活字・活版』もサブタイトルが「記載活字活版」となっているが(p.26)、正しくは中黒あり。
・その他、発行元・発行年がパーレンでくくってあったりなかったり、「所蔵」としたり「蔵」としたり、といった不統一は、所蔵先を明記する厳密さなのに、惜しい。
 
 
『〔日本プロレタリア文学大系8〕転向と抵抗の時代:中日戦争から敗戦まで』(三一書房、1955228日、380円)には、冒頭の「日本の活字」のみの再録(pp.212-227)がある。
 
なお、文中で触れた論文は以下の通り。
川田久長「邦文活字小史(明朝活字の歴史)」《季刊プリント》印刷出版研究所(タイポグラフィック研究会)、第1号、19623、活字書体特集号、pp.3-14
 
 

■2013年展覧会総括

2013年に見た、主に美術関連の展覧会51件について、個人的な感想と評価を記した。あくまでも主観的なものである。特に騒音・混み具合などは、たまたまその時だけの現象かもしれない。
行った月別に並べているが、必ずしも会期順ではない。
 
◆評価ポイント (5)・・・(1)までの5段階評価
A:展示内容(作品、解説)・構成・展示品の質
B:展示方法・動線設計・照明
C:雰囲気・騒音・混み具合
 
2月
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●江戸東京博物館「尾張徳川家の至宝」
A★★★☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*豪華絢爛と言うべきか。展示品自体は素晴らしいものばかりではあるのだが、なぜか印象に残らない。展示に工夫が乏しいというか、驚きを感じさせるものがない。
 
●東京国立博物館「書聖王羲之展」
A★★☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*王羲之筆とされていてもそもそも真筆は存在しないので、写しや拓本ばかり。さまざまな蘭亭序も展示されていたが、《蘭亭曲水図屏風》などは面白かったものの、他はほとんど興味を覚えず。
 
 
3月
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○上野の森美術館「第44回 龜甲展」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*中国古代文字である甲骨・金文をベースにした創作書の展示。毎回楽しんでいるが、今回もエネルギッシュなざわめきが心地よかった。どちらかというと大作よりも小品のほうが力まずに、良い作品が多いようなのだが。
 
 
4月
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Bunkamura ザ・ミュージアム「ルーベンス:栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」
A☆☆☆☆B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*《眠る二人の子供たち》など若干の作品を除けば、展示作品の大半は大味というか退屈。それがルーベンスと言ってしまえばそれまでだが。
 
●玉川高島屋「高島屋史料館が語る日本美術の輝き」
A☆☆☆☆ B☆☆☆☆ C★★☆☆☆
*高島屋史料館はいろいろと美術作品を持っているんだな、といった程度。横山大観の《蓬莱山》など愚作の典型。展示場所もバーゲン会場などに使用しているアレーナホールであり、照明が一部消えていたりして、慣れない美術展示は無理だった模様。ただし、4~6月開催の「龍村平蔵「時」を織る。」「美の競演」「暮らしと美術と髙島屋」と合わせて4つの展覧会を「たかしまやアートウォーキング」と称して組んだのは秀逸。
 
 
5月
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●インターメディアテク
A★★★★☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
2013321日にオープンしたばかり。特別展ではなく常設展示。東京大学所蔵の主に自然科学系の標本類中心。特段の解説もなく、ただひたすらその造形の美しさ、奇妙さ、驚きを愉しむことにある。まさに「センス・オブ・ワンダー」。無料公開もいい。なお、最近、西野嘉章編『インターメディアテク:東京大学 学術標本コレクション』(平凡社、201311月)が出て、展示を追体験してくれる。
 
●日本橋高島屋「龍村平蔵「時」を織る。」
A★★☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*龍村美術織物の創業者・初代龍村平蔵から四代平蔵にいたるまでの、さまざまな織物を開発した新技法とともに展示。織物作品としてみると、すべてが優品というわけでもないが。
 
●大阪歴史博物館「幽霊妖怪画大全集」
A★★★☆☆ B☆☆☆☆ C☆☆☆☆
*観客の誘導が最低。入ったばかりの掛軸のコーナーに人が溜ってしまい、後はガラガラ。わざわざ大阪へ見に行ったのだが、福岡市博物館所蔵になる吉川観方コレクションによる展示内容はそこそこ(大阪限定で大阪ゆかりの資料が10点ほど追加展示されていた)。「YKH48総選挙」などという馬鹿企画はやめてほしい。ちなみに、本展で最も怖かったのは、とある幽霊画を見ていた時、ふと胸騒ぎがして隣にいた人物を見たら、頭部が通常の倍以上の男が立っていたこと。いまだに思い出す。
 
●泉屋博古館「吉祥のかたち」
A☆☆☆☆ B★★★☆☆ C★★★★
*展示内容は期待外れで貧弱。当館には初めて行ったのだが、常設の古代中国青銅器のコレクションに圧倒される。ボランティアの解説者がとても上手な話し手だったので、青銅器の見方を教えられる。
 
●京都国立博物館「狩野山楽・山雪」
A★★★★☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*京狩野の流れを作った狩野山楽・山雪の作品展。とても充実した内容で、見応え十分。狩野永徳の画風を受け継いだのは彼ら京狩野だといった知識はなくとも、迫力のある造形に圧倒される。ただ、京博の展示はどうも見にくいのはなぜだろうか。特別展示館の設計の問題か。
 
●国立西洋美術館「ラファエロ」
A★★★☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*ルネサンスの三大巨匠の一人と言われるラファエロはもちろん上手な画家だとは思うが、どうもあまり好みではない。ゲーテが「彼は自然のごとく常に正しい」などと言うから、余計に敬遠してしまうのかもしれないが。《聖ゲオルギウスと竜》(ルーヴル美術館蔵)は良かった。
 
●東京国立博物館「大神社展」
A★★★☆☆B★★☆☆☆ C★★★☆☆
*期待していなかったが、《春日神鹿御正体》(細見美術館蔵)などなかなか楽しい作品にも出会えた。
 
○三菱一号館美術館「奇跡のクラーク・コレクション:ルノワールとフランス絵画の傑作」
A★★★★☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*ルノワールがサブタイトルに謳われているので、ルノワール嫌いな人間には敬遠だが、実はそれ以外の作品――例えばジェローム《蛇使い》、ティソ《菊》、ボナール《犬と女》、モネ《エトルタの断崖》など――にいいものが多かったので収穫あり。タイトルの「奇跡」は勘弁してほしいが。
 
●練馬区立美術館「牧野邦夫:写実の精髄」
A★★★★☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*寡聞にして知らなかった画家だったが、デモーニッシュとも言うべきこだわりの作風はとても感動した。描くことへの執着――なかでも自らを描くことに、とても関心が高かったのだと思う。サブタイトルの「写実」というよりは、シュルレアリスムという意味での写実を超えた世界を希求した画家だったのだろう。黒いユーモアを漂わせて。
 
 
6月
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●岩手県立美術館「若冲が来てくれました:プライスコレクション江戸絵画の美と生命」
A★★★★★ B★★★ C★★★★★
*これは大変素晴らしい展示内容だった。無駄にゆったりとした美術館なので閑散としていたが(入口に至るまでの長いアプローチに誰一人いない!)、おかげでじっくりと鑑賞できた。わざわざこれだけのために東京から行った甲斐があった。ただ、図録は物足りない。葛蛇玉筆の《雪夜松兎梅鴉図屏風》は、残念ながら右隻・左隻が逆のまま(今橋理子『兎とかたちの日本文化』東京大学出版会、2013年、pp.71-96参照)。
 
●日本橋高島屋「美の競演 京都画壇と神坂雪佳:100年の時を超えて」
A★★★☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*「たかしまやアートウォーキング」の一つ。京都市美術館と細見美術館のコレクション中心の展示。竹内栖鳳や上村松園ら京都画壇と、琳派の末裔たる神坂雪佳は同時代に活動していながら出会うことがなかったらしい。作品の性格があまりにも違うからであったろうけど。デパート展なので、騒々しいのは已む無きか。
 
●東京ステーションギャラリー「エミール・クラウスとベルギー印象派展」
A★★★☆☆ B★★☆☆☆ C★★★☆☆
*これは意外な収穫。ベルギーの印象派というのは知識がなかったが、エミール・クラウスはなかなかの力量。ただいわゆるフランスの印象派とはどこか異質。そのクラウスに学んだ二人の日本人画家の作品は、教えを忠実に守っているなあ、という印象。新装なった東京ステーションギャラリーの建物もなかなかよいのだが、スペースが限られ動線に無理がある。
 
●世田谷美術館「暮らしと美術と髙島屋」展
A★★☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*「企業と文化」というテーマの展示だが、なかなかユニーク。いわゆるメセナのような胡散臭い文化事業ではなく、企業活動の結果として生み出された文化としてどんなものが残されたか、ということを示すとこうなった。美術染織の作品や戦前の広告宣伝、とりわけポスター類は見ていて飽きさせない。企業博物館的ではあったが。
 
●戸栗美術館(渋谷)「古伊万里金襴手展:元禄のきらめき」
A★★★★☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*「金襴手」と呼ばれる派手な古伊万里中心の展示。初心者向けに解説等も丁寧で、工芸品として素晴らしいものを多数見ることができた。初めての美術館だったが、再度訪問したくなる。
 
●国立新美術館「貴婦人と一角獣展:クリュニー中世美術館所蔵」
A☆☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*《貴婦人と一角獣》しか目玉作品がなかったので、細々としたものを集めるなど無理な展示内容になった。大画面のシアターも疲れるばかり。もう少しましな企画――例えば、一角獣の象徴性を文化史的にさまざまな角度から検証するとか――が欲しかった。
 
TOTOギャラリー間「中村好文展:小屋においでよ!」
A:★★☆☆☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*想像上の小屋や、実験的に作られた小屋など、面白い仕掛け。なかでも中庭(屋上?)に建てられたひとり暮らし用の小屋は、ミニマムな生活に必要なものだけ、をイメージしてつくられたもの。そこに置かれていた本の中に長沼弘毅の『シャーロック・ホームズの大学』なんてマイナーな本があって、ちょっと驚き。
 
 
7月
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●東京藝術大学大学美術館「夏目漱石の美術世界展」
A★★★★ B★★★☆☆ C★★☆☆☆
*漱石の目を通した美術展という発想がユニーク。漱石の文学作品や美術批評に登場する作品をできるだけ集め、漱石の追体験ができる。さらに漱石本の装幀デザインの下絵なども。漱石自身の文人画は平凡だが。
 
●江戸東京博物館「ファインバーグ・コレクション展:江戸絵画の奇跡」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*アメリカの江戸絵画コレクション展。なかなか優れた作品も多かった(たった6点しか現存が確認されていない葛蛇玉の作品のうち《鯉図》を所蔵)が、「奇跡」などという大袈裟な言葉はやめてほしい。
 
●調布市文化会館たづくり「深堀隆介金魚作品展」
A★★★☆☆ B☆☆☆ C★★☆☆☆
*作品は素晴らしいのだが、いかんせん会場がお粗末。今の金魚一筋になる前の学生時代の作品もあったが、全体の作品数が乏しかった(本当に約60点もあったのだろうか)。
 
○三井記念美術館「大妖怪展:鬼と妖怪&ゲゲゲ」
A★★☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★★☆☆
*期待外れの展示。結局あまり目新しい作品もなく、ワンパターンのマンネリを脱することはできないか。こういった企画に水木しげるを置きたがるのは客引き用かもしれないが、構成に無理を生じてしまう。会場が空いているのは良かったが。
 
●横浜美術館「プーシキン美術館展:フランス絵画300年」
A★★★☆☆B★★★☆☆ C★★★☆☆
*震災で一旦中止となったが、ようやく開催にこぎつけた展覧会。作品も充実していてそれなりに良かったのだが、いささか駆け足でフランス絵画史を見て回るような印象。
 
 
8月
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○武蔵野美術大学美術館「タイポグラフィ 2つの潮流」
A★★★★ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*充実した展示内容。しかし、一番面白かった入口壁面のクロニクルが図録になく、せっかくの労作を見直すことができないのがとても残念。ほとんど誰もいなかったので、一匹の蜘蛛が展示品の上を悠々と歩いていた。
 
●サントリー美術館「谷文晁展」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★☆☆☆
*「この絵師、何者!?」というキャッチフレーズは大袈裟だったが、決して谷文晁は異様な画家ではなく、いたって生真面目な、だが器用でどんな様式でもできる人物にすぎなかったのではないだろうか。無理矢理変なレッテルを貼られて損をしたようだ。
 
●東京国立博物館「和様の書」
A★★☆☆☆ B★★★☆☆ C★★☆☆☆
*書の展覧会はほとんど行かない。興味が薄いこともあるが、感度が鈍いせいか、感動も覚えない。本展も結局同様ではあった。
 
ホテルオークラ別館地下2階アスコットホール「モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち:フランスの美しき街と村のなかで」
A★★★☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*メジャーな作品はないものの、いい雰囲気の作品が多かった。それにしても、知っている画家の名前をただ並べただけのタイトルはやめてほしい。会場は良くないが、費用をかけずに精一杯やっている印象を受けた。
 
●大倉集古館「大倉コレクションの精華II 近代日本画名品選」
A★★★★☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*大倉喜七郎がパトロンとなって、1930年に開催されたローマ展向けに出品された絵画作品が中心。多くはないが、展示作品の多くはとても良かった。横山大観ですら《夜桜》は珍しく良くできていた。
 
 
9月
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●ブリヂストン美術館「色を見る、色を楽しむ。:ブリヂストン美術館コレクション展」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★☆☆☆
*「色」をキーワードにブリヂストン美術館所蔵作品をおさらい。そういった目で見直すと、何度か出会っている作品にも意外な印象が。マティスの『ジャズ』は好きになれないが。
 
 
10月
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●損保ジャパン「トスカーナと近代絵画:もうひとつのルネサンス」
A★★☆☆☆B★★★☆☆ C★★☆☆☆
*ちょうど1日だけ無料日があり、行くことができた。ピッティ宮近代美術館所蔵でそれなりの作品なのだろうが、見るそばから忘れてしまいそうな作品ばかり。ついでに常設のゴッホ《ひまわり》等も見る。
 
●泉屋博古館分館「伊万里染付の美:図変り大皿の世界」
A★★★★☆ B★★★ C★★★☆☆
*伊万里大皿の圧倒的な力強さ。ただ、来館者が展示と無関係なおしゃべりを声高にし続けていたのは残念。
 
●大倉集古館「描かれた都」
A☆☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*少し期待していたが、残念な結果に。8月の展示とは打って変わってレベルダウン。ただ少々集めただけで展示内容が乏しいし、迫ってくるものがない。スペースに見合うよう、テーマをもっと絞って作品を集め、展示を工夫すべき。細密な絵が大半なので、もっと見やすい展示が必要。
 
 
11月
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●東京国立博物館「京都:洛中洛外図と障壁画の美」
A☆☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*前半の洛中洛外図は展示方法も見にくく、説明も不十分。会場に入ってすぐの映像(《洛中洛外図屏風 舟木本》をただクローズアップしてみましたというだけ)や龍安寺の映像(1年間ひたすら撮りましたというだけ)は全く無意味。後半、人も少なくなってからの展示は多少持ち直したが(二条城の障壁画など現地では複製品しか見ることはできないので)。
 
●東京国立博物館「上海博物館中国絵画の至宝」
A☆☆☆☆ B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*リニューアル後の東博東洋館に初めて行く。フロア構造が複雑すぎる難はあるが、常設展は充実。ただし、本展の内容は貧相。展覧会タイトルに「至宝」の乱発はやめてほしい。
 
○東京都美術館「ターナー展」
A★★☆☆☆B★★☆☆☆ C★★☆☆☆
*展示内容は残念ながらやや期待はずれ。精緻に描かれたスケッチブックや使用していた画材が展示されており、絵具チューブがない時代に野外で絵を描くのは大変だったことはよくわかった。
 
○ギンザ・グラフィック・ギャラリー「ヤン・チヒョルト展」
A★★★★☆ B★★★ C★★★☆☆
*ヤン・チヒョルトを総合的に日本で展示したのは初めてか。充実した内容。展示キャプションは簡素だったが、たとえば使用している主要なフォント名なども付記してくれればもっとよかった。
 
●ブリヂストン美術館「カイユボット展:都市の印象派」
A★★★★ B★★★ C★★★☆☆
*カイユボットの初の本格的紹介。印象派の中にあって、珍しく有産階級の出身。したがって、印象派の画家は皆カイユボットが買ってくれて助かった。本人の作風は印象派と言うにはもう少しおとなしいが、それだけソフィストケートされていた。弟マルシャル・カイユボットの撮影した写真も多数展示され、当時のリアルな都市風景の傍証となる。数種類あったデジタル展示も工夫されていて、とてもよい展覧会となった。
 
●三の丸尚蔵館「美を伝えゆく:名品にみる20年の歩み」後期
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C☆☆☆☆
*展示品は《萬国絵図屏風》や若冲の《動植綵絵》2幅など、ごく少ないながらも悪くはなかったが、入場料無料のせいか狭いところで非常に混雑して騒々しかった。
 
○武蔵野美術大学美術館・図書館「平野甲賀の仕事 1964−2013
A★★★★ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*ほとんど客がおらず静かな中で、じっくり平野甲賀氏のポスターや装丁などの仕事振りを通覧することができた。氏の装丁は以前のものの多くには馴染みがあったが、最近のものは初めてが多い。本屋に行くことが少なくなったせいか。図録にコウガフォントのCD-ROMが付くが、ただ挟んであるだけなので、うっかりすると抜け落ちそう。
 
○武蔵野美術大学美術館・図書館「しかけ絵本I:技法の歴史 開く、覗く、聞く、動く絵本」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*甲賀展のついでに見る。しかけ絵本のさまざまな形態が、図書館の小さい展示スペースに凝縮。別の場所に何冊か実際に操作できるようになっていたのはとてもよい。
 
 
12月
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●静嘉堂文庫美術館「幕末の北方探検家 松浦武四郎」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*美術作品ではないが、同館の所蔵品中心の展示。松浦武四郎が幕末という時期において、どのような苦心の末、北海道の地図を作り、住民の生活を調べ上げ、それらを膨大な報告として刊行したか。狭いスペースだが、工夫された展示となっていた。次の「描かれた風景:絵の中を旅する」展の後、1年半改修工事に入る。
 
●泉屋博古館「木島櫻谷:京都日本画の俊英」
A★★★★☆ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*木島櫻谷はとりわけ動物画に優れており、なかでも《寒月の狐はぞくぞくする凄みを感じる。人物画は凡庸。2014年には東京でも開催されるが、再度ぜひ行きたい。ちなみに、《角とぐ鹿の解説に「落葉樹」とあるが「欅」である。《孔雀の解説中「ウツギ」とあるのは「百日紅」か。
 
●清水三年坂美術館「刀の拵」
A★★★★☆ B★★☆☆☆ C★★★☆☆
*何度も京都に来て、来そびれてしまっていた美術館をようやく訪問。1階の常設展示は1年ですべてが展示替えされるそうだが、どれも素晴らしい超絶技巧の工芸品ばかり。2階で「刀の拵」展示があり、これもまた精密極まりない造作に圧倒。4月には、三井記念美術館において「超絶技巧!明治工芸の粋:村田コレクション一挙公開」が開催されるので、関東在住の方はぜひご覧になるといい。
 
●並河靖之七宝記念館「七宝 手のひらの宇宙」
A★★★★ B★★☆☆☆ C★★★☆☆
清水三年坂美術館にも数点並河靖之の七宝作品が展示されていたが、この記念館は並河靖之が住み、作品を作り出していた工房そのままなので、優れた作品を見るばかりでなく、どのように作っていたのかまでよくわかる。
 
●京都国立近代美術館「皇室の名品:近代日本美術の粋」
A★★☆☆☆ B★★★☆☆ C☆☆☆☆
*工芸品には並河靖之や十二代沈寿官《菊貼付香炉》などの優品がいくつか展示されていたが、絵画作品はどれもお粗末。画家のやる気がなかったのか、当時のレベルが低かったのか、それとも拙速で描かせたのか。肖像画など、本人は怒り心頭にこなかったのか不思議。
 
●樂美術館「利休/少庵/元伯/千家の時代と長谷川等伯「松林架橋図襖」修復完成記念」
A★★★★ B★★★☆☆ C★★★☆☆
*多い数ではなかったが、楽焼の素晴らしさを痛感できる優品が並ぶ。等伯の松林架橋図襖は、東博にある松林図屏風の原型とも言われるが、かなり痛みが激しく、修復後でもかなり見づらい。
 
●京都国立博物館「魅惑の清朝陶磁」
A★★★☆☆ B★★★☆☆ C★★☆☆☆
*江戸時代の日本人があこがれた清朝陶磁と、それに影響を受けた日本の陶工たち。沈没船からの引き揚げ品(質は高くなくとも時代が特定できるのが最大の利点)や出土品なども交えて、どのように受容されていったかを知ることができる。面白いのは、わざわざ日本から注文して中国に作ってもらい、それを輸入した陶磁器があること。
 
○群馬県立館林美術館「山口晃展:画業(ほぼ)総覧―お絵かきから現在まで」
A★★★★★ B★★★ C:★★★
2013年は本展で打ち止め。掉尾を飾る素晴らしい展覧会であった。とりわけ細密な絵の良さは、ガラスケースなしで間近で見て初めてわかるのがありがたい。山口晃の画才を堪能できた。ただし図録が間に合わず、会期後の20143月になる。2001年にできた館だが、とても明るくて気持ちのいい建物。フランソワ・ポンポンのアトリエが移設されており、ポンポンのコレクションとともに必見。難はアクセスが悪いこと。
 

■2014年美術展覧会予定 (Ver.1)

2014年に東京周辺で開催する美術展覧会の予定である。老生の好みで選択しており、網羅性はない。若干、2013年から開始しているものや2015年にかかるものも含む。また巡回展の場合は、東京以前/以後に開催される可能性がある。
記載は、会場「展覧会名」会期:休館日および関連情報のリンク先。
展覧会名や会期等が変更となったり、リンク先も予告なく変更となる場合がある。休館日は原則であり、祝日となった場合は翌日が休館日となることもある。
 
 1月開始 
■国立西洋美術館「モネ、風景をみる眼:19世紀フランス風景画の革新」12/73/9:月休 〔詳細〕
*もう開催中だが、ポーラ美術館と国立西洋美術館の所蔵するモネ作品はぜひ見ておきたい。

■江戸東京博物館「大浮世絵展」1/23/3:月休 〔詳細〕
*浮世絵のスタンダードな作品を集大成。予告を見る限り、どうしても見ておきたい作品はなさそうだが。

■大倉集古館「大倉コレクションの精華Ⅲ:工芸品物語美と技が語るもの」 1/23/30:月休 〔詳細〕
*自在置物も展示されるので、これはぜひ見たい。

Bunkamuraザ・ミュージアム「シャヴァンヌ展:水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」1/23/9:無休 〔詳細〕
19世紀フランスを代表する壁画家として知られるピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌを、日本で初めて本格的に紹介。

■太田記念美術館「富士山の浮世絵:太田記念美術館収蔵品展」 1/31/26:月休 〔詳細〕
*広重を中心に、北斎や国貞、英泉、清親など、浮世絵師たちが描いた富士山を紹介。

■泉屋博古館分館(東京)「木島櫻谷:京都日本画の俊英」 1/112/16:月休 〔詳細〕
*最高傑作《寒月》は1/11/192/11/16の出展。京都でも見たが、東京でももう一度見たいもの。ちなみに作者名は「このしまおうこく」と読む。

■東京国立博物館「クリーブランド美術館展:名画でたどる日本の美」1/152/23:月休 〔詳細〕
*クリーブランド美術館の日本美術コレクションより、仏画や肖像画、花鳥画、山水画などの日本絵画40件余に、中国や西洋絵画を加えた総数約50件を紹介。次の「人間国宝展」と同時開催なので規模は小さい。

■東京国立博物館「人間国宝展:生み出された美、伝えゆくわざ」1/152/23:月休 〔詳細〕
*国宝・重要文化財など歴史的に評価されてきた古典的な工芸と、現代の人間国宝の作品を一堂に集め、日本の工芸の「わざ」の美を展示。

■森アーツセンターギャラリー「ラファエル前派展:英国ヴィクトリア朝絵画の夢」1/254/6:無休 〔詳細〕
*テート美術館が所蔵する作品72点により、グループの結成から1890年代までのラファエル前派の歩みを紹介。

■サントリー美術館IMARI/伊万里:ヨーロッパの宮殿を飾った日本磁器」1/253/16:火休 〔詳細〕
*日本初公開となる大阪市立東洋陶磁美術館所蔵の輸出用伊万里を中心に、サントリー美術館所蔵品を加えた約190作品により、ヨーロッパの宮殿を飾った伊万里の魅力を紹介。

■千葉市美術館「江戸の面影:浮世絵は何を描いてきたのか」 1/253/22/32/10休 〔詳細〕
*江戸という都市らしい特徴のある文化や生活風俗のあり方を浮世絵の名品を通して見る。「画人たちの1万時間:写生、下絵、粉本類を中心に」が同時開催される。

■世田谷文学館「星を売る店:クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」1/253/30:月休 〔詳細〕
*これまでの活動を総括した商會初の棚卸し的展覧会である。図録は平凡社から刊行予定。

■三菱一号館美術館「ザ・ビューティフル:英国の唯美主義 1860-1900 展」1/305/6:月休 〔詳細〕
19世紀後半の英国を席巻した先進的な芸術運動――芸術と人生のどちらにも美が重要とする芸術至上主義は、人々のライフスタイルをも変革した。絵画や工芸品など約150点で構成。

 
 2月開始 
■静嘉堂文庫美術館「描かれた風景:絵の中を旅する」2/13/16:月休 〔詳細〕
*この展示を最後に、美術館改修工事で1年半ほど休館となる。

■太田記念美術館「葛飾応為〈吉原格子先之図〉:光と影の美」2/12/26:月休 〔詳細〕
*応為は天才絵師・北斎の娘であり、自らも絵師として活躍した女性。美人画においては北斎を超える力量であったともいう。

■群馬県立館林美術館「シャガール 版画の世界」 2/14/6:月休 〔詳細〕
*群馬県立近代美術館と館林美術館の所蔵になる版画作品の展示。

■山種美術館Kawaii(かわいい)日本美術:若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで」後期:2/43/2:月休 〔詳細〕
*伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」 (静岡県立美術館所蔵)は後期のみ展示。

■国立新美術館「イメージの力:国立民族学博物館コレクションにさぐる」2/19 6/9:火休 〔詳細〕
*仮面や神像から、今活躍中の美術家の作品までが、美術館と博物館の垣根を超えて一堂に会す。

 
 3月開始 
■上野の森美術館「第45龜甲展」 3/83/12 〔詳細〕
*生命と心を表出した古代文字を書表現の原点として、制作者内面の世界を墨線で表現する書芸術展。

■山種美術館「富士山世界文化遺産登録記念 富士と桜と春の花」 3/115/11:月休 〔詳細〕
*「日本画にみる富士」「名所絵のなかの富士」「富士と桜と春の花」という3つの切り口から富士山を描いた作品を紹介。

■江戸東京博物館「大江戸と洛中:アジアのなかの都市景観」3/185/11:月休 〔詳細〕
*江戸そして京都の都市設計を、アジアそして世界を意識した視点でみつめ、江戸時代の日本列島の都市を考える。

■東京国立博物館「開山・栄西禅師800年遠忌 特別展栄西と建仁寺」3/255/18:月休 〔詳細〕
*宗達「風神雷神図屏風」・海北友松「雲龍図」など、建仁寺では複製品(キヤノン製)しか見ることができないが本物が来る。

■サントリー美術館「のぞいてびっくり江戸絵画:科学の眼、視覚のふしぎ」3/295/11:火休 〔詳細〕
*江戸時代後期に花開いた新しい〈視覚文化〉を、葛飾北斎、歌川広重、司馬江漢などの作品を通して紹介。

 
 4月開始 
Bunkamuraザ・ミュージアム「ミラノポルディ・ペッツォーリ美術館:華麗なる貴族コレクション」4/45/25:無休 〔詳細〕
*ミラノ有数の貴族ペッツォーリ家が何代にもわたって蒐集し、受け継いできた美術品や装飾品からなるコレクションを日本で初めて紹介。

■出光美術館「日本の美・発見IX 日本絵画の魅惑」前期:4/55/6 後期:5/96/8:月休 〔詳細〕
*出光の日本絵画コレクションの内、鎌倉時代の絵巻物、室町時代の水墨画、桃山時代の長谷川等伯、江戸時代の肉筆浮世絵、俵屋宗達から琳派、文人画、そして仙厓などの作品を展示。

■国立西洋美術館「ジャック・カロ:リアリズムと奇想の劇場」4/86/15:月休 〔詳細〕
*国立西洋美術館のコレクションより、初期から晩年に至るカロの作品を、年代と主題というふたつの切り口から紹介。カロの活動の軌跡をたどりつつ、リアリズムと奇想が共演するその版画世界を案内する。

■三井記念美術館「超絶技巧!明治工芸の粋:村田コレクション一挙公開」4/197/13:月休 〔詳細〕
*村田コレクションは京都の清水三年坂美術館で展示されているが、その中の優品が東京に来る。必見!

■根津美術館「燕子花図と藤花図」 4/195/18:月休 〔詳細〕
尾形光琳「燕子花図屏風」と円山応挙の「藤花図屏風」、金屏風の名品などを展示。

 
 6月開始 
■三菱一号館美術館「フェリックス・ヴァロットン:冷たい炎の画家」 6/149/23:月休 〔詳細〕
*独特の視点と多様な表現を持つヴァロットンの作品は、100年以上たった今でも斬新で現代的。約60点の油彩と約60点の版画を展覧する。

■泉屋博古館分館(東京)「没後50板谷波山:光を包む美しいやきもの。」(仮称) 6/148/24:月休 〔詳細〕
*アール・ヌーヴォー様式をとりいれ、東洋の古典意匠との融合によって自らの芸術ヘと昇華させた日本近代陶芸の巨匠・板谷波山の大回顧展。

■東京国立博物館「台北國立故宮博物院:神品至宝」6/249/15:月休 〔詳細〕
*台北故宮博物院が収蔵する優れた中国の文化財から、代表的な作品を厳選し、中国文化の特質や素晴らしさを紹介。

■世田谷美術館「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」6/289/15:月休 〔詳細〕
*モネの「ラ・ジャポネーズ」をはじめとするボストン美術館所蔵品でジャポニスム現象を検証。

 
 7月開始 
■国立新美術館「オルセー美術館展 印象派の誕生描くことの自由」7/910/20:火休 〔詳細〕
*オルセー美術館から印象派中心に、同時代のレアリスム、アカデミスム作品含め約80点来日。マネ「笛を吹く少年」が目玉作品らしい。なぜかまだ案内ページすらネット上にできていない。

■山種美術館「水の音:広重から千住博まで」7/199/15:月休 〔詳細〕

 
 8月開始 
■サントリー美術館「耀きの静と動:ボヘミアン・グラス」(仮称) 8/29/28:火休 〔詳細〕
*ボヘミアン・グラスの600年を、プラハ国立美術工芸館の約150作品で紹介。

Bunkamuraザ・ミュージアム「だまし絵II8/910/5:無休 〔詳細〕
*「だまし絵」の系譜を広く辿った2009年の「だまし絵」展の続編となる本展では、前回の詐術的技巧の流れのなかで、多岐にわたり進化していく現代美術の展開に重きを置いて紹介。

 
 9月開始 
■上野の森美術館「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」9/1311/9 〔詳細〕
*日本が世界に誇る北斎の魅力に、ボストン美術館所蔵になる約140点の作品から迫ります。北斎研究の第一人者・永田生慈監修。

■山種美術館「金と銀 輝ける色彩:琳派から加山又造まで」9/2311/16:月休 〔詳細〕

 
 10月開始 
■東京国立博物館「日本国宝展」10/1512/7:月休 〔詳細〕
*「国宝」を通して、「祈りのかたち」に見られる日本文化形成の精神を見つめ直す試み。展示される作品はすべてが国宝。

■出光美術館「仁清・乾山と京の工芸:風雅のうつわ」10/2512/21:月休 〔詳細〕
*野々村仁清と尾形乾山のやきものは、京という都市内部で、作り手と使い手の顔の見える関係の中に育まれた。やきものにおける「京」とは何かを探る。

 
 12月開始 
■三井記念美術館「雪と月と花:国宝「雪松図」と四季の草花」12/112015/1/24:月休 〔詳細〕
*円山応挙の国宝「雪松図屏風」にあわせて「雪と月と花」と題し、館蔵美術品の中から、雪や月、四季の草花が描かれ、デザインされた絵画や工芸品を選んで展示。

■サントリー美術館「仁阿弥道八」(仮称) 12/202015/3/1:火休 〔詳細〕
*抹茶道具・煎茶道具・懐石の器におよぶ作品の数々によって、「和風京焼」の名手として称賛されてきた仁阿弥道八の陶業を紹介。

■横浜美術館「ホイッスラー展」12/62015/3/1:木休 〔詳細〕 
*アメリカ人の画家ジェームス・マクニール・ホイッスラーを、初期から晩年にいたるまでの油彩、水彩、版画など約130点により、初めて本格的に日本に紹介する。2014913日~1116日に京都国立近代美術館で開催。

 

■既刊・近刊メモ(2014年1月版 Ver.1)


201312月に刊行された(はずの)本と、20141月以降の近刊を掲載する。若干の本には余計なコメントを付した。日付は発行日ではなく、発売日。発売日順を原則としているが、WEBでの確認が中心なので、違っているかもしれない。
*前回掲載のものから追加・変更した箇所を橙色で示す。
なお、近刊の本についてはあくまでも予定であり、タイトル・発売日・価格ともに変更の可能性はある。
次の行は私的メモ。
■読んだ本(▲元版で読んだ)、■買った本(▲元版所有)
 
201312月に出た本から】
 
豊田市美術館監修『反重力:浮遊・時空・パラレルワールド』青幻舎、12/22800円+税〔詳細〕
 *やっと刊行が間に合ったのか。
 「反重力展」豊田市美術館、2013914日-1224日開催

■山口晃『すゞしろ日記 弐』羽鳥書店、12/42200円+税 〔詳細〕
*東京大学出版会のPR誌《UP》が届いたら最初に見る「すゞしろ日記」が再度まとまる。「I すゞしろ日記風」と「IIUP版すゞしろ日記 第51回~第100回」の2部構成。

■幸福輝責任編集 『版画の写像学:デューラーからレンブラントへ』ありな書房、イメージの探検学412/46000円+税 〔詳細〕
*彫版されたイメージ/表象の源泉と意味を探り、それらの内部に込められた創造の秘跡を探検する。

■森 『司法権力の内幕』 ちくま新書、12/4760円+税〔詳細〕
*日本の裁判所はなぜ理不尽か。人質司法、不当判決、形式的な死刑基準……など、その背後に潜むゆがみや瑕疵を整理、解説。第三権力の核心をえぐる。

B・ジャック・コープランド/服部桂訳 『チューリング:情報時代のパイオニア』 NTT出版、12/52900円+税 〔詳細〕
*現代のコンピュータの基本モデルを着想し、不完全性定理のもう一人の立役者であり、連合軍の勝利をもたらした暗号解読者であり、人工生命研究の先駆者でもあった天才数学者アラン・チューリング。ゲイとしての私生活、その死の謎などの逸話も含め、チューリング研究の第一人者が描き出す決定版伝記。エニグマ解読を中心とした戦時中の暗号解読は、第3章~第7章と中心的テーマでもある。

小塚昌彦 『ぼくのつくった書体の話:活字と写植、そして小塚書体のデザイン』 グラフィック社、12/62500円+税〔詳細〕
*毎日新聞書体、新ゴ、小塚明朝、小塚ゴシックのタイプデザインディレクターが語る、文字づくりのすべて。

■桑原茂夫『新版 不思議の国のアリス』河出書房新社、ふくろうの本、12/61800円+税〔詳細〕
*写真機の発明に恐竜の発見等、ヴィクトリア朝の魅力的な文化がワンダーランドを支えていた。

立花隆『読書脳:ぼくの深読み300冊の記録』文藝春秋、12/91600円+税〔詳細〕
 *『週刊文春』連載の「私の読書日記」をまとめたシリーズの四冊目。今回は東京大学附属図書館副館長の石田英敬教授と「読書の未来」を語り合った対談を収録。

東雅夫編『日本幻想文学大全III日本幻想文学事典ちくま文庫、12/101600円+税 〔詳細〕
*作家事典と作品案内の両面を兼ね備えた必携のレファレンス・ブック

早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』ちくま文庫、12/10720円+税 〔詳細〕
*元版の晶文社版と装幀はそっくり。双方とも平野甲賀による。何篇か追加されている。

■高橋輝次『書斎の宇宙:文学者の愛した机と文具たち』ちくま文庫、12/10880円+税 〔詳細〕
*机、原稿用紙、万年筆、鉛筆…。身近な文具にまつわるエッセイを通じて、創作活動の秘密を浮かび上がらせるアンソロジー。

尾形希和子 『教会の怪物たち:ロマネスクの図像学』講談社選書メチエ、12/101900円+税〔詳細〕
*イタリアに点在するロマネスク教会の聖堂に跋扈する恐ろし気でコミカル、猥雑な怪物たち。なぜそれは聖堂内に描かれるのか?「単なる装飾」として片付けられてきた怪物たちを民族学や心理学的アプローチを加え読み解く、新しいイコノロジー。

■井辻朱美編著 『映画にもTVにもなった ファンタジー・ノベルの魅力』 七つ森書館、12/101800円+税〔詳細〕
*数百年におよぶファンタジーの歴史から選び抜かれた101作品。映画にもテレビにもなった、誰もが知っている名作を読み解く、新しいファンタジー小説のガイドブック。

■西尾哲夫『ヴェニスの商人の異人論:人肉一ポンドと他者認識の民族学』みすず書房、12/104200円+税〔詳細〕
*金の貸し借りと、返済不能の場合の人肉という条件。アラビアンナイト研究でつとに知られる著者は、積年の研究成果に基づいて、本書で世界中に分布する「人肉一ポンド」モティーフの収集と比較分析を試みる。

■ロジェ・カイヨワ/中原好文訳『斜線:方法としての対角線の科学』講談社学術文庫、12/11880円+税 〔詳細〕
*蝶の翅、岩石の文様、絵画、神話……。深奥においてすべての現象を統べる原理があるのではないか? フランスの戦闘的な知の巨人が提唱した「対角線の科学」の方法と可能性を読む。元版は思索社、1978年刊行。

■舟田詠子『パンの文化史』講談社学術文庫、12/111105円+税 〔詳細〕
*古来、食べものそのものを意味する特別な存在だったパン。そのすべてを膨大な資料と調査に基づいて描く。元版は朝日新聞社、1998年刊行。

村上一郎 『岩波茂雄と出版文化:近代日本の教養主義』 講談社学術文庫、12/11720円+税〔詳細〕
*岩波書店の深層と出版産業の構造に肉迫する。日本型教養は、なぜ泥臭いのか? 出版文化とアカデミズムの間には、正統性調達の「相互依存」がなかったか? 岩波文化と講談社文化の対立の図式は正しいのか? 近代日本社会史を再考する試み。村上一郎『岩波茂雄:成らざりしカルテと若干の付箋』(砂子屋書房、1979年刊)に、新たに竹内洋による「学術文庫版イントロ」と「解説」を追加したもの。

東浩紀『セカイからもっと近くに:現実から切り離された文学の諸問題』東京創元社、キイ・ライブラリー、12/111300円+税〔詳細〕
*想像力と現実が切り離された時代に、評論には何ができるのか。ライトノベル・ミステリ・アニメ・SF、それぞれのジャンルで文学と社会の再縫合を試みた作家を読み解く。

岩波書店辞典編集部編 『岩波世界人名大辞典』 岩波書店、12/1228000〔詳細〕

■フラン・オブライエン/大澤正佳訳『第三の警官』白水Uブックス、12/121600円+税〔詳細〕
*文学実験とアイルランド的奇想が結びついた奇跡の傑作。元版は筑摩書房(1973年)刊行。

大澤真幸 『思考術』  河出書房新社、12/121500税 〔詳細〕
*読み、考え、そして書く――。思考技術の原論を説き、社会科学、文学、自然科学という異なるジャンルの文献から思考をつむぐ実践例を展開。

安村敏信監修『浮世絵図鑑:江戸文化の万華鏡』平凡社、別冊太陽 日本のこころ 21412/122400円+税 〔詳細〕
*江戸が生んだ世界最高のメディア芸術である浮世絵を、風俗・芸能・景観などから多様なジャンルに分けて、その中

デービッド・マタス、デービッド・キルガー/桜田直美訳 『中国臓器狩り』 アスペクト、12/121800円+税〔詳細〕
*裁判にもかけられず、政府・軍公認のもと、生きたまま臓器を摘出され死亡した、多くの法輪功被害者の真実。謝冠園監修、デービッド・マタス、トルステン・トレイ編集『中国の移植犯罪国家による臓器狩り』(自由社、201310月、1500+税)という論文集も最近出ている。

■飯田豊一 『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』 論創社、「出版人に聞く」シリーズ第12巻、12/131600円+税〔詳細〕

池央耿『翻訳万華鏡』河出書房新社、12/131800税 〔詳細〕
*翻訳の職人としてあらゆるジャンルの翻訳をこなしてきた著者が初めて明かす「翻訳上達の極意」と「翻訳の醍醐味」。

シャルル・フレジェWILDER MANN 欧州の獣人:仮装する原始の名残』青幻舎、12/163800円+税 〔詳細〕
*ヨーロッパ諸国で何世紀も昔から伝わる祭りに登場する獣人たち。それらの驚くべき多様性と奇怪な美しさをおさめた写真集。

ロバート・グリーン/新庄哲夫訳 『アメリカン・ハッスル』上・下、河出文庫、12/17、各840円+税〔詳細〕
*希代の天才詐欺師×FBI! 天才詐欺師の二枚舌が米政界と暗黒街を相手に仕掛けた、壮大なだましうちの記録! 映画「アメリカン・ハッスル」原案。

フレッド・B・リクソン/松田和也訳『暗号解読事典』創元社、12/184500円+税〔詳細〕
*古代からネット早期までの暗号の歴史的展開やトピックスを網羅的に解説した、読んで楽しく、調べて使える大事典。暗号クイズ付。632p

■桂千穂『カルトムービー本当に面白い日本映画 19451980 メディアックス、12/181500円+税
*脚本家、桂千穂が戦後1945年まで遡り、国内で封切られたすべての日本映画リストをチェック。厳選に厳選を重ね選び抜いた至極の150本を紹介する、異色の映画ガイド!

ローズ・マリー・シェルドン/三津間康幸訳『ローマとパルティア:二大帝国の激突三百年史』白水社、12/183600円+税〔詳細〕
1700年以上前にイラン・イラクの地に栄えた大国、パルティア。この強大なライバルを相手にローマ帝国がくりかえした戦争と数々の失敗の原因を、アメリカの軍事大学教授が分析する。

脇明子『少女たちの19世紀:人魚姫からアリスまで』 岩波書店、12/191600円+税〔詳細〕
*ユニークで難解なキャロルの『不思議の国のアリス』はどのようにして誕生したのだろうか。『アリス』の誕生に影響を及ぼしたヨーロッパ文学とその社会背景を〈少女〉というキーワードでたどり、児童文学の揺籃期を読み解く。

■今井美恵、私市保彦 『「赤ずきん」のフォークロア:誕生とイニシエーションをめぐる謎』 新曜社、メルヒェン叢書、12/203200円+税 〔詳細〕
*「赤ずきん」の謎をフォークロアの世界にさぐる。

■ブライアン・J・ハドソン/鎌田浩毅監修『図説滝と人間の歴史』原書房、シリーズ人と自然と地球、12/202400円+税 〔詳細〕
*ネイティブ・アメリカン、ケルト、インドなどの神話、伝説に現れ、ターナーほかの画家達に描かれ、庭園設計や建築に影響を与えた滝は、現在ではエネルギー開発の面でも注目されている。滝と人間の関わりをビジュアルで解説。

菊地原洋平著/ヒロ・ヒライ編集パラケルススと魔術的ルネサンス  勁草書房、Bibliotheca hermetica 叢書、12/215300 〔詳細〕
*伝統医学の変革者とも、賢者の石をもちホムンクルスをつくり出した魔術師ともいわれるパラケルスス。激動の16世紀ドイツで、神が創造した世界の秘密を解明すべく、魔術とキリスト教思想を融合するとともに、自然を経験的に理解しようとした。彼が生涯をとおして探求したものはなんだったのか? 当時の知的・文化的・社会的なコンテクストをとおして浮き彫りにする。 紀伊國屋書店新宿本店での刊行記念トークイベントはこちら1214日ころから先行販売した模様。

■北原尚彦SF奇書コレクション』東京創元社、キイ・ライブラリー、12/212300円+税 〔詳細〕
*汲めども尽きぬSF奇書・珍本。古書のみならず、脚本・図録から自費出版書籍まで、入手手段の限定された珍しい書籍を縦横無尽に紹介する。

風間賢二 『怪奇幻想ミステリーはお好き?:その誕生から日本における受容まで』 NHK出版、12/21905円+税〔詳細〕
*〈NHKカルチャーラジオ 文学の世界〉12回のテクスト(19日放送開始)。ゴシック小説、ポー、ドイルから明治以降の日本における受容まで。

■トーマス・デ・パドヴァ/藤川芳朗訳 『ケプラーとガリレイ:書簡が明かす天才たちの素顔』 白水社、12/233400円+税〔詳細〕
*科学史上に輝く巨星の対照的な生涯と大発見、時代背景を活写した評伝。二人を結んだ「絆」として、交わした書簡が重要な役割を果たす。

杉山久仁彦 『図説虹の文化史』河出書房新社、12/254600円+税〔詳細〕
*人びとは虹に何を見てきたか、その謎にいかに挑んできたか。虹をめぐる知と表現の系譜を通覧する一大スペクタクル。

綿谷雪『術(新装版)青蛙房、12月、3200円+税 〔詳細〕
*仙術入門、呪文と護符、真言秘密の魔法の種々相、火渡りと鉄火術・熱湯術、空中浮揚術と飛行器巧、占卜の方技、五行と干支、九星術、占星術から淘宮術まで、手相術・骨相術、人相術。「術」の来歴を多数の図版と共に考証。

中野五郎『裁かれた進化論』仮説社、やまねこブックレット412/20700円+税〔詳細〕
1920年代、学校で進化論を教えた事で教師が告訴されるという、アメリカで実際にあった裁判(通称「モンキー裁判」)を通して、アメリカを中心に今も続く「進化論」と「創造論」の戦いに迫る。ただし《週刊朝日》の1954年春季増刊号のために書かれたもの。(解説:清水龍郎)

■山本光伸R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか』 柏艪舎、12/211500円+税〔詳細〕
*『The Long Goodbye』の魅力を三者三様の訳文で紹介。40年以上、文芸翻訳の第一線で活躍してきた翻訳家山本光伸が、清水俊二・村上春樹両氏に「ぶつかり稽古」を挑む。

ブルース・シュナイアー/山形浩生訳 『信頼と裏切りの社会』 NTT出版、12/244200円+税〔詳細〕
*人間社会は信頼なくして成り立たない。しかし、社会の中には必ず、信頼を悪用して自分の利益にしようとする裏切り者がいる。このため社会は、裏切り者を見つけ出し、制裁を加える制度・システムを作ってきた。しかしネット社会とグローバル化の現在、そうした制度・システムが機能しない場面が増えている……社会科学、生物学などを総動員して、信頼の構成要素を解明する総合的研究。

■安井泰平『ジャッロ映画の世界』彩流社、12/244500円+税 〔詳細〕
1960 年代以降のイタリア・ホラー・サスペンス映画群を徹底研究。怪しい魅力渦巻くジャッロ映画世界。

■ジョージ・G・スピーロ/青木薫訳『ケプラー予想:四百年の難問が解けるまで』  新潮文庫、12/24940円+税〔詳細〕
*元版は新潮社、20054月刊行。

石田『ハマー・ホラー写真集 VOL.1 ドラキュラ編』キャッスル・カンパニー、12/252096円+税 〔詳細〕

■正木香子 『本を読む人のための書体入門』 星海社新書、12/26820円+税 〔詳細〕
*文字の味わい方がわかれば、本の読み方も変わる。『文字の食卓』(本の雑誌社、2013年)で「絶対文字感」をアピールした著者による文字の味わい方の本。

■東京国立博物館編著 『東京国立博物館東洋館:東洋美術をめぐる旅』平凡社、コロナ・ブックス 18912/271600円+税 〔詳細〕
*「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトに20131月にリニューアルオープンしたトーハク・東洋館。中国・朝鮮からエジプトまで、アジア最高水準とも言われる所蔵品を紹介。

『小栗虫太郎関連資料集 DUKDUK ダクダク3 特集錬金術』素天堂、12/29800+送料〔詳細〕
*昭和初期の製薬会社PR『チバ時報』および『科学画報』より錬金術文献を復刻。珍しい図版多数。

■桑木野幸司『叡智の建築家:記憶のロクスとしての16-17世紀の庭園、劇場、都市』中央公論美術出版社、12/下旬、9000円+税 〔詳細〕
*「建築」「記憶術」「百科全書主義」…初期近代ヨーロッパ建築文化における創造的関係を明らかにする、建築史・
 
【これから出る本】(タイトル・発売日・価格等はすべて予定)
 
20141予定
■高原英理編『リテラリーゴシック・イン・ジャパン:文学的ゴシック作品選』ちくま文庫、1/81600円+税 〔詳細〕
*「幻想文学」としてみても「怪奇小説」・「ホラーノヴェル」等々としてみても、どうも完全には覆えない、現代の不穏を感じさせる優れた文学作品集。収録作品は全39作品(38作家)、680ページを越える大冊。

アーサー・オードヒューム/高田紀代志・中島秀人訳『永久運動の夢』ちくま学芸文庫、1/81400円+税
*元版は朝日新聞社、朝日選書、1987420日、1300円。
 
福嶋聡『紙の本は、滅びない』ポプラ社、ポプラ新書、1/8780円+税 〔詳細〕
*なぜ書店が必要なのか?なぜ読書が必要なのか?書店を愛してやまない書店員が今こそ世に問う、書物の存在理由と書店のありかた。従来『紙の本が死なない理由』という仮題であったが、どうやら変更になった模様。

■ビー・ウィルソン/真田由美子訳『キッチンの歴史:料理道具が変えた人類の食文化』河出書房新社、1/152800円+税 〔詳細〕
*美味しい料理は道具で進化した! 食の歴史はテクノロジーの歴史だ。古今東西の調理道具の歴史をたどりながら、それらが人々の暮らしや文化にどのような影響を与えてきたのかを読み解く。『食品偽造の歴史』(白水社)の著者による料理道具史。

■ティム・インゴルド/管啓次郎解説、工藤晋訳『ラインズ:線の文化史』  左右社、1/152800円+税 〔詳細〕

山口昌男『本の神話学』岩波現代文庫、1/161180円+税〔詳細〕

山口昌男『歴史・祝祭・神話』岩波現代文庫、1/161080円+税〔詳細〕

『竹久夢二:大正ロマンの画家、知られざる素顔』河出書房新社、1/171600円+税 〔詳細〕
*生誕130年記念出版。大正ロマンの象徴として、画家・詩人・デザイナーとして活躍した「夢二」の世界を多彩な顔ぶれが語る。

■コリー・オルセン『トールキンの「ホビット」を探して』角川学芸出版、1/232300円+税 〔詳細〕
*『ホビット』から『指輪物語』へ、トールキンが残した謎を読み説く。

マリア・コニコヴァ『シャーロック・ホームズの思考術』早川書房、1/232000円+税
*あなたもホームズと同じ思考能力を持つことができる。最新の神経科学と心理学の成果から名探偵の推理の秘密に迫り、実践方法を伝授する。
 
黒岩比佐子『忘れられた声を聴く』幻戯書房、1/242286円+税〔詳細〕
*惜しまれつつも急逝した評伝作家(ヒストリー・オーサー)が歴史を読み、書くことの魅力をつづる単行本未収録エッセイ集。

辻惟雄『辻惟雄集4 風俗画の展開』岩波書店、1/243400円+税〔詳細〕
*洛中洛外図屏風の展開を総覧し、重層的な北斎芸術の本質に迫り、新しい俯瞰形式を模索した江戸後期の浮世絵師、蕙斎、北斎、貞秀を論じる。

■田澤耕『〈辞書屋〉列伝:言葉に憑かれた人びと』中公新書、1/25880円+税 〔詳細〕
*ドラマのない辞書はない! オックスフォード英語辞典、日本初の国語辞典「言海」、ヘボンが作った和英辞典など、苦闘と情熱を描く。

■アダム・カバット『江戸の化物:草双紙の世界』岩波書店、1/282400円+税 〔詳細〕
*江戸中期に大流行した草双紙は諷刺・パロディに満ちた絵入り読物。そこに登場する化物は江戸っ子の間で笑いと人気を呼んだ。生まれも育ちもNYながら日本文学研究一筋のカバット先生が、化物の魅力と変遷を解き明かす。

■クラフト・エヴィング商會『クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会』平凡社、1/282500円+税 〔詳細〕
*この展覧会はうそかまことか――。クラフト・エヴィング商會の棚おろし的展覧会(世田谷文学館1/253/30)公式図録。展覧会の案内はこちら

デイヴィッド・リンゼイ/中村保男・中村正明訳 『アルクトゥールスへの旅』 文遊社、1/283300円+税 〔詳細〕
*哲学の書でありながらファンタジーとして楽しく読める傑作と呼ぶにふさわしい長篇。サンリオSF文庫版の改訂新版。

エドワード・D・ホック/木村二郎訳『サイモン・アークの事件簿V創元推理文庫、1/301100円+税 〔詳細〕
*オカルト探偵アークが異界の謎と遭遇する8編を収録した短編集第5弾。シリーズ最終巻。

■バロネス・オルツィ/平山雄一訳『隅の老人完全版』 作品社、1/316800円+税 〔詳細〕
*元祖“安楽椅子探偵”。原書単行本全3巻に未収録の幻の作品を新発見1本収録。シリーズ全38篇を網羅した、世界初の完全版1巻本全集!

■ヴォルフガング・ベーリンガー/長谷川直子訳 『魔女と魔女狩り』 刀水書房、刀水歴史全書871月、3500円+税〔詳細〕
Wolfgang Behringer, Wiches and Witch-Hunts: A Global History, 2004 の翻訳。

■ミルチャ・エリアーデ/奥山倫明訳 『ポルトガル日記』 作品社、1月、2400円+税 〔詳細〕

■シンシア・D・ベアテルセン/関根光宏訳 『キノコの歴史』 原書房、「食」の図書館、1月、2400円+税
*「神の食べもの」と呼ばれる一方「悪魔の食べもの」とも言われてきたキノコ。キノコ自体の平易な解説は勿論、採集・食べ方・保存、毒殺と中毒、宗教と幻覚、現代のキノコ産業についてまで述べた、キノコと人間の文化の歴史。
 
ネイサン・ベロフスキー/伊藤はるみ訳  『「最悪」の医療の歴史』 原書房、1月、2400円+税
*古代から中世、ルネサンス期を経ていわゆる「英雄医療」の時代まで、現実とは思えない、当時の「最新科学」による治療や処置を、数多くの実例とともに紹介。
 
ブライアン・J・ロブ/日暮雅通訳  『ヴィジュアル大全 スチームパンク』 原書房、1月、3800円+税
19世紀ヴィクトリア朝の蒸気機関と鋼鉄、未来への創造力、そしてジャパネスクが生み出した「スチームパンク」。ジュール・ヴェルヌやウェルズ、宮崎駿の作品から芸術品やファッション、音楽にいたるその全体像をカラフルに紹介した決定版。
 
 
20142月以降予定
■阿辻哲次、小駒勝美、柴田実、柏野和佳子、エリク・ロング 『日本語文字・表記の難しさとおもしろさ』(仮)彩流社、2/10〔詳細〕
20119月のNINJALフォーラム「日本語文字・表現の難しさとおもしろさ」(国立国語研究所主催)の講演・報告を各分野の領域から展開し、それぞれ専門的関心により問題点を取り上げて、現代日本語の文字・表現の難しさとおもしろさを明らかにしていく。

■ハンス・ベルティング/仲間裕子訳 『イメージ人類学』 平凡社、2/135000円+税 〔詳細〕
*美術史を広くイメージの学として構想し直したベルティングの理論的主著。

エリック・ラスムッセン/安達まみ訳  『シェイクスピアを追え!:消えたファースト・フォリオ本の行方』 岩波書店、2/21〔詳細〕
*コレクター垂涎の稀書が、400年の間にたどってきた数奇な運命をめぐるエピソードを集めたもの。の奇想天外なフォリオの運命をたどるにつれて見えてくるのが、このフォリオにとり憑かれた富豪、泥棒、愚者、変人、さまざまな人々がその人生を翻弄される姿。

メイ・シンクレア/南條竹則編訳  『胸の火は消えず』  創元推理文庫、2〔詳細〕
*女性の深層心理や性の問題に取り組んだ異色怪談から、死後の世界や心優しき幽霊の登場する軽妙な作品まで、全11篇。

■杉江松恋『路地裏の迷宮踏査』(仮)東京創元社、キイ・ライブラリー、2月以降
*ミステリマニア必携、《ミステリーズ!》連載が加筆訂正の上、単行本に。
 
都筑道夫著/日下三蔵編『未来警察殺人課[完全版]』東京創元社、2月以降
*「殺人課」とは「殺人事件を捜査する部署」ではなく「殺人を行う部署」である。
 
紀田順一郎編『書物愛(日本篇)』東京創元社、創元ライブラリ、2月以降
*書物に取り憑かれた人間の悲喜劇を本の達人が選び抜いた傑作集・日本篇。
 
紀田順一郎編『書物愛(海外篇)』東京創元社、創元ライブラリ、2月以降
*書物に取り憑かれた人間の悲喜劇を本の達人が選び抜いた傑作集・海外篇。
 
貴田庄『西洋の書物工房:ロゼッタ・ストーンからモロッコ革の本まで』朝日選書、2
 
樫原辰郎『海洋堂創世記』白水社、2
*日本が世界に誇るガレージキット&フィギュア製造会社、海洋堂公認。原型師たちの活躍を描く1980年代の青春グラフィティ。
 
■高山宏、中沢新一(対談)『インヴェンション』明治大学出版会、野生の科学研究所叢書(ル・シアンス・ソヴァージュ・ド・ポッシュ)、2月?、2300円+税〔詳細〕
*丸善出版が発売元か?

■ヒロ・ヒライ+小澤実編 『知のミクロコスモス:中世ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー中央公論新社、3/10〔詳細〕
20127月に行われたシンポジウム「人知のいとなみを歴史にしるす:中世・初期近代インテレクチュアル・ヒストリーの挑戦」の論文集。シンポジウムの紹介はこちら

グスタフ・マイリンク/今村孝訳 『ゴーレム』白水社、白水Uブックス、3
**夢と現実が混清する多重構造を持つ物語不安や都市生活の悪夢をゴーレム伝説に託して描く。図版多数収録。元版は河出書房新社より1973420日に発行された。
 
プランセス・サッフォー/野呂康・安井亜希子訳『チュチュ:世紀末巴里風俗奇譚』水声社、3月頃2800円+税
*知られざる19世紀最大の奇書。世紀末のパリを舞台に俗悪ブルジョワの主人公が繰り広げる奇想天外、荒唐無稽な露悪趣味の極北。社会の病巣をキッチュに描いた世にも奇妙な珍書中の珍書。ハチャメチヤすぎる内容に抱腹絶倒間違いなし。
 
風間賢二『ファミリー・ブラッド:家族にはつねにすでにモンスターが潜んでいる!』(仮)彩流社、3/25、定価未定 〔詳細〕

ポール・コリンズ/山田和子訳『バンヴァードの阿房宮:世界を変えなかった13人』(仮)白水社、夏
*壮大な夢と特異な才能をもちながら、世界を変えることなく歴史から忘れられた天才13人を紹介したポートレイト集。
 
J・B・ホラーズ編/古屋美登里訳『モンスターズ』白水社、8
*吸血鬼、ゴジラ、モスマン、ビッグフット、ミイラ、ゾンビなど異形の「怪物たち」をテーマに、曲者ぞろいの新鋭・中堅作家18人が腕を競う、異色の短篇アンソロジー。
 
カート・ヴォネガット/大森望訳『ヴォネガット未発表短篇集』河出書房新社、夏
*天才ヴォネガットの生前未発表短編14篇。
 
ミハル・アイヴァス/阿部賢一訳『黄金時代』河出書房新社、夏
*虚構の島とく無限に増殖する本〉をめぐる異形の紀行文学。『もうひとつの街』のチェコ作家がおくる、想像力と技巧に満ちた大作。
 
ミハイル・エリザーロフ/北川和美訳『図書館司書』河出書房新社、秋
*失われた奇書をめぐり図書館で戦争が始まる。現代ロシアが生んだ破壊的スプラッターノヴェル。
 
MH・ニコルソン/浜口稔訳『ピープスの日記と新科学』白水社、高山宏セレクション/異貌の人文学 〔詳細〕

■ラリー・プリンチーペ/ヒロ・ヒライ訳 『錬金術の秘密』 勁草書房、BH 叢書 〔詳細〕

U.ペンツェンホーファー『評伝・パラケルスス』勁草書房、BH 叢書(未定)
 
■鈴木宏『書肆風の薔薇から水声社へ』(仮)論創社、「出版人に聞く」シリーズ
 
ジャン・クロード・シュミット/小池寿子・廣川暁生・古本高樹訳『イメージにひそむ身体:中世の視覚文化』刀水書房、5000円 〔詳細〕

■高橋洋、稲生平太郎 『映画の生体解剖』(仮)洋泉社
*シネマ対談
 
ウンベルト・エーコ 『プラハの墓地』東京創元社
*偽書ものの大作を準備中。
 
大浜甫・多田智満子・宮下志朗・千葉文夫ほか訳『マルセル・シュオッブ全集』国書刊行会
 
東雅夫・下楠昌哉編『幻想と怪奇の英文学』(仮)
 
■臼田捷治『工作舎物語』左右舎〔詳細〕

■松田行正、ミルキィ・イソベ、木内達朗『デザイン・プレゼンテーションの哲学』左右舎、神戸芸術工科大学レクチャーブックス 〔詳細〕

石川九楊『九楊先生の文字学入門』左右社、?、3500円+税 〔詳細〕
 *版元ドットコムのURLでは別な本が表示されてしまう。刊行されないのか?

『猟奇 復刻版』全6、三人社、?、60000 〔詳細〕
*昭和初期に出た探偵小説雑誌。

 

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夢幻庵主人

Author:夢幻庵主人
隠居生活続行中。

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