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『ミステリガール』◆ミステリについて(2)

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴訳『ミステリガール』早川書房、HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS2013615日、1900円+税
 David Gordon, Mystery Girl, 2013
 
本書は、前に紹介した『二流小説家』の第2作。前作は評判ほどのレベルではなかったが、今回はどうだろうか。
 
あらすじを簡単に示しておこう。
小説家志望のサミュエル(サム)・コーンバーグは、勤めていた古書店が店をたたむことになり、失職してしまう。妻ララからは離婚を宣告され、職探しのあげくに見つけたのが探偵助手。私立探偵ソーラー・ロンスキーは超肥満体で強迫神経症を病んでいるものの、頭脳は明晰というアームチェア・デテクティブ。会うなりホームズ張りに、サムの現状を言い当てる。ラモーナ・ドゥーン(モナ・ノート)という美女を調査するが、数日後、サムの目の前で投身自殺を図る。このあと女たちの素性はめまぐるしく、二転三転するのだが・・・。
 
途中、ロンスキーの調査記録や、モナが書き残した最後の手紙、モナの夫ゼッド・ノートのDVD、ララの手紙など、前作と同じく独白で、一気に真相を語ってしまう(騙ってしまうところもあるが)。訳書で520ページ近い長篇だが、これらの関係者の長広舌ですべてが明らかになってしまう以上、映画や小説の薀蓄をダシにした単なる饒舌なドタバタ劇に過ぎない。
 
前作では文字通り「二流小説家」ではあったが、本書で三流以下であることを示した。
 
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴訳『二流小説家』早川書房、HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS20113月、1900円+税ハヤカワ・ミステリ文庫HM2013125日、1000+税
 
 

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『辞書の仕事』◆辞書編纂について(2)

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 増井 元『辞書の仕事』岩波書店、岩波新書、20131018日、760円+税 [注×文×索×]
 
本書は、長年にわたり岩波書店で『広辞苑』『岩波国語辞典』などの国語辞書編纂に従事してきた著者が、辞書作りのエピソードを綴ったもの。辞書(特に国語辞典に限定)に関するとりとめのない話題が並列されるだけなので、全体の印象は茫漠としたものに留まる。
 
目次を紹介することにあまり意味はないが、簡略に示しておこう。
 第1章 辞書の楽しみ
 第2章 ことばの周辺
 第3章 辞書の仕組み
 第4章 辞典編集者になりますか
 第5章 辞書の宇宙へ

1章冒頭の項目「無人島の辞書」の中で、<外国(多分、英国)のある辞典の…編者が辞典のなかのことばについて、適切な用例、信頼できる典拠を求めようと、広く世間の人たちに呼びかけたところ、実に有益な情報を教えてくれる手紙が、何年にもわたって届きます。…その差出人を調べたところ、ある刑務所の囚人であった、というのですが、この話をどこで読んだのか、いま心当たりを探しても見当たりません。もしご存知の方がおいででしたら、どうぞ教えてください。>(pp.5-6
これは、OED編纂の中心人物であるジェームズ・マレー博士と、その編纂の最大の貢献者となったウィリアム・マイナー元アメリカ陸軍軍医のことだ。そのマイナーは長年精神病院に監禁されていたのであって、刑務所の囚人ではない。これはサイモン・ウィンチェスターの『博士と狂人』に詳述されている話だ。辞書編纂関係者ならおそらく必読の書だし、辞書編纂に関する本を編集しようとする人間なら当然知っておくべきレベルではないだろうか。
 
ずっと気になっていることがある。日本語に正書法は存在するのか、存在しないのであれば辞書ではどのように正誤を判断するのか、ということだ。
本書では、<いかに残念であろうとも、多くの人が普通に使っている「誤用」を辞典が正すことはほとんど不可能です。…実態に合わないのに規範を説くことが辞典の態度として正しいか、これはつねに辞典作りにかかわる最大難問です。/法則性を持った誤りは言葉の変化です。誤りが大多数の人の誤りであればそれも変化です。>(p.25)と記す。つまり正書法はない、と考えられようか。となれば、「誤用」(法則性を持った誤り)は「言葉の変化」なのだから、みんなが使ったらどんな使い方をしようとも立派な日本語ですよ、「誤用」だなんて野暮なことは言いませんよ、ということになろうか。
<辞書の利用者は、辞典編集者が考える以上に、辞書を規範として受け取ろうとしています。ことばの正しい書き方、正しい意味、正しい使い方、辞書を使う目的はもっぱらそれを知るため、確認するためなのです。>(p.24)一方で、<辞典編纂者は日本語の学者・研究者として、社会の言語の観察者・分析者の位置、客観的な位置に身を置きがちです。>(p.24)おそらく利用者と辞書編集者との辞書の目的意識の大きなギャップのゆえに、「ことばの正しい書き方、正しい意味、正しい使い方」の欠落した辞書に対し、人は役に立たないものと見なさざるを得ないと考え、見放してしまうのであろう。国語辞書に対し、利用者は「社会の言語の観察者・分析者の位置」なぞ求めてはいない。そんなことは、研究者の内輪でやっていてくれればいいのだ。観察・分析した研究成果としての「ことばの正しい書き方、正しい意味、正しい使い方」の判断しか求めていない。もちろん「正しい使い方」が複数あっても一向に構わない。「全然」が、実は戦後になってから否定形と結びつくようになったに過ぎなくても、そう記しておけばよい。しかし、小さいエビは皆「芝海老」と言い、大きいエビは皆「伊勢海老」と言うがごとき「誤用」に対し、「誤りが大多数の人の誤り」だから認めましょうというのは勘弁してほしい。それは誤りだと断言すべきなのだ。日本語に正書法がないとしても、ある辞典における「正しさ」であって構わない。A辞典ではこの言葉を誤用としているが、B辞典では正しいとしている、でいいではないか。そこで論議を起こせばいい。「客観的な位置に身を置」くと、そのような評価を含むような判断はできません、と言って逃げようとする学者・研究者がいる。そんな「辞典編纂者」による辞書なぞ不要の最たるものでしかない。
 
古語辞典ではないのなら、遠い過去の言葉も不要だ。明治時代・大正時代・昭和前期(戦前)の言葉すら、おそらく大半は不必要だ。それらは別に過去の言葉を集積した辞書を用意すればよい(需要があるかどうかは不明だが)。本書の著者は、その点でも大多数の利用者が求めるであろう国語辞典を読み違えている。「現代語」についての岩淵悦太郎の発言が象徴的だ。<祖父母の祖父母の世代のことばまで「現代語」と考えるべきなのだ>(p.190)と。何という勘違い! いったいいつの時代の言葉なのか。現時点で用いられている言葉を「現代語」と考えるのが自然であろう(言葉が移り変わっていくのも当然だ)。明治の言葉をも「現代語」と言いくるめることで、言葉は単に昆虫採集箱にピンで止められた屍骸でしかなくなってしまう。季語を充実させること(pp.59-63)なども結構だが、それはあくまでも昔の俳句を鑑賞するためよりは、現代に活かすことのできる季節の言葉を知らしめるためであろう。
勘違いの辞書編纂が続くのであれば、そうした国語辞書は終焉を迎える以外に途はない。
 
「あとがき」で、著者は<辞書を実際に作ることと結びついた応用辞書学・実践辞書学こそ辞典編集者が求めているもの>(p.221)だと記す。早く応用辞書学・実践辞書学によって、勘違いが解消されて、国語辞典の水準が格段に上がってほしいものだ。
 
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
サイモン・ウィンチェスター/鈴木主税訳『博士と狂人:世界最高の辞書OEDの誕生秘話』早川書房、19994月、1800円→早川書房、ハヤカワ文庫NF20063月、740
Simon Winchester, The Professor and the Madman
 
 
◆[辞書編纂]関連ブックリスト
*辞書編纂関連のブックリストについてはこちらを参照。

 

『本の顔』◆装丁について

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 坂川栄治+坂川事務所『本の顔:本をつくるときに装丁家が考えること』芸術新聞社、2013107日、1800円+税 [注×文×索×]
 
本書は、<「人と人とのコミュニケーションが装丁をつくる」それを30年間、第一線で実践してきた坂川栄治と坂川事務所による、装丁の教科書>(カバー袖より)。数千冊もの本の装丁を手掛けた中から約180冊を例示して、それぞれの本の装丁ができるまでを解説しているので、「装丁の教科書」と言うのは間違いではないものの、「30年間」はちょっとオーバーか(帯にも「30年間」とある)。本書にもあるように、国書刊行会から出たジョン・アーヴィング『ウォーターメソッドマン』が最初の装丁の仕事(p.49)であるなら、同書の初版は1989年なので、24年もしくは25年間が正確でしょう。
 
ちなみに、同書の編集者は、装丁料として通常料金の3分の1くらいしか提示できなかったため、困った編集者はやおら財布を取り出して1万円札を出し、どうしてもお願いしたいので自腹を切るからと。5冊ほど作った後、他の出版社へ移り、激務のあげく倒れて退社してしまったというp.49
 
本書の構成を記しておこう。
 はじめに
 本ができるまで
 1 装丁の依頼
 2 文字で装う
 3 イラストで装う
 4 色で装う
 5 写真で装う
 6 絵本を装う
 7 紙と印刷
 巻末対談 ①坂川栄治の「装丁」術・・・山口晶(早川書房)と
          ②坂川栄治の「コミュニケーション」術・・・長岡香織(講談社)と
全体で144ページなので、一つ一つの項目が充実しているわけではないが、装丁作品集として見ると、見たことのある本、初めて見る本それぞれに、簡単な種明かしがあったりして面白い。
 
最後の対談に「コミュニケーション」術とある通り、著者はコミュニケーションの取り方を重視する。だから、依頼された本のゲラは読まない主義だ。編集者からは、<装丁のヒントとエッセンスだけを頂き、デザインは常に客観性を保ちたい。本を商品として考えられるだけの距離感を維持するために、あえて読まないんです>(p.8
<その代わりにたくさんの会話をして、気になる点を自分のノートに書き留めながら、イメージを固めていきます。>(p.22
ノートの実例も掲載されている。編集者がどこまで自分が編集している本を熟知しているかが試されるわけだ。最近は、編集者が明らかにろくに原稿やゲラを読んでいないな、という本に出合うことが増えたような気がするので、これは編集者にとっていい訓練かもしれない。
 
25は、装丁の実例を、採用案と不採用案とを並べて、編集者とデザイナーの試行錯誤の跡を辿る試み。これは以前にどこかのデザイン雑誌でもやっていた気がする(装丁ではなくポスターか何かで)。
そこに並んだ装丁を眺めると、坂川栄治らしさといったものは感じられない。むしろ、常に変わっている。この点について、<上の世代[菊地信義や平野甲賀ら]を専門店に例えると、自分たちは時代ごとにやり方を変化させる百貨店型にシフトしていった>(p.137)。だから、<先鋭的なデザインを避けて、角を丸くゆるめたり、デザインとして80くらいのものを目指して、多くの人に届きやすくしている>(p.141)という。したがって、流行にも敏感だ。もちろん、流行は<波乗りみたいなもので、その波に乗るのも乗らないのも自由>(p.136)と考えている。万人向きデザインであるがゆえ、各出版社は依頼したくなり、数千冊もの実績が生まれたのだろう。そういった安定した職人技(プロフェッショナリズム)はとても大事だと思う。
 
最近の面白い傾向として、ネット書店を意識して装丁を作ることがあげられている。ネット書店では表示される表紙の画像サイズが小さいので、文字が見えるようにしたり、帯をはずした書影が多いので、その見え方を意識して作るそうだ(p.136)。
 
巻末対談①で、<打合せでなるべく作家に会いたくないのも、やっぱり主観から入ってしまうかな。>(p.135)と語る。その伝で言えば、本書の装丁を行う際に、この場合の「作家」に該当する著者自身とは別な人間に装丁してもらうべきだった。実際、本書の装丁は、本書に掲載されている数々の本の中でも一番の駄作に終わってしまったと思う。どうも、デザイナー諸氏が自ら書いた本を装丁しようとすると、考えあぐねた末に最悪の選択をしてしまうためか、恐ろしく陳腐な装丁にしてしまう。本書もまたその呪縛を逃れることはできなかったのは残念だった。
 
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
ジョン・アーヴィング/川本三郎・柴田元幸・岸本佐知子訳『ウォーターメソッドマン』上・下、国書刊行会、文学の冒険シリーズ、19892月、各1699円+
*ちなみに、『本の顔』p.49には、2か所に「ウォーター・メソッドマン」としているが、正しくは中黒なし。表紙の画像も同じページに掲載されているのだから、校正時に画像と照合するのは当たり前なのだが。
 

■既刊・近刊メモ(2013年11月版 Ver.2)

11月前半に刊行された(はずの)本と、11月後半以降の近刊を掲載する。若干の本には余計なコメントを付した。日付は発行日ではなく、発売日。発売日順を原則としているが、WEBでの確認が中心なので、違っているかもしれない。
*前回掲載のものから追加・変更した箇所を橙色で示す。
なお、近刊の本についてはあくまでも予定であり、タイトル・発売日・価格ともに変更の可能性はある。
次の行は私的メモ。
■読んだ本(▲元版で読んだ)、■買った本(▲元版所有)
 
11月前半に出た本から】
 
■四方田犬彦『日本の漫画への感謝』潮出版社、11/12200円+税

■マルセル・シュオブ/矢野目源一訳『吸血鬼:マルセル・シュオブ作品集』盛林堂書房、11/42000円(税込?)
*『吸血鬼』(大正13年刊)を復刻。(戦後の復刊に『黄金仮面の王』コーベブックス)解説=長山靖生。

■今和泉隆行『みんなの空想地図』白水社、11/42000円+税

■工藤庸子『いま読むペロー「昔話」』羽鳥書店、11/52000円+税
*民間伝承と宮廷文化との出会いから生まれた物語の背景をふまえ仏文学者・工藤庸子が新たに訳す。充実の解説付。

西崎憲編『怪奇小説日和』ちくま文庫、11/61000円+税
*『怪奇小説の世紀』(国書刊行会)全3巻から厳選した13篇に新訳を追加した怪奇小説アンソロジー。

■フランク・M・アハーン、アイリーン・C・ホラン/寺西のぶ子訳『完全履歴消去マニュアル』河出書房新社、11/61600円+税
*ストーカーや探偵からの身の隠し方から、国外逃亡、死亡偽装といった失踪方法まで、ネット時代のプライバシーや個人情報の守り方を、その道のプロが教える決定版!

ヤン・チヒョルト/渡邉翔訳 『アシンメトリック・タイポグラフィ』 鹿島出版会、11/63500円+税
 *活字の選択、組版の理論から、色や紙の効果的な用法まで、今日もなお有効なタイポグラフィと書物形成の基本原理を明快に解説。

インデックスフォント研究会編 『外字・異体字のバリアフリーを目指して:漢字研究7年の軌跡』 文字文化協會、11/71500円+税

■文藝春秋編『東西ミステリーベスト100文春文庫、11/8660円+税
*ミステリー・ガイド四半世紀ぶりの大改訂。

大崎梢 『ようこそ授賞式の夕べに』 東京創元社、ミステリ・フロンティア、11/91500円+税
 *波瀾万丈の書店大賞授賞式の一日を描いた「成風堂書店事件メモ」×「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」開幕!

木村俊介 『善き書店員』 ミシマ社、11/131800円+税

エミール・ルーダー 『本質的なもの』 誠文堂新光社、11/142000円+税

■山口謠司『漢字はすごい!』講談社現代新書、11/15740円+税
*漢字の成り立ちからその歴史を振り返り、今日では使われなくなった文字や日本独自の漢字などを紹介しながら、漢字の奥深さを案内する。

■ジョン・ルカーチ/村井章子訳 『歴史学の将来』 みすず書房、11/153200円+税

■ジュゼッペ・トルナーレ/柱本元彦訳 『鑑定士と顔のない依頼人』 人文書院、11/151500円+税
*美術と骨董とオークションの世界に彩られた鮮やかなミステリー。12月に公開される映画はこちら
 
【これから出る本】(タイトル・発売日・価格等はすべて予定)
 
11月後半予定
■フランシス・ウィリアムズ・ベイン/松村みね子(片山廣子)訳 『闇の精』 盛林堂書房、11月中旬、1000円(税込)
19世紀末~20世紀初に出版された印度奇譚。のダークファンタジー。解説=井村君江。

ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスタイア・スミス/四本健二・浅野宜之訳 『独裁者のためのハンドブック』 亜紀書房、11/182000円+税
*独裁志望者必読! なぜ「悪政」を行う独裁者が失脚しないのか、なぜあの権力者は不合理な決断をくだしながら生き残れるのか?

■アンドレ・ケルテス/渡辺滋人訳 『読む時間』 創元社、11/192200円+税

『プロのための製菓技法 チョコレート:チョコレートの扱い・製法、それぞれの方法』誠文堂新光社、11/192600円+税

■ヴォルフガング・ベーリンガー/長谷川直子訳 『魔女と魔女狩り』 刀水書房、刀水歴史全書8711/203500円+税 
Wolfgang Behringer, Wiches and Witch-Hunts: A Global History, 2004 の翻訳。

■大橋博之編著 『少年少女昭和SF美術館:表紙でみるジュヴナイルSFの世界』 平凡社、11/203800円+税

■池上俊一お菓子でたどるフランス史岩波ジュニア新書、11/20880円+税
*世界一の国になるには素敵なお菓子が欠かせない!と考え、その甘い武器を磨いてきた国フランス。お菓子の由来も、歴史もしっかり学べる、華麗であま~いフランス史。

■古谷昌二編著 『平野富二伝 考察と補遺:明治産業近代化のパイオニア』 朗文堂、11/2212000円+税

■アリソン・フーヴァー・バートレット/築地誠子訳『本を愛しすぎた男』原書房、11/222400円+税
*希少古書のみ数百冊を巧妙な手口で盗み続けた「本を愛しすぎた男」と、彼を追う古書店主にして熱血素人探偵のデッドヒート!

■黒田日出男豊国祭礼図読む角川学芸出版、11/222000円+税

レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳『ボリバル侯爵』国書刊行会、11/222600円+税
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336057600/

■津野海太郎花森安治伝日本の暮しをかえた男新潮社、11/221900円+税

■湯沢英治(写真)、東野晃典(文と構成)REAL BONES:骨格と機能美』 早川書房、11/229000円+税
*「本物の骨」から作成したスタイリッシュに輝く標本を、動物骨格写真の第一人者が撮り下ろし、標本作製の稀有な専門家である獣医師がその機能美を完全解説する大型写真図鑑。

ニック・レッドファーン 『ペンタゴン機密ファイル』 成甲書房、11/221800円+税
*CIA、国防総省など米国政府情報機関が秘密裏に調査してきた歴史上の謎・謎・謎。

■稲生平太郎『定本何かが空を飛んでいる』国書刊行会、11/253200円+税
UFO現象を明快に論じた名著ついに復刊。あわせて他界に魅せられし人々の、影の水脈をたどるオカルティズム・民俗学エッセイ・評論を一挙集成。

長谷川郁夫 『知命と成熟:13のレクイエム』 白水社、11/252800円+税

■安井泰平ジャッロ映画の世界(仮)彩流社、12/254500円+税
1960 年代以降のイタリア・ホラー・サスペンス映画群を徹底研究。怪しい魅力渦巻くジャッロ映画世界。

ハンス・ベルティング/仲間裕子訳 『イメージ人類学』 平凡社、11/255000円+税
*美術史を広くイメージの学として構想し直したベルティングの理論的主著。

■正木香子 『文字のソムリエ』 () 星海社新書、11/26820円+税

ジェフリー・ハーフ/星乃治彦ほか訳 『ナチのプロパガンダとアラブ世界』 岩波書店、11/266800円+税
*ナチスは第2次大戦中、中近東に対し大規模なプロパガンダを展開した。当時英仏からの独立を目指していたアラブ世界にとって、ナチのプロパガンダは抵抗のツールとみなされた。そして、その反ユダヤ主義はアラブ知識人の中に潜行していく。

濱下武志 『華僑・華人と中華網:移民・交易・送金ネットワークの構造と展開』 岩波書店、11/275500円+税

ディヴィッド・J・スカウ編/田中一江・夏来健次・尾之上浩司訳『シルヴァー・スクリーム』上・下、創元推理文庫、11/28、各1160円+税
*映画ホラーアンソロジー。収録作品はこちら

石川九楊『九楊先生の文字学入門』左右社、11/303500円+税

■広島市文化協会文芸部会編 『占領期の出版メディアと検閲:戦後広島の文芸活動』 勉誠出版、11月、1800円+税

■飯田豊一 『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』論創社、「出版人に聞く」シリーズ、11下旬

中子真治『中子真治 SF映画評集成:ハリウッド80'sSFX映画最前線』洋泉社、11/263800円+税
1980年代、映画少年たちを熱狂させたハリウッドSFXブームの仕掛人・中子真治。まだネットもない時代、彼がハリウッドから発信した濃厚で的確なSF映画情報の数々を一冊に網羅。

■西野嘉章編インターメディアテク東京大学 学術標本コレクション平凡社、11月、1800円+税

『猟奇 復刻版』6、三人社、11月、60000円+税
*昭和初期に出た探偵小説雑誌。

■グザヴィエ・バラル編集、デザイン/宮本英昭日本語版監修MARS 火星:未知なる地表 惑星探査機MROが明かす、生命の起源』青幻舎、11月、12000円+税
NASA火星探査機マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)搭載の高解像度カメラ(HiRISE)がとらえた、その複雑で起伏に富んだ地表をカメラの視野そのままに収録。

プランセス・サッフォー/野呂康・安井亜希子訳チュチュ:世紀末パリ風俗奇譚水声社、11月?、2800円+税
*知られざる19世紀最大の奇書。

 
12月予定
大田垣晴子 『偏愛博物館スケッチ』 角川書店、12/11200円+税

豊田市美術館監修反重力:浮遊・時空・パラレルワールド青幻舎、12/22800円+税
「反重力展」豊田市美術館、2013914日-1224日開催

ロバート・グリーン 『アメリカン・ハッスル』 上・下、河出文庫、12/4、各840円+税

小塚昌彦 『ぼくのつくった書体の話:活字と写植、そして小塚書体のデザイン』 グラフィック社、12/62500円+税
*毎日新聞書体、新ゴ、小塚明朝、小塚ゴシックのタイプデザインディレクターが語る文字づくりのすべて。

■東雅夫編『日本幻想文学大全III日本幻想文学事典ちくま文庫、12/101600円+税

早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』ちくま文庫、12/10720円+税

■高橋輝次『書斎の宇宙:文学者の愛した机と文具たち』ちくま文庫、12/10880円+税

■ロジェ・カイヨワ『斜線:方法としての対角線の科学』講談社学術文庫、12/10

岩波書店辞典編集部編『岩波世界人名大辞典』岩波書店、12/1228000

■フラン・オブライエン『第三の警官』白水Uブックス、12/121600円+税
*文学実験とアイルランド的奇想が結びついた奇跡の傑作。

山本光伸R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか』柏艪舎、12月上旬、1500円+税
*『The Long Goodbyeの魅力を三者三様の訳文で紹介。40年以上、文芸翻訳の第一線で活躍してきた翻訳家山本光伸が、清水俊二・村上春樹両氏に「ぶつかり稽古」を挑む。

■杉山久仁彦『図説虹の文化史』河出書房新社、12/174200円+税
*人びとは虹に何を見てきたか、その謎にいかに挑んできたか。虹をめぐる知と表現の系譜を通覧する一大スペクタクル。

■桑原茂夫『不思議の国のアリス』河出書房新社、ふくろうの本、12/171800円+税
*写真機の発明に恐竜の発見等、ヴィクトリア朝の魅力的な文化がワンダーランドを支えていた。

桂千穂『カルトムービー本当に面白い日本映画 19451980メディアックス、12/181500円+税

脇明子『少女たちの19世紀:人魚姫からアリスまで』岩波書店、12/19

フレッド・B・リクソン/松田和也訳『暗号解読事典』創元社、12/204500円+税
*古代からネット早期までの暗号の歴史的展開やトピックスを網羅的に解説した、読んで楽しく、調べて使える大事典。暗号クイズ付。634p

東浩紀『セカイからもっと近くに:現実から切り離された文学の諸問題』東京創元社、12/20
*想像力と現実が切り離された時代に、評論には何ができるのか。ライトノベル・ミステリ・アニメ・SF、それぞれのジャンルで文学と社会の再縫合を試みた作家を読み解く。

■北原尚彦SF奇書コレクション』東京創元社、キイ・ライブラリー、12/252300円+税
*汲めども尽きぬSF奇書・珍本。古書のみならず、脚本・図録から自費出版書籍まで、入手手段の限定された珍しい書籍を縦横無尽に紹介する。

■トーマス・デ・パドヴァ『ケプラーとガリレイ:書簡が明かす天才たちの素顔』白水社、12/233400
*科学史上に輝く巨星の対照的な生涯と大発見、時代背景を活写した評伝。二人を結んだ「絆」として、交わした書簡が重要な役割を果たす。

■ジョージ・G・スピーロ『ケプラー予想:四百年の難問が解けるまで』新潮文庫、12/25940円+税

風間賢二『ファミリー・ブラッド:家族にはつねにすでにモンスターが潜んでいる!』(仮)彩流社、12/25?、定価未定

■菊地原洋平パラケルススと魔術的ルネサンス 勁草書房、Bibliotheca hermetica 叢書、12/275000
*近代医学の創始者か、賢者の石を手にした錬金術の達人か? 魔術・占星術とキリスト教の融合をめざしたパラケルススの研究の決定版!

大澤真幸 『思考術』  河出書房新社、12/271500
*読み、考え、そして書く――。思考技術の原論を説き、社会科学、文学、自然科学という異なるジャンルの文献から思考をつむぐ実践例を展開。

福嶋聡『紙の本が死なない理由』ポプラ社、12/311300円+税

 
2014予定
■ティム・インゴルド/管啓次郎解説、工藤晋訳『ラインズ:線の文化史』左右社、1/152800円+税

エドワード・D・ホック/木村二郎訳『サイモン・アークの事件簿V創元推理文庫、1月以降
 *オカルト探偵アークが異界の謎と遭遇する8編を収録した短編集第5

■ミルチャ・エリアーデ/奥山倫明訳 『ポルトガル日記』 作品社、1月、2400円+税

■鈴木宏『書肆風の薔薇から水声社へ』(仮)論創社、「出版人に聞く」シリーズ

■ラリー・プリンチーペ/ヒロ・ヒライ訳 『錬金術の秘密』 勁草書房、BH 叢書、2014年 

U.ペンツェンホーファー『評伝・パラケルスス』勁草書房、BH 叢書(未定)

■ヒロ・ヒライ+小澤実編 『知のミクロコスモス:西欧中世ルネサンス精神史研究』 中央公論新社

ジャン・クロード・シュミット/小池寿子・廣川暁生・古本高樹訳『イメージにひそむ身体:中世の視覚文化』刀水書房、5000

■高橋洋、稲生平太郎 『映画の生体解剖』(仮)
*シネマ対談

■臼田捷治『工作舎物語』左右舎

■松田行正、ミルキィ・イソベ、木内達朗『デザインプレゼンテーションの哲学』左右舎、神戸芸術工科大学レクチャーブックス

 

『骨・岩・星』◆年代の測定方法について

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 クリス・ターニー/古田治訳『骨・岩・星:科学が解き明かす歴史のミステリー』日本評論社、2013910日、2100円+税 [注×文×索×]
 Chris Turney, Bones, Rocks and Stars: The Science of When Things Happened, 2007
 
本書は、過去の出来事の年代をどのように測定するかについて書かれた本である。原著のサブタイトルが本書の内容を端的に示している。
 
全体の構成と触れている年代測定法を示そう。
prologuepp.2-6
1変わり続けるカレンダー  pp.8-17 *暦がどのように変遷してきたか。
2暗黒時代の英雄 pp.18-44 *アーサー王伝説を史実から探る。
3トリノの聖骸布の真贋は pp.46-63 *放射性炭素による年代測定方法。
4ピラミッドとおおぐま・こぐま座 pp.64-86 *ピラミッドの方向付けと建造年代推定。
5ヨーロッパを揺るがした火山 pp.88-109 *サントリニ噴火のテフロクロノロジー(火山灰編年学)と類型学、地球磁場の方向、年輪解析、放射性炭素較正曲線。
6天命 pp.110-124 *年輪年代学。
7氷河の到来 pp.126-145 *氷河期概念の受容と、浮遊性有孔虫の酸素同位体指標。
8失われた世界(大型動物の絶滅) pp.146-167 *メガファウナ(巨大動物)絶滅の年代測定:アミノ酸ラセミ法とルミネセンス法。
9ミッシングリンクをもとめて(ヒトの進化) pp.168-191 *古い人骨の年代測定:アルゴン-カリウム法、アルゴン-アルゴン年代測定法、電子スピン共鳴ESR、核分裂飛跡法(FTD)。
10地上にあいた巨大な穴(恐竜の絶滅) pp.192-207 *イリジウムの存在による隕石衝突での恐竜絶滅説。
11時間の限界にむけて(地球の年齢) pp.208-224 *地球年齢の推定:鉄隕石の利用。
epilogue 時間が足りない pp.2-6
徐々に遡っていくことで、最後の章は遂に地球の年齢を測定する内容となる。
 
各章では、かつてどのように想像されてきたのか、それが科学的な測定方法が開発され、どこまでわかるようになったのかが、その限界含め、明確に描き出している。個々の測定法の解説は精粗があるものの、興味深いテーマの設定とそれらに見合った測定方法の実践という組み合わせで読ませる。
 
実は本書のもう一つの重要な目的は、創造科学批判にある。
<もし教育政策を含む政府施策が宗教教育によってハイジャックされたら、過去の大災害に学ぶチャンスも将来へのチャレンジも、自信を持って対処することができなくなってしまう。>(p.6
<西欧での創造主義に係る権利主張をするグループの人たち>が、<化石の発見とその年代を否定することは、早期における人類の多様性を無視することになる。>(p.227
欧米では聖書を盲信するあまり、原理主義的な誤った信念に憑りつかれている人々が非常に多い。彼らは、世界が6000年前に神によって創られたのであり、進化論は誤りで、恐竜などの化石はノアの大洪水の際に生じたもの、といった奇矯な考えを主張している。狂信的と言えるのだが、とくにアメリカでは幅広く信じられており、州によっては進化論と同等に創造説を教えるべし、としているところすらある。
こうした妄信に警鐘を鳴らすべく、かつての空想的理論に対し、それを正すためにどのような年代測定法が編み出され、適用されて、より長い年代の出来事であるかが明らかになった、ということを読者に認識してもらおうとしているのだ。
 
創造説とは異なるが、トリノの聖骸布をめぐる科学的調査と、それに反対する狂信者の反論は、同類である。
調査した結果、<最新版の放射性炭素較正曲線を用いて、トリノの聖骸布は12751381年の間であると年代測定された。>(p.62
これに対し、キリストの像が布に写ったと信じる者たちは、汚染された試料だとか、修復が施されて新しい布に置き換えられたとか、サンプリング時に差し替えられたとか、布の表面のバクテリアが炭素量を増やして年代を新しくさせた、などと虚しい反論をしたが、どれも批判され退けられた。
さらに、<年代の乖離について、いま最も創造的な解釈は、キリストの復活はユニークな物理事象によるものだ、というものである。>(p.64)つまり、<人体を構成する多数の原子中の中性子がこのイベントの中で放出されてしまい、これらの中性子が聖骸布の中の13C原子によって捕捉されて14Cとなり、聖骸布の放射線が増えることで人為的に若い世代になったのだ>(p.64)という主張である。
<さほど多くの放射性炭素が生成されるとしたら、出てくる年代は現代ということになってしまいかねない。>(p.65
 
原書では巻末に“Further Reading”がついているにもかかわらず、訳書では何の断りもなく省いている。巻末の「謝辞」にも<多くの書籍のお世話になった>(p.238)とある以上、参考文献紹介を省略するのは許せない。また原著には索引もあるが、訳書ではそれも手抜きで索引はない。
http://us.macmillan.com/bonesrocksandstars/ChrisTurney
 
ついでに言えば、本書は杜撰な編集が目につく。例えば、無理に偶数ページ起こしの本文レイアウトにしているため、その前の奇数ページが白となる奇妙な箇所が5か所もある。つまり5ページ分の無駄が生じているのだから、そのページでFurther Reading”を入れるべきだったろう。
訳も校正も杜撰。例えば、<ラファエル以前の画家はとくにアーサー王への執着が強い。>(p.18)おそらくPre-Raphaelite paintersとでも書いてあったのだろうが、これではラファエロ以前に活動していた画家になってしまう。「ラファエル前派」はラファエロ以前の芸術、つまり中世や初期ルネサンスの芸術を範としたグループを言うのだから。
ジェフリー・オブ・モンマスの<『ブリタニア列王伝』は1138年にラテン語で刊行された。>(p.20)とか、<モンマスの初版本は今では手に入らない。入手可能な最も初期のは、1145年に発行された『ブリタニア列王伝』の第二版なので、ティンタンジェル城が初版本に出てくるのかどうかはわからない。>(p.23)などとあるが、当然この時代は印刷本など存在せず、すべて写本でしかない。したがって「刊行」はありえないし、そもそも印刷ではないので「版」となるわけがないので、初版も第二版も無意味でしかない。
2-1の注に<括弧内の年代は…>(p.31)とあるが、括弧はこの表にでてこない!
1年以内の制度で測定できる…>(p.57)は、当然「精度」の誤記。
あまりに多いことから、恐らく編集者は目を通していないのだろう。
 
 
◆[創造説/キリスト教原理主義]関連ブックリスト
 
アービング・ストーン(Irving Stone)/小鷹信光訳『アメリカは有罪だ:アメリカの暗黒と格闘した弁護士ダロウの生涯』上・下、サイマル出版会1973
     *進化論裁判で戦った弁護士クラレンス・ダロウ。
ジェームズ・バー/喜田川信ほか訳『ファンダメンタリズム:その聖書解釈と教理』ヨルダン社、19821月、4200円 (税込)
James Barr, Fundamentalism. 2nd ed
ナイルズ・エルドリッジ/渡辺政隆訳『進化論裁判:モンキー・ビジネス』平河出版社、199112月、2300円 (税込)
Niles Eldredge, The Monkey Business
森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』講談社選書メチエ、19963月、1500 (税込)
坪内隆彦『キリスト教原理主義のアメリカ』亜紀書房、19973月、1600
鵜浦裕『進化論を拒む人々:現代カリフォルニアの創造論運動』勁草書房、199811月、2300
蓮見博昭『宗教に揺れるアメリカ:民主政治の背後にあるもの』日本評論社、20022月、2700
大関敏明『アメリカのキリスト教原理主義と政治支援団体』文芸社、200511月、1200
スーザン・ジョージ/森田成也・大屋定晴・中村好孝 訳『アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?』作品社、200810月、2400
Susan George, Hijacking America : How the Religious and Secular Right Changed what Americans Think
 

『読書の技法』◆読書の方法論について

某月某日、こんな本を読んだ。
 
佐藤優『読書の技法:誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』東洋経済新報社、201289日、1500円+税 [注×文△索×]
 
本書は、<月平均300冊以上は目を通す><多い月は500冊を超える>(p.24)と豪語する著者による、文字通り「読書の技法」を非常にわかりやすく説いた本である。《週刊東洋経済》に20075月から「知の技法 出世の作法」と題して連載されていたもののうち、読書に関する部分を加筆・編集したものという。
 
まず、全体の構成を示しておこう。
 口絵(書斎と仕事場や、本の読み方、ノートの作り方など)8ページ分
   羨ましいくらい整然とした書斎である。
 はじめに pp.1-10
   本書の要約。超速読するなら、ここと目次だけで十分。
 第I部 本はどう読むか
 第1章 多読の技法――筆者はいかにして大量の本を読みこなすようになったか pp.23-45
 第2章 熟読の技法――基本書をどう読みこなすか pp.47-74
 第3章 速読の技法――「超速読」と「普通の速読」 pp.75-98
 第4章 読書ノートの作り方――記憶を定着させる抜き書きとコメント pp.99-110
 第II部 何を読めばいいか
 第5章 教科書と学習参考書を使いこなす――知識の欠損部分をどう見つけ、補うか pp.111-210
 第6章 小説や漫画の読み方 pp.211-237
 第III部 本はいつ、どこで読むか
 第7章 時間を圧縮する技法――時間帯と場所を使い分ける pp.239-265
 おわりに pp.267-270
 「[特別付録]本書に登場する書籍リスト」 pp.271-279
 
どうしてこれほどの量を読まねばならないのか。著者によれば、刊行当時で52歳、すでに人生の残り時間は短い。<どんなに努力しても、知りたいことの大部分について、諦めなくてはならない。しかし、そう簡単に諦めたくない。そのときに役に立つのが読書だ。他人の経験、知的努力を、読書によって自分のものにするのだ。>(p.4)そう言われては、老生など人生の最期のコーナーを既に回ってしまっている人間にとって、もはや手遅れかもしれないと、思ってしまう。
 
<月平均300冊以上は目を通す>という内訳は、そのうち「熟読」するものは45冊、15分程度で処理する「超速読」が240250冊、30分~2-3時間の「普通の速読」が5060冊という(p.26)。
 
「超速読」とは5分以内にまず試し読みをし、書籍を次の4つのカテゴリーに区分する作業を称している。
<①熟読する必要があるもの
②普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
③普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するに及ばないもの
④超速読にとどめるもの>(p.77
つまり、超<速読の第一の目的は、読まなくてもよい本を外にはじき出すことである。>(p.51
したがって「超速読」はあくまで仕分け作業であって、【読書】の範疇に入れるのは当たらないだろう。目を通すだけのものを除外すれば、月に平均60冊前後が読書量となろうか。それでも老生の34倍も読んでいる。著者の蔵書が約4万冊というので、これまた老生の4倍にもなる。もちろん、読む本も蔵書も比較にならないほどレベルが違うのだが。
 
「超速読」はどのような読み方なのか。
<まず序文の最初の1ページと目次を読み、それ以外はひたすらページをめくる。>(p.77)<このとき文字を読まない。とにかくページ全体を見るのだ。…そして、結論部のいちばん最後のページを読む。>(p.78
 
では「普通の速読」はいったいどのような読書なのか。その技法をやや詳しく説明しているが、小見出しを拾い上げて箇条書きでまとめてみよう。
①<「完璧主義」を捨て、目的意識を明確にする>(p.88
つまり本が読みたいから本を読むのではなく、何らかの問題意識をもって読むべきだという。こうも言っている。<重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。>(p.58)さすがに功利主義者を自称する著者ならではだ。
②<雑誌の場合は、筆者が誰かで判断する>(p.89
署名原稿の雑誌記事しか相手にしない、ということだろうか。
③<定規を当てながら1ページ15秒で読む>(p.91
超速読と違って、文字は読む。ただし、<文字はできるだけ速く目で追う>(p.91)ことが肝要だとする。
定規を当てながら読むのは、内容に引っかかって同じ行を読み返すことを防ぐため(p.92)。
④<重要箇所はシャーペンで印をつけ、ポストイットを貼る>(p.92
⑤<本の重要部分を1ページ15秒、残りを超速読する>(p.94
功利主義的に読む以上、自分にとって<役に立ちそうな記述>(p.95)のみを追いかけることになる。
⑥<大雑把に理解・記憶し、「インデックス」をつけて整理する>(p.95
速読というものは、<内容を大雑把に理解・記憶し、「あの本のあの部分に、こういうことが書かれていた」「あの箇所に当たれば、あの情報が出てくる」という「インデックス」を頭の中に整理して作ることが最も重要だ。>(p.96)ということになる。しかし、本を読むそばから、忘却のかなたに去ってしまう状態では、「インデックス」を頭の中に作ろうとしても難しい。
 
それでは「熟読」とは。これも解説箇所の小見出しを箇条書きにしてみよう。ただし、「熟読」とは本を3回読むこととなる。
①<まず本の真ん中くらいのページを読んでみる〈第1読〉>(p.59
なぜ真ん中を読むのか。<真ん中くらいというのは、実はその本のいちばん弱い部分なのである。あえて、このいちばん弱い部分をつまみ読みすることで、その本の水準を知るのである。>(p.60
②<シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する〈第1読〉>(p.62
③<シャーペンで印をつけながら読む〈第1読〉>(p.63
そのやり方は、<本を読みながら、重要と思う部分の欄外に線を引き、わからない部分については「?」マークを記す。重要な部分かどうか迷ったら、とりあえず線を引く。>(p.64)読了して、本当に大切な部分がどこかわかったら、不要箇所を消しゴムで消す。当たり前のことなのだが、この消すという動作を指摘したのは親切だ。
④<本に囲みを作る〈第2読〉>(p.66
1回目に線を引いた部分で特に重要と思う部分をシャーペンで線を引いて囲む。>(p.67
⑤<囲みの部分をノートに写す〈第2読〉>(p.68
<定義、数字、固有名詞などに言及がある部分と、重要とは思うのだが自分で意味がよくわからない部分を書き写すのだ。/そして、欄外に「わからない」とか「○○の言説と対立」といったような書き込みをしておく。読者自身の評価をノートに記すことが記憶を定着させ、理解を深めるコツである。>(p.68
別な箇所では、こうも言っている。<ノートに書き写す部分については、「迷ったら書き写さない」という原則で、極力少なくする。>(p.71)「自分で意味がよくわからない部分」を書くべきかどうか迷うところ。迷ったら書き写さないわけだし。
ともあれ頭の中の「インデックス」ではすぐに消え失せてしまうので、ノートでもとりましょうか。
ともあれ、<読書ノートを作る最大のポイントは、時間をかけすぎないことだ。>(p.103
⑥<結論部分を3回読み、もう一度通読する〈第2読〉>(p.69
<本の著者は、結論を言いたいがゆえに執筆活動を行っているのであり、ここに最大のエネルギーが注がれている。>(p.69)そこで、結論部分のみを3回も読み直す。
 
以上、具体的かつわかりやすく読書の方法論を教えてくれる。しかし、3回も熟読するような本ではないでしょうね、きっと。本書で読むべきは、第I部のみ。ページ数だけから言えば半分以上を占める第II部はひたすら退屈なので、超速読をお勧めする。
たぶん想定読者はビジネスパーソンらしい(当初の連載した雑誌からして)。つまり研究者向きではない。学部学生のレポート作成や卒業論文には向いているが、間違っても少なくとも修士・博士論文では違う読書技法とすべきだろう。まず対象テーマに対する文献の悉皆調査が、本書から抜けている。ただし、<ここ数カ月はTPPについて勉強するために、月500冊を超える本に目を通している>(p.25)とも言っているので、文献調査ももしかすると言っていないだけかもしれないが。
 
図書館の本を利用することに関しては否定的。なぜなら書き込みをするから(p.60)。ここでは著者は「基本書」について限定して述べているものの、原則書き込み前提なので、どの読む本にも当てはまるのだろう。
本は事実上膨大にあり、関心を持つ事柄の本にしてもそのすべてを所有することは非現実的だ。蔵書削減のプレッシャーを日々受けている身では、図書館の本をどのように「読書」に使うかの技法も必要ではないだろうか。
老生が実際図書館で本書を借りた際に、どのように読んだか。著者の「熟読」技法③の印をつけながら読むのは、栞をはさんでそれにここはと思ったページとおおよその位置(前・中・後)をメモすることで代替。④囲みはせず、⑤ノートに気になった箇所の記述を書き写す。このときに該当ページの周辺をもう一度読み直す。最後に目次を見直して、おしまい。そのうえで、どうしても再読したい、レファレンスで使用したいといった本のみ、読んだ本でも購入することに。
 
老生も、本書を範に「他人の経験、知的努力を、読書によって自分のものに」しようかとも思ったが、いかんせん問題意識の皆無な生来の怠け者ゆえ、「速読」のように功利主義的に語られると、山村修の『遅読のすすめ』のような「遅読」が懐かしい気持ちにもなる(ちなみに、同書では「拾い読み」や「飛ばし読み」のような速読消化冊数は「読書」の冊数に数えない)。
 
なお、巻末に、「[特別付録]本書に登場する書籍リスト」(pp.271-9)がつく。読書の本であるなら当然であって、ことさらに[特別付録]などと言う必要はない。
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
山村修『増補 遅読のすすめ』ちくま文庫、2011810日、780円+税
 
 
※1時にいったんUPしたが、書き足りなかったので、修正のうえ再掲出(12:00)。

『二流小説家』◆ミステリについて

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴訳『二流小説家』早川書房、ハヤカワ・ミステリ文庫HM2013125日、1000円+税
 David Gordon, The Serialist, 2010
 
本書の元版は、20113月にHAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS1冊として刊行された。本書の「訳者あとがき」によれば、2011年の『ミステリが読みたい!』『このミステリーがすごい!』「週刊文春ミステリーベスト10」の各海外部門ですべて1位を占めたそうだ(p.559)。しかし、久しぶりにミステリとして本書を読み、非常に違和感を覚えてしまった。
 
★注意★ 以下の記述でネタバレをしている箇所があります。
未読の方は、お気をつけてください。
 
あらすじは省略。一読して、違和感を覚えた箇所を記す。
 
1)主人公は、ポルノから始まって、SF、ミステリ(ハードボイルド)、ヴァンパイア小説などを書いている小説家。本書の中に、主人公が執筆した作品の抜粋がところどころ出てくる。こうした作中作の提示手法は、ありふれたやり口であり、別に目新しいものでもない。何通りも筆名を変えながら、ジャンル小説をかき分けているのでそれを例示した、という設定くらいだ。ところが、これらが本書の中でほとんど活きていない。つまり全部読み飛ばしても、枠物語には全く影響がない。つまり全体を構築する中で、枠物語と作品抜粋との有機的な結合がなされていないので、何ら効果的でなく無駄なページとなっている。
作中作とするなら、都筑道夫の『三重露出』のような仕掛けを期待したい。
 
2)モデルを口実に4人の女性を殺したとされる死刑囚のダリアン・クレイから、告白本を書くよう依頼された、というのが本書の大きな筋となる。設定では1996年から1997年にかけて起きた事件だ。作中のメインの時間は20094月から7月となっている。事件から概ね12年後の話となる。
ダリアンの弁護士キャロル・フロスキーは、ダリアンの実の母親だった。しかし、まずこの1点でおかしい。ダリアンは幼くして里親に出されたとされるが、実はその後も実の母親(キャロル・フロスキー)と何度も会い、大きくなってからは一緒に暮し行動もともにしていたとされる。当然容疑者の周辺は徹底的に調査されるべきではないのか。なぜ実の母親の存在が不明だったのか。
名前の不一致があるのだが、死刑囚なのだから「ダリアン・クレイ」が実名だとすると、「キャロル・フロスキー」は偽名なのか、それともダリアンを生んでから離婚でもして名前が変わったのか。いずれにせよFBIも調査するはずの初歩的なことではないか。
また<ダリアンが警察に逮捕されると、息子を救うため、法学部に入学して学位をとった。…はじめのうちダリアンには官選弁護人がついていたが、五年後からフロスキーが弁護を引き継いでいる。>(p.441)どこの大学の法学部に入学したのかは不明だが、ニューヨーク州の弁護士資格はそんなに簡単にとれるものなのだろうか(ニューヨーク州は比較的短期間で資格をとれるらしいが)。法学部に入学するまでのフロスキーの仕事はもっぱら売春婦だったにもかかわらず、逮捕されて5年後には弁護士となっているわけだから、あまりにも超スピードではないのか。
ダリアンは逮捕された後、一貫して容疑を否認しており、決定的な証拠が欠けているため、死刑判決が確定してからも何度も再審請求を繰り返している。これはフロスキーによる死刑引き伸ばしの作戦だという。そしてダリアンが告白本を書くよう依頼した後、ダリアンにファンレターを出した女性3人は、かつての事件とよく似た残虐な手口で殺されたのだが、これらはフロスキーが実はダリアンは無罪で本当の犯人は別にいると思わせるために殺したとする。再審請求が却下され、他に手の打ちようがなくなったから、起死回生を狙ったとも考えられるのだが、それならとっくに事件を起こしてもよかったのではないのか。
 
3)逮捕後、切断された被害者の頭部が発見されなかったとされる。しかし、犯罪現場のすぐ裏の森で結局発見されるわけだが、こんなところをどうして捜査しなかったのだろうか。直観で主人公が気がつくと、たちまち重機で穴を掘って見つけられる程度なのだから、当然調べるべきだったはず。発見された頭部の数が別な事件の伏線を解決するわけだが、それを仕込むためにすぎず、あまりにも安易。
 
4)終結間際のダリアンの長広舌(pp.487-507)。ひたすら冗長。フロスキーの告白との微妙な食い違いを醸成しようとするのでしかない。せいぜい埋められた頭部の中心にモルモットの骨があったのが、ダリアンの最初の殺しの実例を示すということか。
さらにおかしいのは、この告白は録音もメモをとることも禁止という条件をダリアンがハリーにつけたという設定。実際には記憶で書き起こした形になっている以上、意味がない。<すべてフィクションとして世に出さなければならない>(p.486)という条件設定は、本書全体が壮大なフィクションなんですよとしたいがためか。終末近くに<今回の経験から可能なかぎりかすめとり、フィクションとして形を変え、名前や細部も変えて、一篇の小説を生みだそう>(p.555)と主人公に考えさせているのだが、その伏線としてもお粗末な設定ではないのか。
 
5)登場人物はどれも類型的なのだが、唯一面白かったのは、主人公ハリーが家庭教師をつとめた女子高生クレア・ナッシュ。ハリーのビジネス・パートナーとしてテキパキと仕切ってきた。いい感じのキャラクターだったのだが、フロスキーに襲われた途端、あっけなく退場。最後に別れの手紙1枚はないだろう、と思うのだが、クレアに入れ込みすぎか。
 
他にも読んでいる最中には「変だなあ」と思う箇所はいくつかあったが、読み終わった途端、忘却。
結論は「二流ミステリ」。
次には著者の第2作『ミステリガール』を読んでみよう。
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
ミステリマガジン編集部編『ミステリが読みたい! 2012年版』早川書房、201111月、667
『このミステリーがすごい!』編集部編『このミステリーがすごい!2011年のミステリー&エンターテインメントベスト20』宝島社、201112月、476
「週刊文春ミステリーベスト10」《週刊文春》2011128号掲載
都筑道夫『三重露出』東都書房、1964年→光文社文庫、都筑道夫コレクション パロディ篇、20039月、781円+税(ただし、二つの筋を示すのに、元版同様の2段組み・1段組みの使い分けが文庫でもできているのかどうか不明)
デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴訳『ミステリガール』早川書房、HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS20136月、1900円+税
 

『ダ・ヴィンチ・ゴースト』◆ウィトルウィウス的人体図について

某月某日、こんな本を読んだ。
 
 トビー・レスター/宇丹貴代実訳『ダ・ヴィンチ・ゴースト:ウィトルウィウス的人体図の謎』筑摩書房、2013911日、1900円+税 [注○文◎索×]
  Toby Lester, Da Vinci's Ghost: Genius, Obsession, and How Leonardo Created the World in His Own Image, 2012
 
本書については、プロローグの冒頭の文が端的に内容を示している。<本書は、世界一有名な素描についての物語。すなわち、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた、円と正方形で囲まれている男性像の物語だ。/美術史家はこれを、ウィトルウィウス的人体図と呼ぶ。>(p.7
 
ダ・ヴィンチが描いたウィトルウィウス的人体図をめぐって、二つの物語から成る。<ひとつは個人的な物語で、もうひとつは集合的な物語。>(p.10)個人的な物語はレオナルド本人の物語であり、一方後者は<ずっと広い視野で展開>し、<ウィトルウィウス的人体図が2000年以上も前にいかに概念として生まれ、それからゆっくりと十数世紀を歩んで、いかにレオナルドと運命的な出会いを果たしたのか>(p.11)が描かれることになる。
交錯した物語ではあるが、十分に読ませる内容となっているので、読みにくさはあまりない。
 
本書で登場するさまざまなキーワードが最初に提示される。
人体の<比例をめぐり、…さまざまな人やできごとや概念が次々に現れては消えていく。建築家のウィトルウィウス、太古からの宇宙論、古代ギリシアの彫刻家たち、初代ローマ皇帝アウグストゥス、ローマの測量技術、帝国の概念、初期キリスト教の幾何学的象徴、ビンゲンの聖ヒルデガルトの神秘的な幻視、ヨーロッパ各地の大聖堂、イスラムの小宇宙論、フィレンツェの工房、ブルネレスキの円蓋(ドーム)、イタリアの人文主義者たち、ミラノの宮廷生活、人体解剖、ルネサンスの建築論などなど。>(p.11
これらのキーワードが、読み進むうちに、有機的なつながりを持ち始める。なかなかいい仕掛けだ。
 
本書の中でとりわけ重要な観念は、<人体は世界あるいは宇宙全体の縮小版である、という考え>(p.46)。すなわち、「コスモス」(=宇宙)に類比して「ミクロコスモス」(=「人体」)を見るという、ギリシアの哲学者やローマのストア学者の考え方が大前提にあったと了解しておこう。
 
アウグストゥスが権力を掌握したとき、無秩序状態だったローマを徹底的に改造し、新たなインフラや神殿を建築していった。元軍人のウィトルウィウスは、帝国が創造されていくさまを見、建築術自体がまだ混沌として理論化されていないのであれば、この機会に<「この大いなる学問の総体を完璧に秩序づけ」ようと決意した。>(p.38)そこで、『建築十書』〔邦訳は『ウィトルーウィウス建築書』〕を著して、初代ローマ皇帝アウグストゥスに捧げた。このなかで、ウィトルウィウスは<宇宙の構造には「自然の力が建築家として働いて」いるのだ。そして自然の力すなわち神が宇宙に対して行なったことを、人間の建築家も自分の創造物に対して行なうべきだ>(p.42)と考えた。
 
一方で、ローマ帝国が自分たちの植民地を築くにあたって、建築の標準的な尺度が必要になった。<唯一の解決策は、人体に基づく測量体系である>(p.49)と結論づけた。しかし、人体はみな異なる。ギリシア人も同様に考えており、必要なのは<ただひとつの人体――理想的な人体――に基づく測量と比例の体系だった。>(p.50
ウィトルウィウスはこうしたギリシア人の測量基準をよく知っていた。これを念頭に置いて、「ウィトルウィウス的人体図」は生まれた。<「いかなる神殿も、均衡と比例なしにはまっとうに構成しえない」とウィトルウィウスは記している。「均整のとれた人間に似るように各部位が正確に割りつけられていないかぎり」>(p.51
これに続いて、<この人体の比例がどうあるべきかを綿密に提示している>(p.51)ただし、図示ではなく文字のみで。
ウィトルウィウスはこう記す。<人体の自然な中心はへそである。なぜなら、人間が両手、両足を広げて仰向けになり、そのへその部分にコンパスの先端をおいて円を描くと、指先と爪先がその円に内接するからだ。また、円と同じく、正方形もその人体に見いだすことができる。足底から頭頂までの長さを測って、広げた両腕の長さと比べてみると、正方形で囲まれた領域と同じように、等しいことがわかる。>(p.52)このように述べることで、<人間をひとつの円と正方形のなかに収め>(p.52)たのであった。
<『建築十書』に描写されたウィトルウィウス的人体図は、神であると同時に人間でもあり、調和と秩序をもたらし、万物の尺度を示す。…手足を広げたその姿は、ローマの神殿や都市の円形配置に、また地球の全体像に、さらには宇宙そのものに重なる。>(p.53
この『建築十書』こそが、1500年後、レオナルドが描くウィトルウィウス的人体図の発想の源泉となる。
 
しかし、ウィトルウィウスは結局無名のままだった。同時代に言及したものはなく、8世紀に至るまで歴史記録から消えていた。8世紀に、とあるアングロサクソンの大修道院長がイタリアから写本をイギリスに持ち帰った(p.57)。その後は、数多くの写本が作られていたので、現在でも132点も残っているという。<ウィトルウィウスに対する強い関心が脈々と中世に息づいていた証拠だ。>(p.58)これは、中世の修道士たちが、<キリスト教の神を概念化するあらたな手法をこれら[古代文献]に求めていた。『建築十書』については、自分たちがまさに探していたものを、ウィトルウィウス的人体図の描写に見いだした>(p.59)からであった。
その根底に、人間をミクロコスモスと見る思考法が常にあった。
 
しかし、『建築十書』におけるウィトルウィウスの記述を図示するのは、ルネサンス期まで待たねばならなかった。フランチェスコ・ディ・ジョルジュ・マルティーニが『建築論』(148184年ごろ)において、ウィトルウィウス的人体図を初めて図に描き出した(pp.207-9)。著者は、フランチェスコがレオナルドにその図解を見せた可能性を推測する。<まさに1490年、フランチェスコとレオナルドがパヴィーアでともに投宿したその年に、レオナルドはほかならぬこの人体図を描いたのだ。>(p.209
 
もう一つの可能性も挙げている。レオナルドの友人だったジャーコモ・アンドレア・ダ・フェラーラが所有していたとされる『建築十書』は、<個人的な使用のために彼[ジャーコモ・アンドレア]みずから作成した特別な写本であり、レオナルドと共同制作した可能性もある>(p.212)建築家のクラウディオ・ズガルビが発見した写本には、レオナルドのウィトルウィウス的人体図に実によく似た人体図が描かれていた(pp.213-5)。
 
最後に、ようやくレオナルドが描いたウィトルウィウス的人体図にたどり着く。レオナルドは、<これらふたつの形[円と正方形]を同一の人物像に重ねることで、ウィトルウィウスの文章の本質的なメッセージをとらえようとした。それは、人体は円と正方形に示される自然の調和を具現化したものである、というものだ。>(p.220
レオナルドは、「人間は…世界のひな型である」と書いた(p.223)。
 
レオナルドは、この人体図をおそらくなんらかの印刷本に掲載するための原稿として考えていたらしい(p.224)。レオナルドが1519年に死ぬと、手稿は愛弟子フランチェスコ・メルツィに遺贈され、その後散逸してしまう。1770年に姿を現わし、ミラノ人美術史家ジュゼッペ・ボッシが入手して初めて印刷。その後ヴェネチアのアカデミア美術館に収蔵されて、今日に至っている(p.230)。それでも一般の関心を引くのは、ケネス・クラークが『ザ・ヌード』(1956年)に掲載したのがきっかけとなったという。<本書はベストセラーになり、ウィトルウィウス的人体図にとってこのうえなく劇的な結果がもたらされた。>(p.231)ちなみに、なぜか巻末の参考文献にはクラークの『ザ・ヌード』は掲出されていないのだが。
しかし、著者は数点の現代世界におけるウィトルウィウス的人体図を例示するだけで、本書を終えてしまう。ミクロコスモスを信じない現代人が、なぜこの人体図に興味を惹くのだろうか。さまざまな場面で使われるこの人体図。いま読んでいる『骨・岩・星』という本のカバーにも、使われている。ローマ帝国初期に端を発した人体図の概念が、時空を超えてレオナルドの手を借りて図示されたことは、本書でほぼ解き明かされた。それ以後の<劇的な結果>となぜ現代人にも通用してしまうのかも分析してほしかった。
 
本書には巻末の「参考文献」(pp.255-249)とは別に、「さらに調べたい人へ」(pp.241-3)はありがたい。
ただし、本書のタイトルは原題そのまま(Da Vinci's Ghost)であるものの、読み始める前は怪しげな内容の本かもしれないと思わせてしまう点で、内容に即したものに変えるべきではなかったか。
 
なお、文中で触れた本は以下の通り。
森田慶一訳『ウィトルーウィウス建築書』生活社、1943年→東海大学出版会、東海大学古典叢書、1969年、4000円→〔普及版〕東海大学出版会、東海選書、19799月、2000
ケネス・クラーク/高階秀爾・佐々木英也訳『ザ・ヌード:裸体芸術論理想的形態の研究』美術出版社、1971年、2800円→『ザ・ヌード』ちくま学芸文庫、20046月、1900
クリス・ターニー/古田治訳『骨・岩・星:科学が解き明かす歴史のミステリー』日本評論社、2013910日、2100円+税
 
 

■既刊・近刊メモ(2013年11月版 Ver.1)

10月に刊行された(はずの)本と、11月以降の近刊を掲載する。若干の本には余計なコメントを付した。日付は発行日ではなく、発売日。発売日順を原則としているが、WEBでの確認が中心なので、違っているかもしれない。
*前回掲載のものから追加・変更した箇所を橙色で示す。
なお、近刊の本についてはあくまでも予定であり、タイトル・発売日・価格ともに変更の可能性はある。
次の行は私的メモ。
■読んだ本(▲元版で読んだ)、■買った本(▲元版所有)
 
10月に出た本から】
 
■野村恒彦 『探偵小説の街・神戸』エレガントライフ()10/11600円+税

■近藤祐 『脳病院をめぐる人びと:帝都・東京の精神病理を探索する』 彩流社、10/22500円+税

■三上修 『スズメ:つかず・はなれず・二千年』 岩波書店、岩波科学ライブラリー、10/41500円+税

■柴田元幸翻訳叢書 『アメリカン・マスターピース古典篇』 スイッチパブリッシング、10/52100円+税

■坂川栄治+坂川事務所 『本の顔:本をつくるときに装丁家が考えること』 芸術新聞社、10/71800円+税

■ミステリー文学資料館編 『古書ミステリー倶楽部』 光文社文庫、10/8800円+税

東雅夫編 『日本幻想文学大全II 幻視の系譜』 ちくま文庫、10/81300円+税

■南條竹則中華料理秘話 泥鰌地獄と龍虎鳳』 ちくま文庫、10/8700円+税

■ピーター・デイリー編著/伊藤博明監訳 『エンブレムの宇宙:西欧図像学の誕生と発展と精華』 ありな書房、10/97200円+税
16世紀以来、西欧表象文化に深く根を下ろした綺想迸る〈エンブレム〉の研究集大成!

豊島正之編 『キリシタンと出版』八木書店、10/108000円+税

■エベン・アレグザンダー/白川貴子訳 『プルーフ・オブ・ヘヴン:脳神経外科医が見た死後の世界』 ハヤカワ・ノンフィクション、10/101700+税

■ニール・シュービン/垂水雄二訳 『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト:最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅』ハヤカワ文庫NF10/10800+税

ベン・マッキンタイアー/小林朋則訳 『英国二重スパイ・システム:ノルマンディー上陸を支えた欺瞞作戦』 中央公論新社、10/102700円+税

■イサク・ディネセン/横山貞子訳 『ピサへの道:七つのゴシック物語1 白水Uブックス、10/101400円+税

角川歴彦 『グーグル、アップルに負けない著作権法』 アスキー・メディアワークス、角川EPUB選書、10/101400円+税

■ホルヘ・ルイス・ボルヘス/木村榮一編訳 『ボルヘス・エッセイ集』 平凡社ライブラリー、10/121200円+税

■黒岩比佐子 『パンとペン:社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』 講談社文庫、10/161010円+税
*元版は201010月に講談社から刊行。

山口ヨシ子 『ダイムノヴェルのアメリカ:大衆小説の文化史』 彩流社、10/173000円+税

北折充隆 『迷惑行為はなぜなくならないのか?:「迷惑学」から見た日本社会』 光文社新書、10/17760円+税

坂口昌明 『《魔笛》の神話学:われらの隣人、モーツァルト』 ぷねうま舎、10/182700円+税
 
■増井元 『辞書の仕事』 岩波書店、岩波新書、10/19760円+税

郷原宏 『日本推理小説論争史』 双葉社、10/192500円+税

一柳廣孝・久米依子編著 『ライトノベル・スタディーズ』 青弓社、10/192000円+税

ホルヘ・ルイス・ボルヘス&マルガリータ・ゲレロ/柳瀬尚紀訳 『幻獣辞典』 晶文社、10/222800円+税【復刊】
1974年に正方形に近い判型で初版刊行→その後、晶文社クラシックスの一冊として四六判、2400円+税で再刊。

■立木鷹志 『時間の本』 国書刊行会、10/223400円+税

デイナ・プリースト、ウィリアム・アーキン/玉置悟訳 『トップシークレット・アメリカ:最高機密に覆われる国家』 草思社、10/232600円+税

■正木香子 『文字の食卓』 本の雑誌社、10/231800円+税
 *「写植書体」を、使用された名文とともに紹介する「文字と言葉をめぐる読書エッセイ」。著者インタビューはこちら

■杉江松恋 読み出したら止まらない!海外ミステリーマストリード100 日経文芸文庫、10/23650円+税

山本雅男 『イギリス文化と近代競馬』 彩流社、フィギュール彩210/231900円+税

澁澤龍彦 『推理小説月旦:ミステリー全論考』 深夜叢書社、10/242400円+税
*ミステリー時評をはじめ、江戸川乱歩、小栗虫太郎ら偏愛する作家たちへのオマージュなど、ミステリーに関する論考、エッセイを集成。

佐々木マキ著/小原央明編 『佐々木マキ:アナーキーなナンセンス詩人』 河出書房新社、らんぷの本、10/241700円+税
*シュールでポップ、不思議だけどかわいい佐々木マキ・ナンセンス・ワールドにようこそ。

ASIOS  『謎解き超科学』 彩図社、10/241400円+税
10月下旬には発売になっていたが、奥付の発行日は1122

ジョン・D・バロウ/小野木明恵訳 『無の本:ゼロ、真空、宇宙の起源』 青土社、10/242800円+税
*さまざまな角度から無の探究の歴史をはじめ、音楽や文字おける無の表現も多彩に紹介しながら、「無(=nothing)」を語り尽くす!!

ロバート・R・プロヴァイン/赤松眞紀訳 『あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する』 青土社、10/242400円+税
*あくび、くしゃみ、せき、しゃっくり、わらい、くすぐり…それらの行為に科学の光を当てたとき、衝撃の事実が次々とあきらかになる!

■大日本印刷 『一〇〇年目の書体づくり:「秀英体平成の大改刻」の記録』 大日本印刷(発売:DNPアートコミュニケーションズ)、10/252000円+税
*秀英体誕生から100年目に、七年の月日をかけて終了した改刻の軌跡。
http://www.dnp.co.jp/news/10093015_2482.html

■ベン・アーロノヴィッチ/金子司訳 『ロンドン警視庁特殊犯罪課3 地下迷宮の魔術師』 ハヤカワ文庫FT10/251060円+税

■細馬宏通 『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか:アニメーションの表現史』 新潮社、新潮選書、10/251600円+税

大場正史訳 『アラビアンナイト:バートン版千夜一夜物語拾遺』 角川ソフィア文庫、10/25800円+税
 *角川文庫からは1957年・58年に2分冊で、さらにリバイバル・コレクションとして19652月にも刊行されている。

齋藤嘉臣『文化浸透の冷戦史:イギリスのプロパガンダと演劇性』勁草書房、10/255500円+税
 
ナイジェル・カウソーン/井上廣美訳 『図説公開処刑の歴史』 原書房、10/253500円+税
*西洋・東洋、古代から現在にいたる公開処刑の歴史を総覧する。

岡本綺堂 『探偵夜話:岡本綺堂読物集四』 中公文庫、10/25686円+税
*底本は戦前版。附録として単行本未収載の短篇二篇を収録。

マシュー・グッドマン/金原瑞人・井上里訳 『ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む:45千キロを競ったふたりの女性記者』 柏書房、10/252800円+税
1889年、ジュール・ヴェルヌの小説にならい、蒸気船、蒸気機関車などを乗り継いで世界一周に挑んだ二人の女性記者がいた。東回りと西回り、はたしてどちらが先にニューヨークに戻ってくるのか、そもそも女性の一人旅は成功するのか? アメリカ中がその話題で持ちきりになった事件を追ったノンフィクション。

干場辰夫 『東京23区 区立博物館“辛口”批評』 花伝社(発売:共栄書房)、10/251500円+税
*地味でも実は面白い、区立博物館の本格ガイド&レビュー。

■大岡玲 『男の読書術』 岩波書店、10/262300円+税

■山東功 『日本語の観察者たち:宣教師からお雇い外国人まで』 岩波書店、そうだったんだ!日本語、10/261700円+税

■田村隆『返し包丁』白水社、10/262000円+税

美術館連絡協議会監修 『美術館と建築』 青幻舎、10/292500円+税
*「美術館を建築家の作品にされたらたまらないよ」というセリフで、学芸出身者による放談(酒井忠康×蓑豊×原田マハ)を期待したが、結局建築家をヨイショするだけの内容に堕ちた。ガラス張りの結露だらけで作品に直射日光が当たるのをよしとする美術館建築を持ち上げていて、どこが学芸員なのかね。

■立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所編 『白川静を読むときの辞典』 平凡社、10/291800円+税 

斉藤守彦 『映画宣伝ミラクルワールド:東和ヘラルド松竹富士独立系配給会社黄金時代』 洋泉社、10/292200円+税

佐藤卓己 『物語岩波書店百年史 2 「教育」の時代』 岩波書店、10/302400円+税

苅部直 『物語岩波書店百年史 3 「戦後」から離れて』 岩波書店、10/302200円+税

■飯倉照平『南方熊楠の説話学』 勉誠出版、10/314500円+税
 
 
【これから出る本】(タイトル・発売日・価格等はすべて予定)
 
11月予定
四方田犬彦 『日本の漫画への感謝』 潮出版社、11/12200円+税

■マルセル・シュオブ/矢野目源一訳 『吸血鬼:マルセル・シュオブ作品集』 盛林堂書房、11/42000円(税込?)
*『吸血鬼』(大正13年刊)を復刻。(戦後の復刊に『黄金仮面の王』コーベブックス)解説=長山靖生。

■今和泉隆行 『みんなの空想地図』 白水社、11/42000円+税

工藤庸子 『いま読むペロー「昔話」』 羽鳥書店、11/52000円+税
*民間伝承と宮廷文化との出会いから生まれた物語の背景をふまえ仏文学者・工藤庸子が新たに訳す。充実の解説付。

■西崎憲編 『怪奇小説日和』 ちくま文庫、11/61000円+税
*『怪奇小説の世紀』(国書刊行会)全3巻から厳選した13篇に新訳を追加した怪奇小説アンソロジー。

フランク・M・アハーン、アイリーン・C・ホラン/寺西のぶ子訳 『完全履歴消去マニュアル』 河出書房新社、11/61600円+税
*ストーカーや探偵からの身の隠し方から、国外逃亡、死亡偽装といった失踪方法まで、ネット時代のプライバシーや個人情報の守り方を、その道のプロが教える決定版!

■文藝春秋編 『東西ミステリーベスト100 文春文庫、11/8660円+税
*ミステリー・ガイド四半世紀ぶりの大改訂。

大崎梢 『ようこそ授賞式の夕べに』 東京創元社、ミステリ・フロンティア、11/91500円+税
 *波瀾万丈の書店大賞授賞式の一日を描いた「成風堂書店事件メモ」×「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」開幕!

■山口謠司 『みんなの漢字』 講談社現代新書、11/15740円+税

■ティム・インゴルド/管啓次郎解説、工藤晋訳 『ラインズ:線の文化史』 左右社、11/152800円+税

■ジョン・ルカーチ/村井章子訳 『歴史学の将来』 みすず書房、11/153200円+税

ジュゼッペ・トルナーレ/柱本元彦訳 『鑑定士と顔のない依頼人』 人文書院、11/151500円+税
*美術と骨董とオークションの世界に彩られた鮮やかなミステリー。12月に公開される映画はこちら

フランシス・ウィリアムズ・ベイン/松村みね子(片山廣子)訳 『闇の精』 盛林堂書房、11月中旬、1000円(税込)
19世紀末~20世紀初に出版された印度奇譚。のダークファンタジー。解説=井村君江。

■アンドレ・ケルテス/渡辺滋人訳 『読む時間』 創元社、11/192200円+税

■ヴォルフガング・ベーリンガー/長谷川直子訳 『魔女と魔女狩り』 刀水書房、刀水歴史全書8711/203500円+税 
Wolfgang Behringer, Wiches and Witch-Hunts: A Global History, 2004 の翻訳。

■大橋博之編著 『少年少女昭和SF美術館:表紙でみるジュヴナイルSFの世界』 平凡社、11/203800円+税

池上俊一 『お菓子でたどるフランス史』 岩波ジュニア新書、11/20880円+税
*世界一の国になるには素敵なお菓子が欠かせない!と考え、その甘い武器を磨いてきた国フランス。お菓子の由来も、歴史もしっかり学べる、華麗であま~いフランス史。

古谷昌二編著 『平野富二伝 考察と補遺:明治産業近代化のパイオニア』 朗文堂、11/2212000円+税

アリソン・フーヴァー・バートレット/築地誠子訳 『本を愛しすぎた男』 原書房、11/222400円+税
*希少古書のみ数百冊を巧妙な手口で盗み続けた「本を愛しすぎた男」と、彼を追う古書店主にして熱血素人探偵のデッドヒート!

■黒田日出男 『豊国祭礼図を読む』 角川学芸出版、11/222000円+税

レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳 『ボリバル侯爵』 国書刊行会、11/222600円+税
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336057600/

津野海太郎 『花森安治伝:日本の暮しをかえた男』 新潮社、11/221900円+税

湯沢英治(写真)、東野晃典(文と構成) REAL BONES:骨格と機能美』 早川書房、11/229000円+税
*「本物の骨」から作成したスタイリッシュに輝く標本を、動物骨格写真の第一人者が撮り下ろし、標本作製の稀有な専門家である獣医師がその機能美を完全解説する大型写真図鑑。

稲生平太郎 『定本何かが空を飛んでいる』 国書刊行会、11/253200円+税
UFO現象を明快に論じた名著ついに復刊。あわせて他界に魅せられし人々の、影の水脈をたどるオカルティズム・民俗学エッセイ・評論を一挙集成。

長谷川郁夫 『知命と成熟:13のレクイエム』  白水社、11/252800円+税

安井泰平 『ジャッロ映画の世界』(仮) 彩流社、12/254500円+税
1960 年代以降のイタリア・ホラー・サスペンス映画群を徹底研究。怪しい魅力渦巻くジャッロ映画世界。

■正木香子 『文字のソムリエ』() 星海社新書、11/26820円+税

ジェフリー・ハーフ/星乃治彦ほか訳 『ナチのプロパガンダとアラブ世界』 岩波書店、11/266800円+税
*ナチスは第2次大戦中、中近東に対し大規模なプロパガンダを展開した。当時英仏からの独立を目指していたアラブ世界にとって、ナチのプロパガンダは抵抗のツールとみなされた。そして、その反ユダヤ主義はアラブ知識人の中に潜行していく。

濱下武志 『華僑・華人と中華網:移民・交易・送金ネットワークの構造と展開』 岩波書店、11/275500円+税

ディヴィッド・J・スカウ編/田中一江・夏来健次・尾之上浩司訳 『シルヴァー・スクリーム』 上・下、創元推理文庫、11/28、各1160円+税
*映画ホラーアンソロジー。収録作品はこちら

石川九楊 『九楊先生の文字学入門』 左右社、11/303500円+税

■広島市文化協会文芸部会編 『占領期の出版メディアと検閲:戦後広島の文芸活動』 勉誠出版、11月、1800円+税

■飯田豊一 『「奇譚クラブ」から「裏窓」へ』 論創社、「出版人に聞く」シリーズ、11

■西野嘉章編 『インターメディアテク:東京大学 学術標本コレクション』 平凡社、11月、1800円+税
 *平凡社のサイトでは11月刊行予定で当然未刊だが、Amazon.jpでは9月に発売となり「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」との表示(2013/10/14現在)。

『猟奇 復刻版』全6、三人社、11月、60000円+税
*昭和初期に出た探偵小説雑誌。

グザヴィエ・バラル編集、デザイン/宮本英昭日本語版監修MARS 火星:未知なる地表 惑星探査機MROが明かす、生命の起源』 青幻舎、11月、12000円+税
NASA火星探査機マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)搭載の高解像度カメラ(HiRISE)がとらえた、その複雑で起伏に富んだ地表をカメラの視野そのままに収録。

プランセス・サッフォー/野呂康・安井亜希子訳 『チュチュ:世紀末パリ風俗奇譚』 水声社、11月?2800円+税
*知られざる19世紀最大の奇書。10月中には未刊行だった模様。

 
12月予定
大田垣晴子 『偏愛博物館スケッチ』 角川書店、12/11200円+税

豊田市美術館監修 『反重力:浮遊・時空・パラレルワールド』 青幻舎、12/22800円+税
「反重力展」豊田市美術館、2013914日-1224日開催

ロバート・グリーン 『アメリカン・ハッスル』上・下、河出文庫、12/4、各840円+税

■東雅夫編 『日本幻想文学大全III日本幻想文学事典ちくま文庫、12/101600円+税

早川義夫 『ぼくは本屋のおやじさん』 ちくま文庫、12/10720円+税

高橋輝次 『書斎の宇宙:文学者の愛した机と文具たち』 ちくま文庫、12/10880円+税

ロジェ・カイヨワ 『斜線:方法としての対角線の科学』 講談社学術文庫、12/10

岩波書店辞典編集部編 『岩波世界人名大辞典』 岩波書店、12/1228000

フラン・オブライエン 『第三の警官』 白水Uブックス、12/121600円+税
*文学実験とアイルランド的奇想が結びついた奇跡の傑作。

■菊地原洋平パラケルススと魔術的ルネサンス  勁草書房、Bibliotheca hermetica 叢書、12月中旬、5000
*近代医学の創始者か、賢者の石を手にした錬金術の達人か? 魔術・占星術とキリスト教の融合をめざしたパラケルススの研究の決定版!

杉山久仁彦 『図説虹の文化史』 河出書房新社、12/174200円+税
*人びとは虹に何を見てきたか、その謎にいかに挑んできたか。虹をめぐる知と表現の系譜を通覧する一大スペクタクル。

桑原茂夫 『不思議の国のアリス』 河出書房新社、ふくろうの本、12/171800円+税
*写真機の発明に恐竜の発見等、ヴィクトリア朝の魅力的な文化がワンダーランドを支えていた。

脇明子 『少女たちの19世紀:人魚姫からアリスまで』 岩波書店、12/19

東浩紀 『セカイからもっと近くに:現実から切り離された文学の諸問題』 東京創元社、12/20
*想像力と現実が切り離された時代に、評論には何ができるのか。ライトノベル・ミステリ・アニメ・SF、それぞれのジャンルで文学と社会の再縫合を試みた作家を読み解く。

北原尚彦 SF奇書コレクション』 東京創元社、キイ・ライブラリー、12/252300円+税
*汲めども尽きぬSF奇書・珍本。古書のみならず、脚本・図録から自費出版書籍まで、入手手段の限定された珍しい書籍を縦横無尽に紹介する。

トーマス・デ・パドヴァ 『ケプラーとガリレイ:書簡が明かす天才たちの素顔』 白水社、12/233400
*科学史上に輝く巨星の対照的な生涯と大発見、時代背景を活写した評伝。二人を結んだ「絆」として、交わした書簡が重要な役割を果たす。

ジョージ・G・スピーロ 『ケプラー予想:四百年の難問が解けるまで』 新潮文庫、12/25940円+税

風間賢二 『ファミリー・ブラッド:家族にはつねにすでにモンスターが潜んでいる!』(仮) 彩流社、12/25、定価未定

大澤真幸 『思考術』  河出書房新社、12/271500円+税
*読み、考え、そして書く――。思考技術の原論を説き、社会科学、文学、自然科学という異なるジャンルの文献から思考をつむぐ実践例を展開。

福嶋聡 『紙の本が死なない理由』 ポプラ社、12/311300円+税

 
2014予定
■ミルチャ・エリアーデ/奥山倫明訳 『ポルトガル日記』 作品社、20141月、2400円+税

■鈴木宏 『書肆風の薔薇から水声社へ』(仮) 論創社、「出版人に聞く」シリーズ

■ラリー・プリンチーペ/ヒロ・ヒライ訳 『錬金術の秘密』 勁草書房、BH 叢書、2014年 

U.ペンツェンホーファー 『評伝・パラケルスス』 勁草書房、BH 叢書(未定)

■ヒロ・ヒライ+小澤実編 『知のミクロコスモス:西欧中世ルネサンス精神史研究』 中央公論新社

ジャン・クロード・シュミット/小池寿子・廣川暁生・古本高樹訳 『イメージにひそむ身体:中世の視覚文化』 刀水書房、5000

■高橋洋、稲生平太郎 『映画の生体解剖』(仮)
*シネマ対談

■臼田捷治 『工作舎物語』 左右舎

■松田行正、ミルキィ・イソベ、木内達朗 『デザイン・プレゼンテーションの哲学』 左右舎、神戸芸術工科大学レクチャーブックス


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Author:夢幻庵主人
隠居生活続行中。

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